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忍法 その15 讃えよ、我が名を‼


 ヒュルルルル…。


 その時、一陣の風が駆け抜ける。


 季節は初夏、まだ半袖を着るには早い時期だ。

 

 俺は自分の目を疑うよりも先に相手の正気を疑った。

 

 まず意味がわからない。

 彼女がなぜ裸にならなければならないのか?

 一国の姫君ならば衣服に困るという状況はまず考えられないだろう。

 そして前にも言ったが今は寒い。

 例え俺でも薄着で歩けば最悪風邪を引くレベルだ。

 なのに目の前のアレは…。


 「ダメ―ッ‼」


 りんガ奇声を発しながら飛び込んできた。

 そして俺の上着を剥ぎ取ると、マッパの女子の上にかけた。


 安心しろ、りん。

 俺はバランス重視だ、まどマギで言うと美樹さやかがタイプだったりする。


 「後ろ向いて‼」


 華麗な弧を描きながらローリングソバットが俺の顔面にヒット。

 瞬時に危険を察したリキは両手で目を覆っていた。


 奴はおそらく昇進する術を心得たサラリーマンなのだろう。


 「わかったよ。後ろ向いていればいいんだろ?」


 俺は全身から殺気を放っているりんに背を向けた。


 全く、あの小金井伝馬バカは一回死んでも露出癖が治っていないのか…。


 俺はこの時、『バカは死んでも治らない』という俺の言葉を魂に刻んだ…。


 「若君ッ‼貴女という人はッ‼」


 りん(※前世、飛天丸)は金糸雀姫(※前世、伝馬)の身体に俺の上着をかけていた。


 外から見れば仲の良い姉妹がじゃれ合っているようにしか見えないのだが、争いの内容は殺伐としている。


 あの変態が相手じゃなあ…。


 俺は頬杖をつきながら大きく息を吐いた。


 「ありがたい。りんさんがいれば姫様も言う事を聞いてくれるのか」


 一方、リキは果てしなく続く暗闇に希望の光を見出したような顔になっていた。


 だよなー。


 自分の娘くらいのお姫様が外に出る度にマッパになってたらそうなるよな…。


 俺は前世で小金井伝馬と出会った時を思い出しながら心の中で何度も頷く。

 断言しよう、小金井伝馬やつはただの変態だ。


 「貴様、もしや飛天丸か‼無礼者め、我がハダカ道を遮る者は容赦せぬぞ‼」


 がんっ‼


 りん(飛天丸)の容赦ない鉄拳制裁が決まる。

 あれは俺がいつも食らっているヤツだ。加減しないとそのうち脳みそ飛び出すぞ?

 そいつは一応、炎龍国の要人なんだからな。


 「おおお…。頭蓋がああ…」


 金糸雀姫(※伝馬)は阿多Mを抑えながら身悶えしていた。


 りんはその間に金糸雀姫の身体を紐でグルグル巻きにする。

 その姿はまるでタコ糸で威張られたチャーシュー用の豚肉。


 …っておい‼別の意味でやばい絵面だろ。


 「若君、今の貴女のお姿を見たら皆は何というか…」


 りんは疲労感たっぷりでため息を吐いた。

 心なしか汗をかいているようにも見える。

 よし、今日だけは優しくしてやるか…。


 「よっしゃ。そっちの用は終わったみたいだな。次は山を出る事を考えようせ?」


 俺は米俵よろしく肩に金糸雀姫を担ぎ上げる。

 ジタバタと暴れていたがガタイが小さいので問題はない。


 リキは「姫様、ガンバ‼」と日頃の鬱憤を晴らすかのような声援を送っている。

 炎龍国の闇もかなり深そうだ。


 俺たちは飛竜に遭遇せずに山の中腹まで戻っていた。


 小金井伝馬は鼾をかきながら眠っている。

 ちなみにリキも度重なる疲労から調子を崩していたので俺が抱っこしていた。


 二人の人間を一気に運べるなんて…やっぱすげえな、俺。


 「しのぶ。あのね、私の話なんだけど…」


 リキと金糸雀姫が寝息を立てているところを見計らってりんが俺に話しかけてきた。

 幸いにしてりん(飛天丸)はまだ俺の正体には気がついていない。


 いや一生、気がつかないでくれ。


 「俺にとってりんは気の置けない幼なじみさ。それ以上、必要か?」


 俺はウィンクして笑いかける。

 りんは「うん」と小さく返事をしてから再び歩き出す。

 その表情はどこか安心の色が感じられた。


 りん、あのな…。俺は今日、お前が秘伝書を焼き捨てた事を絶対に許さねえ。


 死んでも許さねえ。


 そのうち仕返してやるから覚悟しておけよ?


 俺は笑顔の裏で般若の面もかくやという感じの憤怒の形相になっていた。


 ざざざざ…。


 俺とりんが山の出口に近い場所にある林に入ると上空から飛竜が姿を現した。

 一頭、二頭ではすまない。

 最低でも二十頭はいるであろう大群だった。


 そして最悪な事に群れを引きているのはファイアードレイクと呼ばれる火を吹く飛竜だった。

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