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忍法 その1 魔人の最後 前編


 「飛天丸‼」


 愛しの姫ちづるの悲痛な叫びを聞いた瞬間、あかがね飛天丸ひてんまるの五体は怒りに震え、全身を溶岩流マグマが駆け巡る。


 敵の悪鬼の如き非道な振る舞いと己の無力さ、どちらも許容できるものではない。


 「ちづる様を解放しろ、ふじわら巨根斎‼既にお前の配下、ふじわら忍軍と精力絶倫四天王は我ら刃金忍軍が倒した。残るは貴様一人だ‼」


 飛天丸は背中に差した忍者刀をスラリと引き抜く。

 忍者刀とは名ばかりの天下の名刀、雷光十文字。何よりも血を好む狂猛な白刃は、邪神の祭壇を彩る篝火の灯りを受けて神々しく輝いていた。


 「くかかかかか‼彼奴ら等、所詮は時間稼ぎの為の捨て駒(※給料未払い)。ワシの遊戯の後始末をご苦労と言っておこうか‼」


 噂では齢三百歳と伝え聞く怪僧は小僧の戯言と一笑に付す。


 

 そして自慢の黒光りするイチモツを撫でた。


 「おいっ‼」


 如何に不倶戴天の敵と言えど許されない行為だった。

 よりによって敵(男)の前でチンチンを撫で撫でするなど第三者が見ればどのような勘違いをされるか、わかったものではない。


 「安心しろ、飛天丸よ。ワシにショタ(※金田正太郎コンプレックスの事)の趣味は無い。あくまでおねショタ(※年上お姉さんと男の子のカップリングという意味)一筋じゃ」


 ふじわら巨根斎は懐からエロ同人誌を取り出す。


 艦これのショタ提督と愛宕の同人誌だった。


 なぜ飛天丸にそれがわかったかって?奴もおねショタ派だったんだよ…。


 「そういう話はしてねえよ‼ていうか姫を解放しろ、今すぐ‼」


 「ワシもそうしてやりたいところなんだがのう…、時すでに遅しじゃ。邪神チンチンカユイカユイ、召喚の儀式は終わった。後は約定の通り、ちづる姫の魂は邪神に捧げられるだけよ。クカカカッ‼」


 邪教の頭、ふじわら巨根斎は石突の部分がオチンチンの形をした錫杖を天に掲げて狂喜する。

 錫杖を地面に打ちつける度、飛天丸は股間に鈍い痛みを感じていた。


 「止めろ、巨根斎‼色んな意味で…痛いから‼」


 「くかかかかかッ‼敵に止めろと言われて止めるヤツがおるものか‼食らえい、飛天丸‼」


 ガンッ‼


 ガンッ‼


 ガンッ‼



 …グシャアッ‼


 ついに折れてしまった、


 「ぐおおおおッ‼まさかコレを狙っていたとはああああ…。刃金の里の飛天丸、恐るべし…ッ‼」


 何とふじわら巨根斎の杖の先っちょはチンチンと霊的に繋がっていたのだ。

 当然のようにチンチン破壊のダメージは巨根斎の御本尊に届いて生き地獄を味わう。


 「ぐほおおお…」


 ふじわら巨根斎は息絶えた。


 恐るべし飛天丸、恐るべし忍法合戦…ッ‼


 「いや何もやっていないんだけど…」


 飛天丸はふじわら巨根斎の死体を放置して祭壇の壁に磔にされているちづる姫の元に向った。


 「姫、ご無事ですか‼」


 救出されたちづるは疲れ切った様子でどうにか首を縦に振る。話す気力も無い。


 「飛天丸…」


 ちづるは飛天丸を顔を見つめめる。

 右の頬に従事の刀傷がある以外は美丈夫と呼んでも良い整った顔立ちだった。


 「姫、これをお召し物の代わりに」


 飛天丸は薄衣しか着ていないちづる姫の姿を見ないようにしながら近くの壁にかかっていた羽織を手渡した。

 おそらくはここに姫が運ばれてくる前まで彼女が身に着けていた着物だろう。

 ちづるは白い羽織を肩からさっとかぶせて人心地つく。

 邪教徒どもに手荒なことはされなかったが幽閉されていた場所が石造りの牢屋だったので体温がだいぶ下がっている。


 「おぶりましょうか?」


 飛天丸は背中を向ける。

 普段ならすぐに断られるが今回ばかりは素直に従ってくれた。


 飛天丸は微笑みながらちづるを背負って出口に向かった。だが、出口の前には強者然とした闘気を放つ男が立っていた。

 頭には紫色の頭巾を被り、顔には翁の面。頭巾からは錦糸のような長髪が流れている。

 そして背中には体躯よりも長い刀をさしている。

 

 見覚えのある姿だった。


 「待て。その女を置いて行くがいい」


 翁の面を被った男は淡々と語る。その抑揚はどこか冷めていて無気質だった。


 「…お名前を利かせてもらえますか、若君」


 仮面の下で口の端がくっと歪む。


 「クックック。俺を小金井こがねい伝馬てんまと知ってあえて名を問うか、食えぬ奴よな、飛天丸」


 男は笑いながら仮面を脱ぎ捨てる。

 地面に乾いた音が響くと同時に金銀妖瞳の美男が現れた、もはや疑うまでも無い。


 刃金忍軍の次期頭領最有力候補、小金井伝馬その人だった。


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