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忍法 その4 秘伝書ゲット。忍法を再習得する。


 あくる日、俺は村長に呼び出された。


 村長は元冒険者で名のある戦士だったそうだ。


 「しのぶ、ゴブリンを退治してくれたそうだな。ご苦労」


 村長は謝礼金として800G入った皮の袋を俺に寄越した。


 800Gか。

 これだけあれば町で「益荒男ますらおの化粧まわし」を買う事が出来るな。

 力士の俺にはぴったりの装備だ。

 序盤はこれがあれば魔王軍指揮官と戦うイベントとまでは大丈夫だと攻略サイトにも書いてあった。

 

 重畳重畳。


 「ところでしのぶよ、もう一つ頼みがあるんだが頼めるか?」


 「何でも言ってください」


 「実はな、都の商人(※昨日、美味しくいただきました)に頼まれて裏山の天辺に生えているマンモス草を採取しなければならないのだ」


 マンモス草は俺の村の特産品で、滋養強壮の効果を持った貴重な薬の材料だ。

 つい最近、死んでしまった俺の曽祖父から俺たち一家は採取できる場所を教えてもらっている。

 村の人間ならば全員知っている場所なのだが道中では人食い虎が出没する禁断の地でもあった。


 村長め、俺を剛力無双と知って依頼して来るとはな。


 やるじゃないか。


 「そういう話なら任せてくださいよ、村長。俺の鉄砲なら虎どもが何匹かかってきても片っ端からぶち殺してやります」


 俺は右手を折って力瘤を作る。


 この鋼の肉体があれば何でも出来る。

 そうだ、俺こそが最強なのだ。


 「よし。そういう話なら任せたぞ、しのぶ。前祝いの代わりじゃ、コイツを持っていくがいい」


 村長は部屋の奥に或る宝箱を開ける。

 箱の中には筒状の何かが入っていた。


 「これは我が家に伝わる家宝じゃ。異国の言葉で書かれているのでワシには読めん。だが村一番の知恵者であるお前なら何かの役に立つかもしれん。持っていくがいい」


 俺は村長に筒を押しつけられる。


 どれどれ…‼‼‼


 ッ‼


 「ふじわら巨根斎の楽々忍法秘伝の書」だと⁉

 前世で俺が書いた物じゃないか‼


 俺は村長から巻物を受け取ると一礼して家に帰る。


 その夜、俺は前世の記憶を総動員しながら秘伝書を解読した。


 「不味いな、これは…」


 朝日が昇る頃、秘伝書を読破した俺は早くも問題にぶち当たる。

 今の俺は肉体強化に特化した物理攻撃タイプ。

 MPゼロの状態だった。

 

 一応、この世界には魔術の才能という物があって、これが無い者には魔術を扱う事は出来ない。

 よその国に行けば魔術師は多いと聞いているが俺の住むフソウの国では魔術というジャンルにおいては後進国だったので当然魔術師も少ない。

 いくら忍術の知識があっても根源たる魔力そのものが無ければ忍術が使えないのだ。

 宝の持ち腐れとはこの事だ。


 「ううむ。どうしたものか…」


 俺は納屋でな転がりながら天井に向かって手を伸ばす。

 一応、対策としては忍術を他者に教えて力を奪う方法が無いわけでもないが、その場合は今の怪力無双を失ってしまう。


 「この抜山蓋世のマッスルを失うには惜しいな…」


 今までの筋トレの日々を思い出す。

 前世の俺はポジション的に悪の妖術師だったが、クロコダインのように腕力だけで戦う男へのあこがれも強い。


 「無い物は仕方ないか。全く…。昔ならこうやって『火遁、火山弾の術』とかい言えばすぐに…」


 ドシユウッ‼


 その時、いきなり俺の掌から小さな火の玉が発射された。


 「馬鹿な‼」


 火の玉は幸い天井に届く前にチャクラが切れて消滅したが、魔力ゼロの俺が火山弾の術を使ったのは紛れもない事実。


 「ステータス、オープン」


 俺はすぐに自身のステータス表示を有効にして現状を確認する。


 「馬鹿な。魔力が11、つまり魔術が使用可能だと⁉」


 俺は自身の変化に目を疑う一心だった。

 そこで俺はステータスを再度、確認する。

 カーソルをステータス欄の魔力に重ねると「ゴブリンを食した事により魔力が身についた」と書いてあった。


 ヒャッホウ‼


 俺は飛び上がって狂喜乱舞する。

 やはりあまり美味しくは無いがゴブリン食は正解だったのだ。


 俺はその日から魔物食をふんだんに食事に取り入れる事を決意する。


 「だがその前に村長から頼まれた仕事をやっておくか…」


 俺は納屋を出て母屋に向かう。

 朝食にはゴブリンの丸焼きも食べよう。


 朝食後、俺は両親に村長からの頼まれ事を伝えると裏山に向った。


 どれ人食い虎とやらがどれほどのもか試してやろう。


 道中、山の入り口辺りで行商人たちの死体を発見する。

 この辺りは大きな街道に続いている道が為に小休止として俺の村が使われる事が稀にある。

 しかし人食い虎が出る森林地帯までには少し距離がるはずだが…。


 俺は死体を道の端っこに移動する。


 「⁉」


 その時、林の向こうから人の気配を感じた。

 足取りは重く、呼吸は荒い。


 「誰かたすけて…」


 女性、いや少女の助けを求める声がした。


 前世の俺ならば捨て置く状況だが、

 今はまだ少年(13歳)なので振舞いには注意しなければならない。

 愛らしい外見(※本人はそう思っている)中身が邪教の教祖だとバレればまた飛天丸のような生意気なガキに因縁をつけられるからな。


 俺は上着を開けて、林の中に乗り込んだ。

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