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東京影譚 ~エミリア、影を紡ぐ者~  作者: ミルティア


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374/422

偽物の『恐竜』と詐欺師の手口 その一

【読者様への注意喚起】


この物語はフィクションです。

法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

また、作中に登場する人名、組織、団体名(アスター家、K&E リサーチ&コンサルティング等)はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。


ようこそ、東京の影の中へ ここは、光が滅び、影が支配する世界。

摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。


あなたは、そんな影の世界に生きる一人の女王に出会う。

彼女の名は、エミリア・シュナイダー。

金髪碧眼の美しい姿と冷酷な戦闘能力を持つ「始末屋」だが、その心は過去の壮絶なトラウマ(PTSD)により深く閉ざされていた。

彼女の唯一の拠り所は、佐藤健という元銀行員の相棒。

彼の存在こそが、彼女の心を繋ぎ止める唯一の「鎮静剤」だった。


女王の争奪戦と運命の対決 しかし、彼女の安息は、アスター家の令嬢リリア・アスターの出現によって一変する。

リリアは佐藤の独占をかけて、エミリアに「資金力」と「知略」で挑む。

二人の女王による壮絶な「争奪戦ラブコメ」が勃発し、その裏側で、巨大な「情報戦(現代ファンタジー)」が展開されていく。


リリアの計画: 彼女は愛する佐藤のために、軍事力、情報機関、そして公邸という名の「要塞」を築き上げる。


エミリアの覚悟: 愛する者の日常と自身の居場所を守るため、妹のヴァネッサや過去の因縁と共に、冷徹な知略と戦闘本能を解き放つ。


あなたは、エミリアがこの愛と権力の戦いを生き抜き、孤独を乗り越えていく「再生の物語」を体験することになる。


さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。

これは、あなたの「常識」が一切通用しない、究極のプロフェッショナルたちが「愛」のために戦う物語。


あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?


この物語は、最先端AI 「Gemini (by Google)」 との共作により誕生しました。

時に、AIは人間の想像を超える予想外(unexpected)な展開を――。 時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を――。 「Gemini」は、新たな物語の世界を創造する、私の大切なパートナーです。


※本作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では順次公開となります。あらかじめご了承ください。


ただし、どうか忘れないでください。 これは、愛と知略が支配する、あくまでフィクションだということを。

This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.


Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.


Dies ist ein Werk der Fiktion. Jegliche Ähnlichkeit mit tatsächlichen Ereignissen oder lebenden oder verstorbenen Personen ist rein zufällig.


นี่คือนิยายที่แต่งขึ้น บุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์ใดๆ ที่ปรากฏในเรื่อง หากบังเอิญคล้ายคลึงกับบุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์จริง ทั้งที่ยังมีชีวิตอยู่หรือเสียชีวิตไปแล้ว ถือเป็นเรื่องบังเอิญทั้งสิ้น


(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)


日本標準時4月15日午前10時5分。

ようやく晴れ間が見えてきた都内。


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、奇妙な「日常」が続いていた。

春の、その穏やかな日差しだけが、その美しき「黒き薔薇」の、その巧妙な「宣戦布告」を静かに照らし出しているだけだったのである――。


「…ここは、佐藤さんの、その不思議な力で、あの詐欺師を検挙できるように、私たちで罠を仕掛けませんか?」


しかし、そのヴァネッサからの、あまりにも真っ直ぐな「お誘い」――「…私たちで罠を仕掛けませんか?」――を受けた佐藤は、その顔を青くして、首を横に振った。


「そ、それは、無理です、ヴァネッサさん!」


佐藤は、自らの「上司」である、エミリアのその冷徹な視線を背中に感じながら、答えた。


「エミリアから、今日は、トラブルに巻き込まれないよう『外出禁止』、『ネット禁止』の、厳命を受けていますので…。手伝いようが、ないです…」


その佐藤の情けない答えを援護射撃するように、リリアも、彼の腕に自らの腕を絡ませた。


(彼女は、佐藤の暇つぶしである明日の予定や、一年間の、方針(という名の、落書き)を隣で手伝っていた)


「そうですわ、ヴァネッサ様。サトウさまは、サトウさまの秘書である私と、一日中、一緒に過ごすのが、大切な、仕事ですわ」


彼女は、そう言って、ヴァネッサが佐藤を箱庭の雑居ビルの三階のオフィスから連れ出されないように、強く牽制してきた。

そして、最後に、エミリアもその一連のやり取りを鼻で笑った。


「ヴァネッサ。あなたの正義感は立派だけれど。偽物の、ティラノサウルスの骨を使うような、詐欺師なら、すぐ警察に捕まるわよ。だって、そんな偽物のティラノサウルスの骨っていう、分かりやすい物証があれば、騙して金を得ようとしたという立証は、新人検事でもできるくらい簡単でしょう?」


彼女は、そう話して、全く取り合う気配を見せない。

ヴァネッサは、その佐藤、リリア、エミリアの三者三様の「拒絶」の話を聞きながらも、彼女の思考は諦めてはいなかった。


(…新聞広告まで使って、大々的に詐欺を働こうとしているということは、犯意は極めて高いわ。…姉さん(エミリア)は、ああ言うけれど、警察が動くのを待っていたら、必ず被害者が出る。…なんとか、このあまりにも非協力的な三人を動かす、方法はないものかしら…)


春の、その穏やかな日差しだけが、その美しき「黒き薔薇」の、そのあまりにも孤独で、そしてどこまでも高潔な「悩み」を静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


ヴァネッサは、ここで引き下がるわけにはいかなかった。

彼女は深呼吸してから、再びあの哀れな佐藤を説得することにした。


「佐藤さん。元・銀行員の貴方には、痛いほどわかっているはずです。このような悪質な『経済犯罪』は、一度被害に遭ってしまえば、その被害者の救済がどれほど難しいかということを。今、あの偽物の、ティラノサウルスの骨で…」


そこまで話したところで、ヴァネッサは、自らの言葉の「違和感」に気がついた。

彼女は、その美しい眉をひそめ、佐藤に問いかけた。


「…待って、佐藤さん。今、自分で言って、気がつきましたが、『ティラノサウルスの骨』というのは、そもそも変な表現では、ありませんか?『ティラノサウルスの化石』ではなく、『ティラノサウルスの骨』。…まるで、とうの昔に絶滅した恐竜が、つい昨日まで現代でも生きていて、その新鮮な骨を回収して売却しようとしているかのような、不気味な表現だとは思いませんか?」


そのヴァネッサの純粋な「疑問」。

その答えを口にしたのは、佐藤ではなくエミリアだった。

彼女は、通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた手を、止めることなく、ヴァネッサに、まるで子供に言い聞かせるように説明する。


「――つまり、そういうことよ、ヴァネッサ。『ティラノサウルスの骨』。これは、万が一、警察に突き出された時に、3Dプリンターで、作った、精巧な偽物ですと白状するための言い訳の、表現なのよ」


彼女は、その冷徹な視線をヴァネッサへと向けた。


「だって、もし『ティラノサウルスの化石』だと謳って売買したなら、当然、世界の何処かでおこなわれた、正式な発掘調査で見つかったという本物の証明書か、あるいは証人や証拠が必用になるけど、『ティラノサウルスの骨』という曖昧な表現なら、これは、私が趣味で作った『ティラノサウルスの骨(の模型)』ですと、法廷で強弁するだけですむもの」


エミリアは、深いため息をつくと、さらにこう、結論づけた。


「この「ティラノサウルスの骨」を利用した詐欺師は、多少は法律のことをかじった知恵があるタイプのようね」


エミリアはそう分析する。

そのあまりにも完璧な「解説」に、ヴァネッサは、ただ言葉を失うだけであった――。


                    ***


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、奇妙な「日常」が続いていた。

エミリアは、先ほどの『ティラノサウルスの骨』と『化石』の完璧な解説をして、この馬鹿げた話はもう終わりとしたかったが、彼女はちらりと妹の顔を見た。

ヴァネッサのその美しい性格と表情から、彼女がこの『詐欺師』の存在を決して見過ごすことができない人間である、と瞬時に読み取っていた。


(…ダメね。しつこく、この後も健ちゃんに、「一緒に、この『ティラノサウルスの骨を、利用した、詐欺師を追求しましょう』と言い続けるわね)


エミリアは、ヴァネッサが何をしようとしているか、もはや目に見えていた。

エミリアは、そのあまりにも面倒な「未来」を回避するため、なかば仕方なく、このヴァネッサが満足する形でこの案件を対応するしかないと考えたが、かといって、『エミリア自身のリソース(サスキアや、エミリアの貴重な時間)』をこんな下らない詐欺師ごときに使う気はなく、エミリアは、こういう、警察が喜んで飛びつきそうな面倒くさい話は、やはり松田のような、本職の刑事に丸投げするのが一番だと、結論づけた。


エミリアは、その手元の自分のスマートフォンの、セキュアなアプリで、あの哀れな中年刑事へと電話をした。


そのあまりにも唐突な「着信」に、松田が慌てて応答する、その声がスピーカーから漏れ聞こえる。


「なんだ、エミリアか」

「あら、松田さん。ごきげんよう。今お忙しいかしら?」

「いや、忙しいというか、今、その…」

「そう。なら、手短に伝えるわ。…今、都内で『ティラノサウルスの骨』を売りつけようとしている、『詐欺師』が、いるらしいの。…ええ、そうよ。『ティラノサウルス』。…あなたたちの、好きそうな『事件』の匂いがするんじゃなくて?」


春の、その穏やかな日差しだけが、その最強の女王の、そのあまりにも完璧な「業務移管(丸投げ)」を静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


松田たち『特別捜査班』の三人は、何軒かの質屋を後にし、次の質屋へと徒歩で移動していた。

彼らの頭の中は、先ほど掴んだ、『ティラノサウルスの骨』という、あまりにも荒唐無稽な「情報」でいっぱいだった。


「…どう思います、松田さん。ティラノサウルス、ですよ…?」


若林が、その興奮を隠しきれない様子で言う。


「…静かにしろ。『内偵』中だぞ」


その時だった。

松田の『私物のスマートフォン』の、『セキュアなアプリ』が静かに振動した。

画面に表示された、その「名前」に、松田は心の底から舌打ちした。


――『エミリア』。


彼は、二人に目配せすると、その通話を受けた。


「なんだ、エミリアか」

「あら、松田さん。ごきげんよう。今お忙しいかしら?」

「いや、忙しいというか、今、その…」


受話器の向こう側から聞こえてくる、エミリアのその、どこまでも楽しげな声。


「そう。なら、手短に伝えるわ。…今、都内で『ティラノサウルスの骨』を売りつけようとしている、『詐欺師』が、いるらしいの。…ええ、そうよ。『ティラノサウルス』。…あなたたちの、好きそうな『事件』の匂いがするんじゃなくて?」


その言葉に、松田の背筋が凍りついた。


(…なぜ、この女が、俺たちが、今、掴んだばかりの情報を…!?)


「ええ、そうよ。『ティラノサウルス』。…あなたたちの、好きそうな『事件』の匂いがするんじゃなくて?」


まるで、自分たちが、今まさに探っている件を完璧に見透かしたような情報が届き、驚きながらも、松田はなんとか冷静に、その声色を押し殺して答えた。


「…生憎だが、今日は休みなので、その、すぐには調べられない。…何か、他にも、具体的な情報がないのか?」


松田が必死の探りを入れると、エミリアが心の底から呆れた、という声で、答えた。


「あら、まだ掴んでいなかったの? 先月の新聞に、堂々と一行ほどの広告で『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』と、ご丁寧に『電話番号』まで載せてたらしいのよ。だから、てっきり優秀な「捜査一課」の刑事なら、とっくに情報を掴んでいると思ったけど。…その様子だと、本当に何も知らないようね。…まあ、いいわ、頑張って」


エミリアは、それだけを告げてから、一方的に電話を切ってしまった。

ツーツー、と無機質な音が響く。


松田は、そのスマートフォンを握りしめたまま立ち尽くしていた。


(…あの、エミリア…!新聞広告…!? …そこまで掴んでいた、というのか…!)


春の、その穏やかな日差しだけが、その刑事たちの、そのあまりにも完璧な「敗北感」を静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


松田たち『特別捜査班』の三人は、その場に立ち尽くしていた。

エミリアからの、あまりにも的確すぎる『情報』。


「…新聞広告、だと…?」


松田は、その手元のスマートフォンを忌々しそうに睨みつけた。


(…都内の質屋で、『ティラノサウルスの骨を担保』に融資しようとしていた連中が、まさか先月から堂々と新聞に広告を出していたとは…!)


松田は、自らの「捜査」が完全に後手に回っていた、その事実に、心の底から舌打ちした。


「…どうします、松田さん」


相沢が、その青白い顔で、問う。


「…決まっている。休日の刑事が、できることを確認するぞ」


松田は、その怒りを無理やり飲み込んだ。


(…だが、今の俺たちには警察手帳も無く、当然、家宅捜索はおろか、捜査令状など請求もできない。…現状で出来ることは、あまりにもほとんどなく、地道に、裏を、取るしかない)


松田と若林と相沢は、その場で数分間、話し合い、その結果、役割を分担することを決めた。


「――いいか、二人とも。俺は、このまま徒歩で、引き続き、この近辺の質屋の挨拶まわりを続け、『ティラノサウルスの骨』で融資できないか探りを入れた人物がいないか探る」松田はそう指示を出すと、次に「若林と、相沢は、今すぐ図書館で、過去の新聞を調べ、問題の『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の、一行だけの広告と電話番号が、一体いつから掲載されていたか、確認を頼む」と、指示した。


二人は、その指示に力強く頷いた。

こうして、三匹の「猟犬」たちは、分担することにした。


春の、その穏やかな日差しだけが、その三人の刑事たちの、そのあまりにも不毛で、しかし、どこまでも執念深い「捜査」の新たなる「始まり」を、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


松田たち『特別捜査班』が、エミリアからの唐突な「情報」を元に、それぞれの情報収集に動くべく、都内の雑踏へと消えていく。


そして、箱庭の雑居ビルの三階のオフィスでは、エミリアがヴァネッサへと向き直ると、その美しい顔に完璧な「任務完了」の笑みを浮かべた。


「――ちゃんと、本職の刑事に頼んだから、もう心配いらないわよ。だから、あなたもこれ以上、あの『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』なんていう、下らない件は、もう忘れなさい」


エミリアは、『通常業務』の報告書をノートパソコンで作成しながら、その水面下では『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた、その手を緩めず、完璧な説得の言葉を重ねた。


そのあまりにも有無を言わさぬ「圧力」。

ヴァネッサは、その義理の姉のあまりにも強引な「幕引き」に深いため息をついた。


(…流石に、これ以上は、何を言っても無理ね)


彼女は、その「議論」を諦め、サスキアの近くにおいた椅子に、あの新聞縮小版を持ったまま戻り、そして新聞縮小版を読みながら(という、「ふり」をしながら)、自らの頭脳だけを使って、調査を開始した。


(…姉さんが動かない、というなら、私が動くまで)


『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』。


この一行だけの広告が、一体いつから掲載されていたか、その最初を調べることにした。

春の、その穏やかな日差しだけが、その美しき「黒き薔薇」の、その静かで、しかし、どこまでも執念深い「独自調査」の始まりを、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、奇妙な「日常」が続いていた。

リリアは、愛する佐藤の秘書として、彼が(エミリアの命令で外出もネットも禁じられ、ただノートに「明日の予定や一年間の方針(という名の、落書き)」をメモして暇していた)その退屈な時間を、最高の「チャンス」へと変えていた。


彼女は、その佐藤のノートにさりげなく、美しい文字を書き足していく。


リリアと佐藤の新婚旅行の候補地『予定(第一候補:タヒチ)』や、新婚生活の円満な『方針(第二条:サトウさまは、毎日、わたくしに愛を囁くこと)』、そしてリリアは、子供は最低『三人』希望など。


リリアは、佐藤に一切の拒否権を与えず、リリアとの人生設計の計画を半ば、共同で書き上げようとしていた。


そのあまりにも幸せな「作業」の最中。

リリアの『直感(鑑定眼ではなく、彼女の幸運からの直感)』で、ふと、ヴァネッサが、あの新聞縮小版を読んでいる姿を、きちんと鑑定眼で見るべきだと思い、リリアは、その視線をサスキアの近くにおいた椅子に座って、大人しく新聞縮小版を読んでいるはずのヴァネッサを、その鑑定眼で見て、そして、その「本心」を読み取った。


(…あらあら。ヴァネッサ様が未だに、あの『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の、下らない調査を諦めておらず、独自調査を終えれば、わたくしの大切なサトウさまを、その『面倒事』に巻き込もうと企んでいる)


リリアは、その全てを理解して、そして静かに考えた。


(…このわたくしの、大切なサトウさまとの人生設計の時間を、あの正義感の化身に妨害させるものですか)


彼女は即座に「最適解」を弾き出す。


(…この手の地道な『調査』なら、わたくしのもう一つの「駒」。


『オフィス真壁・代沢事務所』の、真壁梓所長と、助手の支倉詩乃が、まさに適任)と考え、さらに、あの優秀な綾辻観月という、新人アルバイト調査員と、『ゲンさんのガレージの三人』が魔改造した『白鼻芯ハクビシン』という、高性能な特殊車両もあるのだから、今が、彼女たちの活躍する時だと、瞬時に判断して、リリアは、その完璧な「計画」に満足げに微笑むと、佐藤に気づかれないよう、手元の自分のスマートフォンのセキュアなアプリで、オフィス真壁へと、『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の件の調査するよう依頼した。


ヴァネッサが、佐藤を、この『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の件で箱庭の雑居ビルの三階のオフィスから連れ出さないように、完璧な先回りを始めていたのである。


春の、その穏やかな日差しだけが、その若き女王の、そのあまりにも巧妙で、そしてどこまでも悪趣味な「罠」の始まりを、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


日本標準時4月15日午前10時35分。

ようやく晴れ間が見えてきた都内。


『オフィス真壁・代沢事務所』のオフィスには、珍しい緊張感が走っていた。

真壁梓が、そのスマートフォンの画面に表示された、リリアからの「指令」を読み上げ、そして、支倉詩乃の顔を見つめた。


「…『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』…ですって」

「…所長。また、とんでもない案件が舞い込んできましたね」


二人は、事務所でそれまで抱えていた『ペット探しや、浮気調査』といった通常業務を一時中断して、その新聞広告と電話番号を調べ始めた。


「…まず、綾辻観月さんには連絡を入れておきましょう」


梓が、自らのスマートフォンのセキュアなアプリを操作する。


(彼女は今、大学で授業中。『オフィス真壁・代沢事務所』にアルバイトに来たら、そのまま留守番をお願いする。というDMを残しておきましょう)


「詩乃。行くわよ」

「はい、所長」


二人は、その事務所をしっかり施錠と機械警備をかけ、留守の案内をわかりやすくエントランスに掲示してから飛び出し、あの魔改造された、軽バン――『白鼻芯ハクビシン』――へと乗り込んだ。


(運転は、もちろん支倉詩乃、助手席に、真壁梓)


詩乃が、その怪物のエンジンを静かにかけると、車は滑るように公道へと流れ出した。

彼女たちが向かったのは、近くの駅前の『公衆電話』。

その公衆電話の近くに、運転席に支倉詩乃をのせたまま車を停める。


(…事務所や携帯からかければ、こちらの「番号」が相手に知られてしまう。…探りを入れるなら、『足(発信履歴)』のつかない、これが鉄則)


梓が、心のなかで、自分が公衆電話から電話するのが正しいのか確認しながら、その公衆電話の受話器を取り、高性能なボイスレコーダーをセットしてから数枚の小銭を投入した。


そして、『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』と、一緒に掲載されていた、電話番号に、電話して、その謎の「広告主」に接触しようとしたのである――。


                    ***


数回の、呼び出し音が流れた後に、プツリ、と音が途切れ、受話器の向こう側から、若い女性の声で「はい。何でしょう?」と、抑揚のない声がした。

真壁梓が、「あ、もしもし?」と、好奇心から電話した風を装い、話し出す。


「新聞の広告で見たのですが、あの『ティラノサウルスの骨』って、本当に買えるのでしょうか?」


すると、電話相手の若い女性の声が、まるで完璧なマニュアルを読み上げるかのように、答えた。


「はい。『ティラノサウルスの骨』ですね。…とても貴重なものですので、現在、問い合わせが多いです」


彼女は話してから、さらにこう続けた。


「ですので、申し訳ありませんが、冷やかしの電話には、これ以上お答えできません」


梓が「いや、冷やかしでは…」と言いかけた、その言葉を遮り、電話相手の若い女性の声は、最後に、その「本題」を告げてきた。


「――もし、お客様が冷やかしの電話ではないという、証拠として、お見せいただけるのでしたら、今から、私が指示する私鉄の駅の〇番のコインロッカーに、指定の金額の、『現金(それは、法外な金額だった)』を入れて、そのコインロッカーの鍵を、近くの公衆トイレで待機している女性に、渡してください」


そのあまりにも古典的で、そして、どこまでも強引な「手口」。

梓が、何かを言い返す前に、若い女性の声の方から電話を、一方的に切られ、ツーツー、と、無機質な音が響き渡った。


真壁梓が、その受話器を静かに置くと、自らがセットしていた、高性能なボイスレコーダーに、今のあまりにもふざけた電話の内容が、完璧に録音されているか確認するため、彼女は、待機させていた白鼻芯へと足を速め戻った。


(…あなたたち、完全に、こちらをナメているわね…)


春の、その穏やかな日差しだけが、その若き探偵の、その静かなる「闘志」を静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


『白鼻芯』の助手席に戻った真壁梓は、手にしていた高性能なボイスレコーダーの再生ボタンを押した。

高性能なボイスレコーダーのスピーカーから、先ほどの生々しい「会話」が流れ出す。


「――…今から、私が指示する私鉄の駅の〇番のコインロッカーに…」


支倉詩乃と二人は、きちんと録音されていること、そして、真壁梓と電話相手の若い女性の声の、会話内容が、一言一句、完璧に記録されていることを確認して、梓は静かに頷いた。


「…さて。どうしましょうか、所長」


支倉詩乃が、そのあまりにも本格的すぎる「犯罪」の匂いに、これからどうしたら…と、不安げに真壁梓に尋ねると、

当の真壁梓が、その美しい顔に、獰猛な笑みを浮かべた。


「決まっているじゃない、詩乃。…このまま、電話相手が指定した、私鉄の駅に向かいましょう」

「えっ!?」

「まずは、ロケハンよ。そして、この『白鼻芯』を、怪しまれずに駐車できる所と、コインロッカーと、公衆トイレの両方を、同時に張り込みができるかどうかの確認ね」


梓は、その瞳を輝かせながら、支倉詩乃に続けた。


「場所が確保できたら、指定された私鉄の駅の公衆電話から、もう一度電話して、こう言ってやるの。『お金は用意した』と嘘を言ってね。…本当は、中身が空っぽのコインロッカーの鍵を、誰が受け取りに来るか。その顔を、確かめましょう」


そのあまりにも大胆で、そして、どこまでも危険な「おとり捜査」。

支倉詩乃の緊張した運転で、『白鼻芯』は滑るように、指定された私鉄の駅に向かった。


春の、その穏やかな日差しだけが、その二人の若き「探偵」の、そのあまりにも楽しげな「狩り」の始まりを、静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


『オフィス真壁・代沢事務所』の真壁梓と支倉詩乃が、あの魔改造された『白鼻芯』で、指定された私鉄の駅に、向かった頃。

箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、地獄のような、静かなる「攻防」が繰り広げられていた。


リリアが、佐藤が暇つぶしに書き込んでいたノートを奪い取り、次々とリリアとの輝かしい新婚生活のプランから、果ては「サトウさまが望まれるのなら、わたくしが、エミリア様も含め、何人でも、側室の生活費の面倒を見ますわ」などという、不穏なことまで、美しい文字で書き出したのだ。


そのあまりにも恐ろしい「人生設計」に、佐藤は顔面蒼白になり、慌ててその場から逃げ出した。

彼が、「避難場所」として選んだのは、サスキアの近くにおいた椅子に座りながら、真剣な顔で、『新聞縮小版の『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の、一行だけの広告がいつから掲載されていたのか、調べている、ヴァネッサだった。


「あ、あの、ヴァネッサさん、何をしているのですか?」


ヴァネッサが、その救いを求める佐藤の姿を「仲間」だと勘違いし、嬉しそうに顔を上げた。


「まあ、佐藤さんも『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の広告が、本当に詐欺かどうか、気になってきたのですね! 素晴らしい、正義感ですわ!」

「え、あ、いや、それは…」

「私は、このまま新聞縮小版で、いつから掲載されていたのか、調べますので、佐藤さんは…」


ヴァネッサがそこまで話したところで、「――健ちゃんを、巻き込まないの!」


通常業務とともに『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の業務開始を取り仕切っていた手を止めることなく、エミリアがヴァネッサに鋭い「警告」を発した。


「今日は、健ちゃんを、トラブルに巻き込まれないように『外出禁止』、『ネット禁止』だと言ったはずよ!」


そのあまりにも過保護な内容に、ヴァネッサが(姉さんの、そういう、ところよ!)と、思わず反論した。


「なら、そんなに佐藤さんが心配なら、姉さんがその『――ティラノサウルスの骨を、買いませんか?』の広告主が一体誰か探したら、よいでは、ありませんか!」

「その件は、あの、しつこい刑事に丸投げしたから、私は、もう動かないの!」


エミリアがそう言い返すと、二人の子供じみた、『口喧嘩(姉妹喧嘩)』が始まってしまった。

そのあまりにもレベルの低い「争い」を、リリアは(あらあら、好都合ですわ)と、再び佐藤のノートへと向き直り、そして、佐藤とサスキアは、(始まった…)と、その嵐が過ぎ去るのをただひたすらに待ち続けるのであった――。

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