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東京影譚 ~エミリア、影を紡ぐ者~  作者: ミルティア


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レアメタル狂騒曲(Rhapsody for Rare Metal)其二

この物語はフィクションです。

この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。


ようこそ、東京の影の中へ。

ここは、光が滅び、影が支配する世界。

摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。

欲望、裏切り、暴力、そして死。

この街では、毎夜、人知れず罪が生まれ、そして消えていく。

あなたは、そんな影の世界に生きる、一人の女に出会う。

彼女の名は、エミリア・シュナイダー。

金髪碧眼の美しい姿とは裏腹に、冷酷なまでの戦闘能力を持つ、凄腕の「始末屋」。

幼い頃に戦場で、彼女は愛する家族を、理不尽な暴力によって奪われた。

それは、彼女が決して消すことのできない傷となり、心を閉ざした。

今もなお、彼女は過去の悪夢に苛まれ、孤独な戦いを続けている。

「私は、この世界に必要とされているのだろうか?」

「私は、幸せになる資格があるのだろうか?」

深い孤独と絶望の中、彼女は自問自答を繰り返す。

だが、運命は彼女を見捨てなかった。

心優しい元銀行員の相棒、エミリアの過去を知る刑事、そして、エミリアの過去を知る謎めいた女ライバル。

彼らとの出会いが、エミリアの運命を大きく変えていく。

これは、影の中で生きる女の物語。

血と硝煙の匂いが漂う、危険な世界への誘い。

さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。

そして、エミリアと共に、非日常の興奮とスリル、そして、彼女の心の再生の物語を体験してください。

あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?

…この物語は、Gemini Advancedの力を借りて、紡がれています。

時に、AIは人間の想像を超える unexpected な展開を…

時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を…

Gemini Advancedは、新たな物語の世界を創造する、私のパートナーです。


この作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では一日遅れでの公開となります。あらかじめご了承ください。


ただし、どうか忘れないでください。

これは、あくまでフィクションだということを。

This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.

Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.

(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)


 カタカタカタ…と、エミリアの指先が、まるで鍵盤の上を舞う蝶のように、軽やかにキーボードを叩く音が、静かな空間に響き渡る。

そのリズミカルな音は、まるで彼女の思考の鼓動のようだった。


わずか数分。

それは、佐藤にとっては、永遠とも思える時間だった。

エミリアは、まるで魔法使いのように、次々と情報を集め、整理していく。

その手際の良さは、まるで熟練の職人のようだった。


「健ちゃん」


エミリアは、キーボードから手を離し、佐藤の方へ向き直った。

その声は、まるでベルのように澄んでいて、美しかった。

しかし、その瞳には、どこか冷たい光が宿っているようにも見えた。


「このレアメタルの調査依頼、リスクは高いけど受けようと思うの…。いいかしら?」


エミリアは、そう言って、軽く首をかしげた。

その仕草は、まるで小悪魔のようだった。


「もちろん、どこかの喫茶店で、依頼人と会って、詳しい話を聞くことになると思うけど。最終的には、細かい契約書を交わすか、あるいは、口頭での契約になるか…」


エミリアの言葉は、まるで 経験豊富なビジネスマンのように、冷静で、そして、どこか事務的だった。

佐藤は、エミリアの言葉に、深く頷いた。


「エミリアが受けると決めたのなら、僕は反対しないよ。…何か、用意しておくこととか、ある?」


佐藤は、そう言って、エミリアの顔をじっと見つめた。

その声は、まるで父親が娘を心配するように、優しく、そしてどこか頼りなかった。

エミリアは、再びノートパソコンの画面に視線を戻した。

そして、まるで獲物を狙う鷹のように、鋭い眼差しで、情報を吟味し始めた。


「そうね…、レアメタルが発見された場所が、日本じゃなくて…、熱帯地方の、ジャングルを流れる川の底、みたいだから…」


エミリアは、そこで言葉を切り、小さく息を吸い込んだ。


「…となると、まず、必要な書類と数多くの予防接種と虫よけと日焼け止めに医薬品と衛生用品に着替えが必要になるわね。…こっちの方は、私が手配するから、大丈夫。…健ちゃんは、ええと…、現地での活動資金として使うから、いくらかの暗号資産を、今から言う国の通貨の、現金に両替しておいてほしいの」


エミリアは、そう言って、いくつかの国の名前を挙げ、具体的な金額を、まるで暗号を読み上げるように、淡々と告げた。

その声は、まるで機械のように正確で、感情の欠片も感じられない。


「両替する場所だけど…、いつも利用しているところは…」


エミリアは、そこで言葉を濁した。

その表情は、まるで何かを思い出したかのように、一瞬、曇った。


「エミリア、何か問題でもあるの?」


佐藤は、心配そうに尋ねた。その声は、まるで迷子の子供のように、小さく、そして震えていた。

エミリアは、言葉を選びながら、ゆっくりと口を開いた。


「…この前、マネーロンダリングの国際捜査で、摘発されて…、潰されちゃっていたわ。…だから、今回は、手数料が高いけど、今から言う人に会って、両替をお願いして」


エミリアは、そう言って、一人の人物の名前を告げ、彼に会える場所を、佐藤に伝えた。

その声は、まるで秘密を打ち明けるように、小さく、そして慎重だった。

佐藤は、エミリアの言葉を、素早く暗記し、復唱して確認した。

その手つきは、まるで熟練の銀行員のように、正確で、そして無駄がなかった。


「…他に、何か、準備しておくことは?」


佐藤は、再びエミリアに尋ねた。その声は、まるで忠実な騎士のように、どこまでも真剣だった。

エミリアは、一瞬、考えるような仕草をした。

そして、まるで子供のように、無邪気な笑顔を浮かべ、佐藤に尋ねた。


「健ちゃん…、おっきなパフェって…、好き?」


その問いは、まるで唐突な、そして、予想外の質問だった。

佐藤は、一瞬、言葉を失い、目を丸くした。

まるで、白昼夢を見ているかのような、そんな不思議な感覚だった。


 重厚な木の扉が、ゆっくりと開かれる。

まるで、秘密の聖域への入り口が、その姿を現したかのようだ。

都会の喧騒は、その扉の向こう側に遮断され、代わりに、静寂と、微かなコーヒーの香りが、二人を包み込んだ。

そこは、知る人ぞ知る、隠れ家のような喫茶店。

高い天井には、古びたシャンデリアが、控えめな光を放ち、壁には、年季の入ったレンガが、まるで歴史の重みを物語るかのように、静かに佇んでいる。

床には、磨き上げられた木製の床板が、まるで鏡のように、周囲の光景を映し出していた。


エミリアは、店の奥、窓際の席に、ゆったりと腰を下ろした。

その姿は、まるで女王が玉座に着くように、優雅で、そして、どこか威厳に満ちていた。

彼女の前には、香り高い紅茶が、湯気を立てている。

その数分後、ウェイトレスが、まるで宝物を運ぶかのように、慎重な足取りで、一つの巨大な物体を運んできた。


「お待たせいたしました。特大フルーツパフェでございます」


ウェイトレスは、そう言って、にこやかに微笑んだ。

彼女は、昔ながらの、白いブラウスに黒いロングスカートという、清楚な制服を身につけている。

その姿は、まるで古き良き時代のメイドのようだった。

彼女が、佐藤の前に置いたのは、まるで宝石箱のような、きらびやかなパフェだった。

色とりどりのフルーツ、山のように盛られた生クリーム、そして、それらを彩るチョコレートソース…。

その姿は、まるで芸術作品のように美しく、そして、どこか背徳的な魅力を放っていた。


佐藤は、目の前に置かれた巨大なパフェに、ただただ、呆気に取られていた。

その口は、ぽかんと開き、目は大きく見開かれている。

まるで、夢の中に迷い込んだ子供のように、現実を受け入れられない様子だった。

エミリアは、そんな佐藤の様子を、まるで面白がるように、じっと見つめていた

その瞳には、悪戯っぽい光が宿っている。


一方、エミリアとテーブルを挟んで向かい合っている男、「T.M」と名乗るその男は、落ち着かない様子で、何度もハンカチで顔の汗を拭っていた。

その太った体は、高級そうなスーツに包まれているが、汗でびっしょりと濡れ、だらしなく着崩れている。

彼の顔は、脂汗でテカテカと光り、曲がったネクタイが、彼の焦りを物語っていた。

男の前には、冷め切ったアイスコーヒー。

その隣には、砂糖とミルクがたっぷり入った、甘ったるそうなクリームソーダが置かれていた。

まるで、彼の内面を映し出すかのように、混沌とした飲み物の組み合わせだった。


男は、名刺を差し出しながら、早口でまくし立てた。

しかし、その名刺には、会社名も、部署名も、そして、彼の名前すら、記載されていない。

あるのは、「T.M」というイニシャルと、携帯電話の番号だけ。

まるで、秘密組織の構成員が使う、偽造IDのようだった。


エミリアは、男の言葉に、静かに耳を傾けていた。

その表情は、まるで能面のように、感情の起伏が全く見られない。

しかし、その瞳の奥には、鋭い光が宿っている。

まるで、獲物を狙う鷹のように、冷静に、そして、どこまでも冷徹に、男の言葉、仕草、表情…。

その全てを観察し、分析している。


喫茶店の中には、静かなジャズが流れている。

まるで、これから始まる、危険な駆け引きの前触れのようだった。

窓の外では、秋風が、黄色く色づき始めたイチョウの葉を、揺らしている。

その音は、まるで自然が奏でる、鎮魂歌のようだった。


(…さて、この男…、一体、何を企んでいるのかしら…?)


エミリアは、心の中で呟いた。

その声は、まるで氷のように冷たく、そして、どこまでも静かだった。


 『T.M』と名乗った男は、目の前で繰り広げられる光景に、一瞬、言葉を失った。

スプーンを手に、特大フルーツパフェと格闘する佐藤。

その様子を、まるで母親のように、優しい眼差しで見つめるエミリア。

先ほどまでの、冷徹なビジネスウーマンの雰囲気は、微塵も感じられない。


(…こいつら、一体、何なんだ…?)


男は、心の中で呟いた。

その声は、まるで迷子の子供のように、小さく、そして震えていた。

しかし、すぐに、男は、自分の置かれている状況を思い出した。

彼は、日本の国益を背負い、危険な任務を遂行する、秘密エージェント。

こんなことで、動揺している場合ではない。


男は、軽く咳払いをし、無理やり笑顔を作ると、エミリアの方へ視線を向けた。

その笑顔は、まるで張り付けた仮面のように、ぎこちなく、そして不自然だった。


「ええと、失礼…。シュナイダーさんには、事前にお伝えした通り…、新しく発見されたレアメタルの鉱床について、調査の協力をお願いしたいのです」


男は、そう言って、ハンカチで額の汗を拭った。

その手は、小刻みに震えている。

喫茶店の空調は、快適な温度に保たれているはずなのに、彼の全身からは、滝のような汗が噴き出していた。


その時、男は、エミリアの視線を感じた。

それは、まるで氷の刃のように冷たく、そして鋭い視線。


(…そうだ、思い出した…! あの時も、こんな目で見られたんだ…!)


政情不安定な小国で、政府軍の兵士に宿屋を包囲された時に感じた、あの死の恐怖が、再び彼の全身を駆け巡った。

あの悪夢のような記憶。

彼は、現地の情報提供者と接触するため、古びた宿屋に滞在していた。

しかし、突然、機関銃で武装した政府軍の兵士たちが、宿屋を包囲したのだ。

彼らは、まるで獲物を狙う獣のように、荒々しく、そして執拗だった。

間一髪のところで、窓から脱出し、辛うじて逃げ延びることができた。

しかし、あの時の恐怖は、今でも彼の心に深く刻み込まれている。

まるで、悪夢の断片のように、彼の記憶の中で、繰り返し再生されていた。


(…なぜ、東京に、こんな『化け物』がいるんだ…!?)


男は、心の中で叫んだ。

その声は、誰にも届くことなく、彼の胸の奥底で、虚しく響き渡った。

彼は、同僚たちが、エミリアのことを『化け物』と囁いていたのを、何度も耳にしていた。

しかし、まさか、これほどとは…。


男は、エミリアの正体を知らされていない。

しかし、彼女が、ただ者ではないことだけは、本能的に理解していた。

彼女は、まるで深淵のような、底知れぬ闇を抱えている。

そして、その闇は、彼が想像するよりも、はるかに深く、そして、はるかに危険なものなのかもしれない。

その美しい金髪と青い瞳の奥に潜む、冷徹な光に、彼は身の毛もよだつ思いだった。

男は、震える手で、アイスコーヒーを口に運んだ。

しかし、その味は、全く感じられなかった。彼の喉は、カラカラに乾き、まるで砂漠のようだった。

一方、エミリアは、そんな男の様子など、全く気にしていない様子で、佐藤にスプーンでパフェを掬い、彼の口元へと運んだ。


「はい、健ちゃん、あーん♪」


エミリアは、そう言って、まるで子供に食べさせるように、優しく微笑んだ。

その声は、まるで天使の歌声のように、甘く、そして無邪気だった。

しかし、男には、その光景が、まるで悪夢のように見えた。

エミリアは、パフェを佐藤に食べさせながら、ちらりと男の方へ視線を向けた。

その瞳には、冷たい光が宿っている。

そして、彼女の腰には、ジャケットに隠された拳銃の、硬質な感触があった。

まるで、今にもその銃を抜き、男を撃ち殺すのではないかという、そんな錯覚さえ覚えた。


(…くそっ…、完全に、見透かされている…!)


男は、心の中で悪態をついた。

彼は、エミリアが、自分の全てを見透かしていることを、悟った。

彼女は、まるで全てを知っているかのように、冷静に、そして、どこまでも冷徹に、彼を観察している。


(…一体、どうすればいいんだ…?)


男は、絶望的な気持ちになった。

彼は、まるで蜘蛛の巣に絡め取られた蝶のように、身動き一つできない。


「…失礼ですが、」


その時、佐藤が口を開いた。

彼は、パフェを食べる手を止め、男の方へ視線を向けた。

その表情は、まるで大手企業の営業担当者のように、真面目で、そしてどこか緊張しているように見えた。


「私たちを…、どこで知ったのでしょうか…?」


佐藤は、そう言って、男に問いかけた。

その声は、まるで探りを入れるように、慎重で、そしてどこか警戒心を孕んでいた。

男は、佐藤の言葉に、一瞬、戸惑った。

しかし、すぐに、平静を装い、答えた。


「ええと、それは…、その…、弊社では、レアメタルの調査などを、いつも、同じ調査会社に依頼しているのですが…、その…、今回は、その会社が、どうしても都合が悪い、と…」


男は、言葉を濁しながら、言い訳のように続けた。

その声は、まるで嘘をついている子供のように、小さく、そして震えていた。

その様子を、エミリアは感情の読めない表情で、男から目をそらさず見つめている。

佐藤は、同情的な視線を男に向けた。


(…なるほど、いつも依頼している会社が、何らかの理由で、今回の依頼を断った、ということか…)


佐藤は、男の言葉の裏にある、真実を、瞬時に理解した。

そして、この男が、自分たちに依頼せざるを得なくなった、切羽詰まった状況も。

しかし、いつものように鋭い洞察力で状況を理解した佐藤は、エミリアのただならぬ雰囲気にそんなことを口に出せる雰囲気ではないことを悟り黙って続きを待つことにした。

エミリアは、相変わらず、男から視線を外すことなく沈黙を保っている。

まるで、これから何が起きるかを知って楽しんでいるようだった。


「レアメタルの鉱床についての調査の協力と言う事ですが、護衛と言う事でしょうか?」


エミリアは佐藤にパフェを食べさせるのを中断すると、『T.M』と名乗る男に確認した。


「護衛となりますと、現地での案内人、最低限、実戦を経験したことがある元兵士…。本当は特殊部隊出身の6名が必要。装備は現代戦に耐えられる最新のもの。六人もいれば、近接戦闘、狙撃、爆発物処理、医療、通信…。それぞれの専門家を揃えられれば理想的ですが」


男は、エミリアが、軽く指を折りながら人数を数える仕草をするのを、冷や汗を流しながら、必死にメモ書きをしている。

その様子を佐藤は内心で、(エミリアは本当に商談が上手いな)と思いながら成り行きを見守る。


「移動手段は…、そうね、装甲SUVが最低2台。可能であれば、軽装甲の兵員輸送車も1台欲しいところだわ。…もちろん、対空兵器は…、今回は必要ないわね。…現地の状況次第では、ヘリコプターのチャーターも視野に入れるべきかもしれないけど…、これは、現地の情報次第ね」


エミリアは、顎に手を当て、少し考えるような仕草をした。


「武器は…、アサルトライフル、サブマシンガン、スナイパーライフル、軽機関銃、対人地雷、手榴弾、催涙ガス弾…。それから、高性能の暗視装置、通信機器、複数の種類の衛星測位システム、ドローン…。医療キットも、もちろん必要ね。…あとは、爆薬探知犬、それと…、ジャミング装置も、念のため」


エミリアは、淡々とした口調で、必要な装備を列挙していく。

その声は、まるで買い物リストを読み上げるように、事務的だ。


「もちろん、これは、あくまで『最低限』のレベルよ。もし、本格的な戦闘になったら、これでも足りないくらい。…でも、安心して。私たちは、プロよ。状況に合わせて、臨機応変に対応するわ」


エミリアは、そう言って、不敵な笑みを浮かべた。

その笑顔は、まるで獲物を狙う肉食獣のように、冷酷で、そして、どこか美しい。

そして、その美しい瞳で、『T.M』の反応を、じっと観察している。


『T.M』は、エミリアの言葉に、息を呑んだ。

彼は、内心で葛藤しながら、言葉を絞り出した。


「そ、それは…、かなりの…規模になりますね…。…予算が…」


『T.M』は、顔面蒼白になり、言葉を詰まらせる。

彼の額からは、滝のような汗が流れ落ちていた。


(…これでは、民間軍事会社を雇うのと、ほとんど変わらないじゃないか…)


彼は、心の中で吐き捨てた。

しかし、同時に、彼は、エミリアの提案が、決して法外なものではないことも理解していた。


「そこで、提案なのだけど?」


エミリアは、身を乗り出し、男に提案した。

その瞳は、まるで獲物を狩る鷹のように、鋭く光っている。


「私と相棒の佐藤が現地に行って、土壌サンプルとレアメタルの鉱床全体の高解像度の画像データ、それに、現地の情勢に関する詳細な報告書、それら全てを、私たちが責任を持って用意する。…その条件なら、先ほど提示した費用の半額以下…、そうね、具体的には…、これだけの費用と、現地の案内人、それと、数名の護衛を雇う費用だけで、依頼を引き受けますよ?」


エミリアが『T.M』に提示した費用は、確かに高額だった。

しかし、最初に彼女が列挙した、大規模な護衛チームと、最新鋭の装備を揃える費用に比べれば、はるかに安く感じられた。


 秋も深まり、街路樹のイチョウは、鮮やかな緑の葉を、黄金色へと染め上げ始めていた。

澄み切った青空が広がる、穏やかな秋晴れの日。

エミリアは、佐藤を伴い、都内某所にある、一見すると何の変哲もないクリニックを訪れた。


清潔感のある白い壁、明るい照明、受付には笑顔の優しい看護師。

待合室には、健康雑誌や子供向けの絵本が置かれ、壁には、穏やかな風景画が飾られている。

どこからどう見ても、普通の、地域密着型のクリニックだ。

しかし、ここが、裏社会御用達の医療機関であることは、佐藤には知らされていた。


「…エミリア、本当にここでいいんだな?」


佐藤は、周囲を見回しながら、不安そうに尋ねた。

その声は、まるで子供が迷子になった時のように、小さく、そして震えていた。


「ええ、健ちゃん。心配ないわ。ここは、腕も確かだし、秘密も守ってくれる。…それに、表の世界の病院だと、色々と面倒な手続きが多いでしょう?」


エミリアは、そう言って、軽く微笑んだ。その笑顔は、まるで太陽のように明るく、佐藤の不安を和らげる。

受付で簡単な問診票を記入し、待合室のソファで待つこと数分。

診察室に呼ばれた二人は、白衣を着た、穏やかな雰囲気の中年男性医師と対面した。


「佐藤さん、エミリアさん、こんにちは。…今回は、渡航前のワクチン接種ですね?」


医師は、そう言って、にこやかに微笑んだ。

その声は、まるでベテランの教師のように、優しく、そしてどこか安心感を与える響きを持っていた。


エミリアは、事前に用意しておいた渡航先リストと、必要なワクチンのリストを医師に手渡した。


「ええ、先生。…このリストの通りにお願いします。…それと、念のため、熱帯地域で注意すべき感染症についても、詳しく教えていただきたいのだけど」


エミリアは、そう言って、医師の目をじっと見つめた。

その瞳は、まるで全てを見透かすように、深く、そして澄み切っている。

医師は、リストに目を通し、いくつか質問をした後、手際よくワクチンの準備を始めた。

その手つきは、まるで熟練の職人のように、無駄がなく、そして正確だった。


「佐藤さん、エミリアさん、お二人とも、いくつか接種が必要なワクチンがありますね。…まずは、黄熱病、A型肝炎、B型肝炎、破傷風…、狂犬病のワクチンも、念のため、接種しておきましょう」


医師は、そう言って、ワクチンの瓶を手に取った。

その瓶には、見慣れない外国語のラベルが貼られている。


「…先生、私もですか?」


エミリアは、少し意外そうな表情を浮かべた。

彼女は、過去の経験から、ある程度の免疫は持っているはずだ。


「ええ、エミリアさん。この地域は、特殊な風土病もありますから。念には念を入れて、ね。…それに、エミリアさんは、佐藤さんを守る立場でしょう? あなたが倒れるわけにはいきません」


医師は、そう言って、にこやかに微笑んだ。

その笑顔は、まるで全てを見透かしているかのようだった。


「…そうね、先生の言う通りだわ」


エミリアは、そう言って、小さく頷いた。


「佐藤さん、少しチクッとしますよ」


医師は、そう言って、佐藤の腕に注射針を刺した。

その手つきは、まるで魔法のように、痛みを感じさせない。

佐藤は、次々とワクチンを接種されていく。

まるで、人間兵器に改造される実験動物のような気分だった。

しかし、エミリアが隣にいるという安心感からか、不思議と恐怖は感じなかった。


エミリアもまた、医師の指示に従い、淡々とワクチン接種を受けていく。

その表情は、まるで人形のように、感情の起伏が見られない。


全てのワクチン接種が終わると、医師は、二人に、いくつかの注意点を説明した。


「…熱帯地方では、蚊やダニなどの虫を媒介する感染症が、非常に多いです。必ず、虫よけ対策を徹底してください。…それと、生水は絶対に飲まないこと。食事も、信頼できる場所で取るように…」


医師の言葉は、まるで父親が子供に言い聞かせるように、優しく、そしてどこか心配そうだった。


「…分かりました。気をつけます」


佐藤は、そう言って、深く頭を下げた。

その声は、まるで子供のように素直だった。


「…はい、ありがとうございます」


エミリアは淡々と答える。


最後に、医師は、二人に、ワクチン接種証明書イエローカードを手渡した。


「これは、国際的に認められているワクチン接種の証明書です。渡航の際に必要になることがありますから、大切に保管してください」


帰り際、エミリアは、医師に、小さな声で囁いた。


「…先生、もし、何かあったら、…例の番号に連絡を…」


エミリアは、そう言って、意味ありげな笑みを浮かべた。

その笑顔は、まるで悪魔の囁きのようだった。

クリニックを出ると、秋の柔らかな日差しが、二人を優しく包み込んだ。

佐藤は、大きく深呼吸をし、エミリアに尋ねた。


「…エミリア、あそこのクリニック…、一体、何なんだ…?」


その声は、まるで迷子の子供のように、小さく、そして震えていた。

エミリアは答えなかった、ただ穏やかに微笑んで先に立って歩くだけ。

佐藤は、そんなエミリアの背中を見つめながら、改めて、彼女が、自分とは全く違う世界に生きていることを、痛感させられた。


エミリアは、クリニックの駐車場に停めてあった、真っ白なコンパクトカーの運転席に滑り込むように乗り込んだ。

まるで、レースカーに乗り込むレーサーのように、無駄のない動きだ。

佐藤も、慌てて助手席に乗り込み、シートベルトを締めると、車内には、新車特有の、甘く、そしてどこか人工的な香りが漂っていた。


「…それで、健ちゃん。今回の手配だけど…」


エミリアは、エンジンをかけながら、まるで世間話でも始めるかのように、軽い口調で言った。


「現地での案内人を一人と、私たちの護衛を三人…、合わせて四人、手配したわ。これで、明後日には日本を出発して、レアメタルの鉱床を見に行くことになるわね」


エミリアは、そう言って、バックミラーで佐藤の顔をちらりと見た。

その瞳には、悪戯っぽい光が宿っている。

佐藤は、車窓から、黄金色に色づき始めたイチョウ並木を眺めながら、エミリアの言葉に、気の抜けた返事をした。


「…昨日、喫茶店で打ち合わせして、依頼を受けて…、もう明後日には出発か…。…なんだか、慌ただしすぎて、実感がわかないな…」


その声は、まるで夢心地のように、どこか上の空だった。


「あら、健ちゃん、何を言ってるの? 依頼主が、すぐに依頼料を、暗号資産で振り込んできたのよ? …私たちも、プロとして、それに応えなきゃ。…信用問題に関わるわ」


エミリアは、そう言って、軽く肩をすくめた。

その仕草は、まるで小悪魔のようだった。


「…まぁ、今回の移動手段は、健ちゃんにとっても、忘れられない思い出になると思うわ。…ふふ、楽しみにしててね」


エミリアは、そう言って、意味ありげに微笑んだ。

その笑顔は、まるで名画のように、神秘的で、そして、どこか謎めいていた。


「…ただ、健ちゃんには、ちょっとだけ、我慢してもらわないといけないことがあるの。…ええと、その…、目隠しを、ね」


エミリアは、そこで言葉を切り、悪戯っぽく笑った。

その笑顔は、まるで子供のように無邪気だった。


「め、目隠し!? …ど、どうして、そんなことを…!?」


佐藤は、エミリアの言葉に、驚愕した。

その声は、まるで悲鳴のように、車内に響き渡った。

エミリアは、そんな佐藤の様子を、面白がるように、両手で耳を塞いだ。

まるで、これから始まる騒音を、予測しているかのように。


「仕方ないじゃない。…先方から、『民間人には見せられないものがある』って、言われちゃったんだから。…その代わり…」


エミリアは、そこで言葉を切り、ニヤリと笑った。

その笑顔は、まるで獲物を狙う肉食獣のように、冷酷で、そして、どこか魅力的だった。


「…その代わり、健ちゃんのために、特別な計らいをしてあげたわ。…ほら、健ちゃん、ハーレムものの漫画、大好きでしょう? …だから、現地での案内人と、私たちの護衛…、四人全員、独身の美人さんを、選りすぐりで揃えておいたのよ!」


エミリアは、そう言って、ウインクした。その仕草は、まるで悪戯好きな妖精のようだった。


「エミリア! 僕は、フィクションと現実の区別ぐらい、ちゃんとついてる! …それに、僕は、一途なんだぞ!」


佐藤は、必死に反論した。

その声は、まるで子供のように、どこか必死だった。

しかし、エミリアは、そんな佐藤の言葉など、全く聞いていない様子で、楽しそうに鼻歌を歌いながら、ハンドルを握っている。

まるで、これから始まる冒険に、胸を躍らせているかのようだった。


(まったく、こいつは…)


佐藤は、心の中で悪態をつきながら、深くため息をついた。

そのため息は、まるで秋の風のように、冷たく、そして、どこか諦めに似た感情を含んでいた。

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