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忍法 その5 少女りんとの出会い


 「いよっしゃあああああああ‼」


 目の前の大木を体当たりで粉砕する俺。


 ククク、また強くなっちまったな…。


 そして目の前にはシャドウビーストに襲われて地面に倒れた少女の姿があった。


 「さっさとかかってこんかい‼ドサンピンがあああ‼」


 俺は両手を胸の前に置いて腰を低くする。


 シャドウビーストは有無を言わさずに襲いかかってきた。


 「どすこい‼」


 カウンターの一本張り手が入る。

 鉄砲柱(しのぶの家にはなぜか鉄砲柱がある)も一撃で砕く俺の張り手を食らってシャドウビーストは豹のような姿をした頭部を砕かれた。

 だが全身に纏う黒い炎が元の姿に戻してしまう。


 「上等じゃあああ。お前の超回復とワシの鉄砲、どちらが強いか、勝負じゃあああああああ‼」


 どどどどどど‼


 俺は敵の身体が粉微塵になるまで鉄砲を撃ってやった。

 怒涛の鉄砲祭は魔物に反撃の隙を与えない。

 果てはシャドウビーストの肉体は徐々に小さくなり、煙のように消えて無くなってしまった。


 「ワシが天下のしのぶ様じゃ‼覚えておかんかい、このクソ雑魚がああ‼」


 俺は自分の太鼓腹を叩いて気合を入れ直す。


 「大丈夫ですか?」


 俺は魔物の消滅を確認すると少女のもとに向かう。


 「あ、ありがとうございます。お侍様…」


 少女は太腿の傷を庇いながら立ち上がって礼をする。


 「侍?俺は侍じゃないよ。麓の村一番のわんぱく坊主さ」


 俺は少女を気遣って年齢相応の少年のふりをする。



 実に妙な空気と沈黙の時間流れた。



 流石に無理があったか…?


 「ありがとう。私は隣の村に住むりんという者です」


 このメスガキ、俺の自己紹介の肝心な部分をスルーしてきやがったな…。


 「ところでりんはどうしてここに来たんだ?この先は人食い虎が出るから危ないよ」


 「実は病気のお母さんの為にマンモス草を採りに行こうと…」


 安全が確保され、緊張の糸がほぐれた為かりんは泣き出してしまった。

 俺は半ば呆れながらもりんが泣き止むまで側にいてやる事にする。

 

 いずれ調教して俺の言う事を何でも聞く人間爆弾になるかもしれないからな。 

 念のためにキープだ。


 「どう?落ち着いた?」


 「うん。いきなり泣いてしまってどめんね…」


 「りん、ここは危ない。この道を辿って下まで行けば俺の村につくから君はそこで待っているといい。マンモス草は俺が採ってきてあがるからさ」


 ただし一本100万Gでな。出世払いでいいぜ?


 しかしりんは首を何度も横に振る。


 「しのぶ、私も連れて行って。これは私が勝手にやった事だから、しのぶだけに危険な思いをさせられない…」


 りんは涙を拭いながら立ち上がる。

 おそらくはどう説得してもついて来るつもりだろう。

 

 そういう目つきをしている。


 「はあ、何を言ってもついてくるつもりだね。仕方ない。だったら山の中では俺の背中に隠れていてくれ。俺が必ず君を守るからさ」


 「う、うん‥」


 その時、俺は背を向けていたのでりんがどのような顔をしていたかは知らない。

 だが後日俺は自身の軽率な振る舞いを一生、後悔する事になる。


 そして俺とりんは裏山の中腹まで登った。

 裏山には薬用と食用の山菜が生えているので、収穫時期になると村長の許可が下りた者が山に入る事が出来る。

 部外者であるりんを連れて山に入る事は歓迎されないのだろうが人の命がかかっているならば話は別だ。

 俺が後でしっかりと村長に説明して許可を取ってやろう。


 「綺麗なお花…」


 りんは草むらに咲いている赤い花を見て微笑んでいる。

 気丈に見えてもやはり女の子なのだろう。


 「りん、あまり俺から離れないでくれ。綺麗な花が咲いている場所なら後で俺が案内してあげるから」


 俺は苦笑しながらりんを嗜める。


 「はーい」


 りんは返事をするとづぐ俺の後ろに戻って来た。


 「しのぶ、マンモス草の話なんだけど…」


 「うん」


 「私のお母さんにあげる時はどうすればいいの?やっぱりお医者様のところに持って行かなければならないのかしら」


 「うーむ」


 マンモス草を使った薬を作るには多少の技術が必要になる。

 村人が使う時にも村長のところで調合してもらう必要があった。

 いくら村長が掛け値なしの全員だとしても、村人の為ならともかくよその村の人間の為に快諾してくれるとは思い難い。

 一般人バンピーならばここで諦めるところだが俺は魔人と呼ばれ恐れられたふじわら巨根斎。薬(※主に毒薬)の調合には自信がある。


 さてどうするか…。


 「りん、実はさ、俺の母さんがマンモス草からお薬を作れるんだけど村の掟でよその村の人にはあげられないんだ」


 「うん…」


 りんの返事には悲痛の色が見え隠れする。

 ある程度は予想できたことなのだろう。

 中世暗黒時代とは地域社会というものが排他的な時代なのだ。


 「でも薬をもらった事を内緒にしてくれるなら、用意してあげられると思う。それでどうかな?」


 「…‼それ、本当⁉」


 「ああ、男に二言は無いよ」


 りんは背後で嬉しそうな声をあげる。

 彼女の声を聞いているだけで、俺も嬉しい気持ちになっていた。

 俺たちは家の手伝いがどうとかそんな他愛ない話絵盛り上がりながら目的地に向かった。


 だがややきつい坂道に入ったところで事態は急変する。


 道の真ん中にはいくつもの大きな虎の死骸が転がっていた。

 その奥にはっさきのシャドウビーストと黒い鎧に身を包んだ戦士の姿が見える。


 「ぎゃうッ‼」


 地面に転がっていた大きな虎に槍を突き刺して絶命に至らしめる。

 髑髏の頭から見える瞳は煌々と赤い光を放っていた。

 

 魔王の忠実な部下、ヘルライダーだ

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