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忍法 その20 VS 天空の王者 ~決戦~

 

 俺は村長と連絡に駆けつけた村人と一緒に外に出た。

 本当は一人の方が気が楽だが、他の連中は一度言い出したら梃子でも動かないような雰囲気だったので勝手な行動はしないと念を押してから退同行を許可する。

 りんと金糸雀姫はまだ風呂から出て来ていないが村長の奥さんに言伝を頼んでいるので問題は無かろう。


 俺は暗雲広がる夜の下で飛竜の王、ファイアードレイクと対峙する。

 竜鱗に覆われた巨大な翼、鋼鉄をも容易に引き裂く爪と牙。

 裂けた口からは憤怒の業火が見え隠れする。

 その雄々しい姿には畏敬の念さえ覚えるというものだ。


 「だが所詮は畜生。格の違いという物を教えてやるでごわす」


 俺は地面を左右の足で叩き、気合を入れ直す。


 ファイアードレイクも負けじと空に向かって叫んだ。


 「ぐはははッ‼さて貴様の討伐報酬は何がもらえるのかのう‼竜玉か?怪しげなチケットか⁉」


 残念ながらこの話はモンハンとリンクしていないので竜玉や専用装備作成用のチケットはもらえない。


 「しのぶ君、我々はどうすればいい?」


 村長たちは俺の背後で農具を持って待機している。

 どうせ戦場に出ても役には立たないので、上空を見張ってもらう事にした。


 「村長たちは空を見ていてくれ。飛竜たちが村に攻め込む可能性がある」


 「応ッ‼」


 背後から威勢の良い返事が聞こえる。


 俺は再度、四股を踏んで相手を見た。


 「ぐぎゃああああッ‼」


 ファイアードレイクは両腕を広げ、大きく息を吸い込みファイアー息吹ブレスを発射した。


 「オッシャアッ‼」


 俺は連続で張り手を打って炎を散らした。

 無論、ノーダメージではない。

 掌が少し焦げた。

 

 だが当のファイアードレイクの方は驚愕の形相で俺を見ている。

 俺と相撲を侮った罰則ペナルティーじゃい‼


 俺は迫る猛火を全て叩き落とし、怒涛の勢いでファイアードレイクに迫った。


 「ぬん‼」


 そして横面に張り手をぶち込む。

 ファイアードレイクの顔が大きく左に逸れた。


 ひゅっ‼


 同時に右腕の爪で俺を攻撃する。


 この畜生が、攻撃方向に身体を反らす事で打撃の威力を緩和するディフェンステクニック、スリッピング・アウェーまで使いこなすとは‼

 結果、俺の頬は薄く切り裂かれてしまった。

 

 自己メディカルチェック…毒のダメージは無し、と。


 俺は間髪入れずに敵の側面に回り込んで蹴りを入れる。

 大木をも吹き飛ばす俺の蹴たぐりを受けてみんかいッ‼


 「げぎゃああああッ‼」


 ファイアードレイクは咆哮と同時に火をまき散らした。


 俺は村人を守る為に一度、後退して火の粉を払う。

 流石は飛竜の王、秘密兵器くらいは持っていたか…。


 「しのぶ君、大丈夫かい?」


 背後から村長が俺を心配して声をかける。

 俺とした事が、この程度の敵に苦戦したせいで彼らに心配させてしまったらしい。

 俺はわずかに口の端を歪ませ、余裕を含んだ笑みを見せた。


 「本気の俺の敵じゃあねえな…。こっからが俺の真骨頂だ。よく見ておきな‼」


 俺は大きく息を吸い込んで全身に気を張り巡らせる。

 そして渾身の力を込めて息を吐き出し、循環させた気を止め、筋肉の硬度を高めた。


 「行くぜ、相撲殺法‼」


 俺は地面を蹴ってファイアードレイクに襲いかかる。

 飛竜の王は目を剝いて鉤爪を繰り出した。

 俺の間近を横薙ぐ猛爪を紙一重の差で回避して俺はもろ手突きを日竜の王の喉目がけて打ち込んだ。


 「ぬうっ‼」


 飛竜の王はこれを皮膜の翼で防ぐ。

 器用な奴め。


 俺は一度、距離を取ってから左右の張り手で飛竜の王の胸を打った。


 「そらそらそらそら‼鉄砲祭でござーい‼」


 俺の巨岩をも砕く張り手の連打を受けてファイアードレイクは悶絶する。

 張り手の衝撃で呼気の流れをせき止められて何も出来ないのだ。


 「ぬははははッ‼根性見せてみんかーい‼」


 俺は敵の腹を一心不乱に打ち続けた。


 「げぎゃあ‼」


 天を衝くほどの巨体が地を揺らしながら後退する。飛竜の王は自らの窮地を察し、空に逃げようとした。

 だが、そこが俺のねらい目だ。


 「ファイアードレイクよ、それは悪手じゃあ‼この俺の頭突きを食らわんかい‼」


 俺は地に足を突き、上半身を可能な限り下げた。

 そして上空に逃げようとする飛竜の王を見上げる。

 もはや威厳も糞も無い、格好の的だった。


 「これがしのぶ様の雷神駆ライジング頭突きじゃーい‼どっせーい‼」


 俺は空に向って飛び上がる。


 狙うは飛竜の王。


 ずがんっ‼


 ファイアードレイクは後ろを振り向いたまま顔面を爆砕された。

 悲鳴を上げる暇もない。

 そして頭部を失った竜の巨体を地面に落ちる。

 その真上から俺が落下。


 飛竜の亡骸は歪に砕けた。


 「ごっつあんです‼」


 そして俺は勝利の大見栄を切る。

 

 こうして俺は相撲で村の窮地を救った。

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