表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

忍法 29 自在転生


 時は前世の青年期まで遡る。


 当時、故郷を滅ぼした野武士に対して復讐を誓った俺はひたすら力を求めていた。

 武術、兵法、自己鍛錬、とにかく何でもやった。

 傭兵なんかもやったりして同志を集めたり、復讐相手の情報を収集して虎視眈々その機会を待っていたのである。

 やがて百人くらいの手下を抱え、野武士の集落に攻め込もうとした時にそいつらと出会った。

 俺に法技(※魔術、呪術一般の事)を授けた”山の民”との出会いだ。

 闇の世界の最高戦力である忍たちからは神の使いとも呼ばれれる連中で、その場に居合わせたというだけで俺と手下たちは襲われてしまう。

 結果は散々足るもので手下の多くは殺されるか逃亡、最後まで戦った俺だけが残された。

 そいつらは女性だけの一族で仲間を増やす時以外は基本、男は殺される。

 本来なら俺の命は無かったはずだがとある山の民に目をつけられて俺は生きる事が出来た。


 そいつが…。


 「久しいな、義人。まさかこの自在の顔を忘れてしまったか?」


 やよいは邪悪な笑みを浮かべる。


 そうだ、コイツは自在。

 あの憎きクソ餓鬼、銅飛天丸の祖母でありかつての俺の妻だった女だ。


 いやもう他人だ。むしろ忘れて欲しい。


 「はて?どこのどなた様でしょうかのう…」


 俺はすぐに惚ける事にした。

 この傲岸不遜が服を着たような魔女に関わるとロクな事が無い。

 すぐにでも逃げ出して、いやもう村で一生土蔵か何かで隠れて暮らしたいくらいだ。



 「天誅」



 ぐぼっ‼


 やよい、もとい自在は俺の背後に回り両手を組んで浣腸の形を作り、肛門に突き刺した。

 今の肉体年齢でもギリアウトだぞ、クソ女‼


 「んがっ⁉」


 精神と肉体双方から来る衝撃のあまり、俺は悶絶する。

 今の俺は「快便」のスキルを神からもらっているので便に困った事はないというのに…。


 「ふん。お前の”初めて”は全て私が管理すると言っただろうに。クックック、しのぶのアナル処女ゲットだ」


 鬼畜かッッ⁉


 邪悪な笑みを浮かべるやよいは正に前世の自在そのものだった。


 「相変わらず無茶苦茶なヤツだ。して自在、お前の目的は何だ?…スセリの民はもういないのだぞ」


 スセリの民とは山に住む者たちの俗称で人類とは異なる起源を持つものだと集落の長老(※自在の実母)から聞かされた。

 ちなみに自在は次期長老に選ばれなかったので一族を滅ぼしたかなりの危険人物だ。

 俺が飛天丸の母とその子供たちの世話をしなければならなくなったのも実は自在のせだったりする。



 「フハハハハッ‼決まっているだろう‼現世の支配者になる事よ‼幸い貴様も手元にいるわけだから子孫も増やし放題だ‼」


 「断る。いいかそういう話はだな…」


 俺は男女の清い交際に始まり、夫婦の契りを交わす際には確たる段取りが必要である事を訴えた。


 自在は生前から自身の子供の事を野心達成のための道具くらいにしか考えていなかったのだ。

 ちなみに前世で自在こいつを殺したのは長女である。


 まあ奴の旦那と息子を政敵排除の為に人間爆弾に改造したのだから同情しようがない。


 「相変わらずお堅い奴だな、巨根斎よ。そういうのはお前のチンチンだけにしておけ。はっはっは」


 こういうデリカシーの無い発言も嫌いだ。


 恩人の娘なので渋々と結婚したが、ロクな思い出は無い。


 「時に自在よ。なぜお前はこのような茶番に興じるのだ。何か目的があるのか?」


 俺はかねてよりの疑問を口にする。

 自在は極端なマキャベリストで権力欲の塊のような人間だが、武術大会に出て己の力を示すようなやり方は好まない。

 さらにもう一つ、気になったのは俺の力を利用しようとしている事だった。

 唯我独尊な自在に限って他者の力をあてにするなど断じて考え難い。有り体に言えば不自然な言動だ。


 「何、簡単な話だ。この身体には何の力も宿ってはいない。わかるか、巨根斎?私はかつての私のように呪いの力と武力が欲しいのだ」


 自在は着物を開けて俺に左肩を見せる。

 五枚の花弁から為る 桜の花に良く似た呪印が施されていた。

 かつてじ自在が殺した母親が死ぬ間際に自在に刻みつけた物だった。


 なるほどあれでは転生しても十全の力を発揮するのは難しい。


 「まずこれの呪印を解除する宝具が欲しい。実はなクスカワの町に来た行商から如何なる呪いをも打ち消す香炉がある事を聞き出したのだ」


 「ほう。それでその行商人はどうなった?」


 

 …両者の間に気まずい沈黙が続く。


 「別にいいではないか、そんな話は?もしかして私がその行商人と良い仲になったのではないかと勘繰って嫉妬しているのか?可愛い奴め」


 この様子からして十中八九、土の下だな。


 「寝言は寝て言え、自在よ。俺も暇じゃねえんだ。お互い今後は妨害無しって話なら協力してやってもいいぜ?」


 自在こいつが今どれくらい強いかはわからないが、敵に回せば俺の戦い方を知っている分だけに厄介な相手になる。

 そもそも俺は純粋に自分の実力を試したいだけなんだ。


 「良かろう。その話乗ってやる。香炉を手に入れたら大会をおとなしく辞退してやる」


 「交渉成立だ」


 かくして俺は腐れ縁の自在と同盟を結ぶことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ