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忍法 その21 新たなる戦場へ‼


 どしんっ‼


 俺は左右の足で交互に地面を叩く。


 ファイアードレイクとの戦いは俺たちの完全勝利だった。

 奴の手先の飛竜たちは散り散りになって逃げだしている。


 去る敵は追わず。

 その気があるなら何度でもかかってくるがいい。


 俺は四股を踏んだ後、村長と村人たちの元に行く。


 「村長、終わったぜ?」


 「流石はしのぶ君。これは私からの心ばかりのお礼だよ」


 村長は俺に古びた柄杓を渡した。


 「これは村の宝の”力人の柄杓”じゃないか‼俺みたいなガキにこんな…」


 村長は首を横に振る。


 「君はもうわんぱく坊主のしのぶ君じゃない。立派な大人だ。これを持って力比べに行くといい」


 村長は笑顔で俺の肩を叩いた。

 俺は早速、近くの井戸から水を汲んで柄杓で掬い取る。


 ずずず…。


 井戸の水がいつもより美味く感じられた。


 「ごっつあんです、村長。俺は都に行って世界殺戮相撲トーナメントに出場して必ず出場選手を全員、ぶっ殺してくるから‼」


 「いや殺すのはどうかな…。ていうかそんな名前だっけ…」


 俺は村人と村長と共に村の広場に向った。広場では万が一に備えて村人たちが避難していた。


 「あれ?りんと金糸雀姫は?」


 俺は顔見知り二人の姿を捜す。だが、あの二人はどこにもいなかった。

 まさかまだ風呂に入っているんじゃねーだろーな。


 俺は二人の行方が気になって村長の奥さんに聞いてみる事にした。


 「おかみさん。りんとお姫様はどうした?」


 「おりんちゃんとお姫様かい?…女の子は外に出る時に色々と準備が大変だからね。っさきはドライアーの取り合いをしていたよ」


 おかみさんは仲睦まじい姉妹喧嘩を眺めていた時のように笑っている。


 いや待て‼

 この世界、ドライアーあるのかよ⁉ていうかこの村、電気通っているのかよ⁉


 俺は様々な疑問をあえて無視した後、村長の家に向った。


 後ろから炎龍国の近衛隊長であるリキとその部下たち、村長一家がついてくる。


 なんかピクミンご一行みたいだな…。


 そして村長の家に到着。家の中ではりんと金糸雀姫が取っ組み合いの大喧嘩をしていた。


 「いい加減、着物を着てください‼その小さな布だと風邪を引きますよ⁉」


 りんは金糸雀姫を上から抑え込んで何とか着物を着せようとしている。

 そこに金糸雀姫の蹴りが顔面に入った。


 「私に気安く触れるな‼私は炎龍国の王女、お前のような田舎娘が軽々しく…」


 りんは小柄な金糸雀姫の姫を持ち上げ、そのままパワーボムを決めた。


 ガスンッ‼


 そして頭を打ってグロッキー状態の金糸雀姫にダスティー・ローデスばりのエルボードロップを決める。


 フィニッシュのアピールまで決めやがって…。


 お前ら女子プロレスラーにでもなれよ。


 「おい、お前ら止めろ。ここは他人様の家だからな」


 俺はとりあえず気絶した金糸雀姫の右腕に腕ひしぎ逆十字固めを極めているりんを引き離した。

 りんの受けたダメージも相当なもので顔や着物に足跡がついていた。

 金糸雀姫のあつかいについては近衛兵隊長のリキが「因果応報」という事で大目に見てくれた。


 金糸雀姫め、母国じゃかあんり無茶をやっていたな…。


 気絶しているリキや彼の部下は死清々しい顔で、己の主君を見ていた。


 「さて。金糸雀姫には祖国にお帰り戴くとして。お前も家に帰れよ」


 がすっ‼


 りんの膝蹴りが俺の腹に入る。

 普段なら冗談で済ませるところだが今が強敵との戦いの後なのでそれなりに効く。


 「またアンタは私をのけ者にしようとする‼」


 「いや一般論だろ」


 ギロッ‼


 りんは文字通り、目を剥いて俺を睨みつける。

 地獄の鬼も思わす目を背けてしまいそうな迫力には流石の俺もたじろいでしまう。


 「私、今日はアンタの家に止まって行くから。ついでにアンタの部屋は私とこの娘(※金糸雀姫)が使うから、外で寝てよね」


 「いや、それは…」


 「あ⁉」


 ナンデモアリマセン。


 かくしてこの場はりんによって強引に収められた。

 結局、俺は次の日の朝まで裏山で地皇と一緒に寝る事になった。

 ふかふかの地皇たんを枕代わりに出来るなんて幸せだぜ。


 「おはよう」


 翌朝、俺は朝食の具材を持って家に帰った。

 うぐいに良く似た川魚に、山菜を少々というところだ。

 炊事場では俺の母親がせっせと飯の支度をしている。

 りんと金糸雀姫の姿は…無かった。


 「よう、しのぶ。おはよう」


 親父が手ぬぐいを首に巻いて家に戻って来た。

 昨日、ファイアードレイクと共に来襲した飛竜が畑の作物を荒らしていたらしく、その始末に行っていたらしい。


 「畑はどうだった?俺も何か手伝うか?」


 俺は山菜の入った籠を炊事場の端に置く。


 手に入ったのは蕨と細竹となめこっぽい山菜だ。

 何か北海道の大雪山系の山菜に限定されているような気がするが…気にするな(※落葉きのこは無かった)。


 「いやその必要は無えよ。俺たちで十分さ。それより村を救った英雄様は”全世界殺戮相撲トーナメント”の為に英気を養ってくれや」


 親父は気楽に笑う。


 「そうさせてもらうぜ。優勝したら村をあげてお祝いをしようぜ」


 俺と親父は笑い合う。


 かくして俺の新しい冒険、全宇宙生命体鏖殺相撲トーナメントへの挑戦が始まるわけだ‼

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