表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/65

忍法 その14 三人目の転生者⁉ 


「まあ俺は気にしはしないよ、…本当だ。困った事があったら言ってくれよな」


 俺は内心の動揺を悟られないようにしながらさも気楽そうに答える。

 今は一刻も早く話題を変えなければ。

 俺に「ふじわら巨根斎」疑惑のフラグが立つ前に何とか姫(※金糸雀姫)の捜索に話題をチェンジだ。


 「りんさんならきっと金糸雀様ともお話が合うかもしれませんね。あの御方は周囲に壁を作ってしまって我々にも心を開いて下さらないのです」


 「私がお姫様の話し相手ですか…?」


 りんは頬を染めて少し照れくさそうにしていた。

 

 言っとくがコイツは外見は綺麗なお姉ちゃんだが中身は野生児だぞ?


 …とはキンタマ保護の為に口が裂けても言えない。


 「はい。ぜひお願いします」


 リキは微笑みながら頷いていた。

 察するに気難しいお姫様の扱いに心底、参っていたのだろう。


 「良かったな、りん」


 俺も保身の為にりんを立てるような返事をしておいた。


 「えへへ。どうしようかなー」


 りんはお姫様に会った時にどう対応するか物思いに耽っていた。


 「さてと。そろそろ外の様子が気になってきたな…。りん、俺はちょっくら外に出てるからリキさんを見ていてくれ」


 「しのぶ、一人で大丈夫?」


 「しのぶ君、私はもう大丈夫だ。君の方こそりんさんと一緒に行った方がいいんじゃないか?」


 確かに飛行タイプとの戦闘は俺にとっては不利な事、極まりない。

 弓で遠距離の敵を相手に出来るりんの加勢は心強いものがある。

 だが負傷者のリキを一人置いては…なあ?


 「じゃあ全員で捜しに行きましょう?しのぶならリキさんを背負って逃げられるでしょうから」


 コイツ、徹底的に俺を酷使する気か…。

 リキも年下におんぶされる事に抵抗があるのか、あまりいい顔をしていない。


 その時、殴りつけるような風が詰め所を揺らす。

 あまり考えたくはないが複数の飛竜が戻ってきたのかもしれない。


 俺はリキの前で背中を見せて、しゃがみ込む。


 「タイムアップだ。リキさん、おとなしく俺におんぶされてくれ」


 ぎゃあ!ぎゃあ!ぎゃあ!

 同時に飛竜の鳴き声が聞こえてきた。


 「しのぶ君、いざという時は私を置いて逃げてくれよ」


 「ああ是非そうするぜ。リキさんも振り落とされないように頑張ってくれよな」


 こうして俺たちは飛竜に見つからないようにしながら、リキさんが捜索出来なかった場所に向って出発した。


 「頂上の小屋か…」


 ハゲ山の天辺には周囲の様子を一望できる物見小屋が設置されていた、――そう記憶している。


 どういう理由かは知らないが風が極端に弱いので飛竜が近づく危険性は低い。

 飛竜は巨体で空を飛ぶために風の精霊の力を利用しているのだ。

 連中もそこまで馬鹿ではないので自分たちにとって不利な場所には好んで来るような真似はしないだろう。常に強風にさらされている中腹部と違って頂上は静かなものだった。俺はりんに殿を任せて小屋に向かう。


 ギイ…ッ。


 小屋の内部にはまだ人のいた気配が残っていた。


 俺は周囲を警戒しばがら中に入る。

 火鉢は…使われた形跡があった。

 中身に残っているはずの灰が少なすぎる。

 

 俺たちの接近を察した人間が、どこかに灰をぶちまけたのか?


 「しのぶ、そろそろ扉を閉めてもいいかしら?」


 小屋の扉付近に立っていたりんの声が聞こえる。


 たったった。


 三角屋根の上を駆ける音がした。


 俺は冷や汗をかきながらりんの方に向って走る。


 「⁉」


 「悪い、辛抱してくれ」


 そしてりんの腕をとって部屋の中に引き入れると同時に後ろ蹴りをかます。

 敵もさる者で、瞬時の判断で俺の蹴りを予見して大きく飛び退いていた。


 「だりゃあッ‼」


 俺は扉の近くに積み重ねてあった巻木の束を丸ごとぶん投げた。


 「‼」


 敵は丸太を片っ端から切り払い、次の攻撃に備える。

 まあまあ戦える奴か。

 俺は腰を落としてから相手に突進した。

 相手は刀を下段に構えてこれに備える。

 一旦、避けてから斬るつもりか。

 

 相撲を侮るなよ‼


 「ぶちかましはフェイクだ‼本命はこっち‼」


 俺が敵の腰を掴んで身体を持ち上げる。


 軽い。


 りんの十分の一くらいかもしれんな。


 そして櫓投げの要領で地面に叩きつけた。


 「残念であったな、下郎。相手が四流であればこれで済んだのかもしれんが…」


 チッ。読んでいやはったか。


 俺は組んだ瞬間に食らった柄打ちで口の中を切っていた。

 ほんのかすり傷程度だが、これで敵の程度が知れるというもの。


 …久しぶりの強敵だ。


 「俺はふじわ…じゃなくてしのぶ様と知っての狼藉か。面白ええ。墓碑銘に刻んでやるから名乗りな」


 どすん!


 大きく右足を上げてから地面を踏んずける。

 邪気を払う四股踏みだ。

 敵は腰まで伸びた金色の髪を流しながら堂々と答えた。


 「ハハハハハッ‼その意気や良し‼貴殿の蛮勇に免じて名乗ってやろう。我が名は刃金の里の麒麟児、小金井伝馬じゃなくて、じゃなくてえ‼炎龍国の大王ギリョウ(漢字表記だと魏了)の末娘、金糸雀とは私の事だ‼」


 …。


 …。


 何だ、この展開は。


 かくして俺たちは運命の再会を果たしたのであった。


 もうどうでもいいや…。


 いや良くねえよ‼



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ