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n忍法 その3 異世界転生 いきなりゴブリン退治。

 

 最も古い記憶は故郷の口減らしの為に山奥に置き去りにされた時の物だ。

 

 当時はどうしてこうなってしまったのか、自分にどんな非があったのかなどとよく考えたものだが程無くしてそう考える事を止めた。

 空腹で意識が朦朧として物を考える事が出来なくなってしまったのだ、情けないという他ない。

 獣のように山中を彷徨い、三日目に半死半生の状態で僧侶に拾われた。

 それが前世での私の始まりだったはずだ。


 現世はどんな始まり方をするのか?それだけが関心事だった。


 そしてどことも知れぬ異邦で私が生まれてから三年の月日が経過した。


 (自我が目覚めるまで費やした月日は三年か…。まあ妥当なところか)


 私ことふじわら巨根斎はまず名前の由来でもあるイチモツを拝見した。


 …。


 想定よりもかなり小さい。

 

 まあ三歳ならばこんなものだろう。


 私はさめざめとした気分で三歳児としての初日を迎えた。

 

 知性、運動能力は平均値で特に抜きん出たものはない。

 前世もそうだったから問題なし。


 私はその日から体力重視でトレーニングを行う事にした。

 

 忍術の基本は体力。

 術を行使するのも、術の源となる気を練り上げるにも体力が必要なのだ。

 日が高いうちは実家の農作業を手伝いながら、空いた時間で基礎トレを行う。


 よしよし。


 このまま上手く行けば十歳になる頃にはボディービルダーみたいな体型になっているだろう。


 目指せ、谷垣ニシパ‼


 そして七年後、完全に失敗した。


 実家は富農だった為に食料に不自由しなかった。

 故に瘦せ型の力士みたいな下半身デブになってしまったのだ。

 

 これでは悪の首領というより策の手先のデブではないか‼私は十三歳までシュッとした痩せ型ボディを目指して自主トレを続ける。


 私、十三歳。


 上半身と下半身の肉の量が均等になってしまった。

 見事な力士体型だ。


 私は鑑に移った自身の姿を眺め、ガックリしながら家に帰った。


 「しのぶ、元気が無いな。今日はまだどんぶり三杯しか食べてないぞ?」


 もりもり。


 私は現世においてしのぶという名前を与えられていた。

 農民なので姓は無い。いい名前じゃないかと思う。


 「何ていうか思い描いた自分になれなかったていうか…人生上手く行かないもんだなあって考えてた」


 俺はどんぶりを受け取って炊き立ての飯をかきこんだ。

 米の名産地だけあって白飯がこれまた美味い。


 ガツガツガツ。


 これだけ美味いんだからお通じも良くてカロリーもゼロだろう。


 「おかわり」


 私は四杯目を頼んだ。


 「ところでしのぶよ、村の近くの洞窟にゴブリンが住みつきやがってな…」


 対面で飯を食っていた親父がとんでもない話を始めた。

 このッ和風建築が立ち並ぶ世界でゴブリンだって⁉絶対に設定バグってるだろ。


 私は味噌汁(※ネギと豆腐)を飲んで心を平静に保とうとする。


 うむ、美味い。


 みそ汁の具はシンプルなのが一番だ。


 「お前の体当たりと頭突きでゴブリンどもを懲らしめてやってくれないか?」

 

 親父は裏庭の雑草を抜いて来いという感覚で俺に頼みごとをしてくる。

 確かに村には私より強い男衆はいないが、相手はゴブリンだぞ?

 冒険者でも雇って対峙してもらう方が絶対にいいだろ。


 「ううん…。一方的にゴブリンを駆除したら県外の人間から苦情が来るからなあ…」


 「まあ、そう言うな。外の連中にはバレないようにするから一つ頼むぜ、横綱。お前の相撲をゴブリンどもに見せてやれ」


 親父はガハハと笑いながら俺の肩を叩いた。

 

 これ一応、忍者物なんだがな。


 だが今の俺はただの子供。やがて世界の神と為る為には周囲からの人望も必要となるに違いない。


 俺はすぐにゴブリンどもが潜むという洞窟に向った。


 「どすこーい‼」


 とりあえず入り口に立っていた見張り役のゴブリン二匹を粉砕。

 ゴブリンたちは脳漿を飛び散らせて物言わぬ屍と化す。


 「これが俺の宿命か…」


 俺はすり足で洞窟内に潜入し、ゴブリンというゴブリンを殺しまくった。


 「貴様ー‼よくも俺様の可愛い…ぶぎゃああああああッ‼」


 我が前に立つ者は撃滅粉砕あるのみ。

 俺は得意の頭突きでゴブリンプリンスを肉塊に変えた。


 「おお、助かりました。私は旅の商人。村にM飼う途中でゴブリンに囚われ…」


 「エンジン全開じゃあああ‼」


 俺は商人らしき男の腰を掴んでそのまま壁にぶち当てた。


 「どすこーい‼どすこーい‼」


 商人は悲鳴を上げる間も無くぺチャンコになってしまった。


 「戦いには犠牲がつきものよ…」


 俺は洞窟の入り口を破壊して証拠隠滅してから村に帰った。


 「親父、ゴブリンは殺したぜ?」夕飯時、俺はちゃんこ鍋を囲みながら俺は親父に事の顛末を報告する。


 

 …ちゃんこ鍋の具はもちろんゴブリンだ。



 「流石はしのぶだ。俺の息子だけはある」


 親父はガハハと笑いながらゴブリンの目ん玉を食べている。

 

 親父め、一番うまいところを食べやがって。


 俺はゴブリンの肉に舌鼓を打ちながら今日の戦果について考えていた。


 やはり子供の力は弱い。

 あの程度のゴブリンを倒すのにかなりの時間を費やしてしまった。

 これはもっと食べて体重を増やすべきだな。


 「しのぶ、そういえば村長さんが言っていたんだけど…ゴブリン退治の途中で都の商人さんに出会わなかった?」


 「いや全然」


 「何でも王様の用事で村までやってきたそうなんだけどねえ」


 お袋はゴブリンの手を食べている。

 いやあの肌色の皮膚はゴブリンではない。

 多分例の商人の手だろう…。


 ま、いいか。


 良くねえよ。



あくる日、俺は村長に呼び出された。村長は元冒険者で名のある戦士だった

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