14 うわっよくあるやつ
「やぁやぁどうもどうも!!」
えぇ、さっきまで…?なんだろう。夢の中の夢?の中の夢?
どうして、ただ真っ白な空間に浮かんでる男か女かも分からないけどめちゃくちゃ美形の人から話しかけられてるんだろう。
………!思い出した。倒れたんだ。ソンサが。
「うんうん。そうそう。よかった。思い出してくれた?君は倒れたんだよ?というか、僕が後ろから衝撃だけで殴って倒れてもらった。そして、僕、とんでもない美形は君の夢の中にやってきたんだ」
え、今、口に出してた…?キャパオーバーとかじゃなくて、殴られてた倒れたってこと?というかこの人自分で自分のこと美形って言った?
「い〜やぁ、口には出てないよ。僕が勝手に君が心の中で思っていることを読んでいるだけだから。そうだね。頭がぐるぐるしてるところを後ろからゴッとね。美形なのは、事実だろう?」
はぁ……。とんでもないドヤ顔も決まっているのが何となくイラッとした。心を読まれているなら、わざわざ口に出さなくてもいいかなと思った。ので、心の中で問いかけてみる。
今更ですがそんな美形の貴方はどなたで?
「それを聞かれるのを待ってたんだよ!嬉しいな!僕は神、この世界の神のロクだよ!よろしくね」
何となくそうかなとは思っていました。お約束ですもんね。でもごめんなさい。全然よろしくできる気がしないんですけど。
「やっぱり、この世界に無理やり連れてきちゃったから…?」
うん。まぁ。いや〜異世界転生ってこう、転生する前に死んじゃうのがお約束じゃないですっけ?転生じゃなくないですか?これって。
「まあそうだね。転生じゃないよ。君の魂だけソンサの体に転送したの」
え、つまり本当の私は魂がもぬけの殻って事ですか?それに、『私』ことソンサさんが可愛そうでは?
というか、そもそも何故こんなことを?
家に返してくれませんか?まだ死んでないので、元の世界にそこそこ未練が無い訳ではないんですよ!
「ふむ。じゃあクソ長説明いる?」
(クソ長いのはあんまり嬉しくないけど、正直、幼少期から他の世界でやり直してね~は、いくら何でも辛いものがある。元の世界ではそこそこ頑張ってきたつもりだし、元の体を魂抜け殻のままにはしたくない。スマホもないし)
だから
「その説明で納得させてくれるというなら、欲しいです」
神様に出会ったのははじめてだけど、意味もなくこんなことをするとは、思いたくないから。
「うん。分かった。じゃあ説明してみるけど、納得してくれるところまでカットしてくれてもいいんだよ?」
「いえ、納得させてみてください。頑張って」
「…残念頑張るか。」
神様ことロクはくるりと後ろを向いた。