12 不安と期待
「あ、そうだ。とりあえずすぐにお義父さんに連絡をするな?」
急に我に返った様子のお兄ちゃんがこちらを見たので、
「あ、お願いします」
とりあえずお願いしておいた。今更かもしれないけどお兄ちゃんって、呼ぶの、違うかな。お兄ちゃんの名前ってなんだったっけ?まだ聞いてないかも。……ま、いっか。まぁいいことにしよう。うん。お兄ちゃんの事は一旦置いておいて。
それで…おとうさん…か。
どんなひとなのだろう…。悪役の父親というと、個性が強いイメージがあるけど…。とにかく色々なところがしっかりしてて、かつ!私のことを愛してくれて居るなら、他に望むことはないくらい十分だけど…。
連絡ってどうやるのかなぁと兄のほうをぼけーっと見ながら思っていたら。
「急いで戻ってくるそうだものすごく喜んでいたよ」
苦笑しながら言われたから頭が?でいっぱいになった。
「え?連絡取れたんですか?」
「うん!」
「どう、やったんですか?」
「え?…あ、そうか!ほんとに…」
ボソボソっとつぶやいて少し考えこみはじめてしまったので、アクトに小声できいてみる。
「どうやって連絡とったのかな?」
「…魔法だと思うよ?とうさんがいつでも連絡が取れるようにって……にいさんに魔法の力を分けて行ってたから」
「まほうあるの!!???」
「ちょ、耳元で大声出すのはやめて、耳がキーンってした」
「ごめんなさい!!」
慌てて小声になる。興奮してついに勝手に大声が出てしまったのだ。申し訳なし。いやほんとに申し訳なし。
いっっっっっやぁ、これはでも誰だって興奮してしまうのでは!だって、魔法がある世界ってことは、私にも魔法が使えるかとしれないということ!!楽しみすぎる!!!
あれ、というか今、生で魔法見ちゃったってことだよね!
うわぁい、生きててよかった!
「…ね~えさんっ、急に考え込むのっ心配するからっやめてくれないかなぁ?」
「うおっ」
「今度は何?」
「いや、すごいきゅうに可愛くなったから耐性ができてなくて」
「ふぅ〜ん?かわいいって思ってくれてるんだ?ふぅ〜〜ん?」
あぁ、いらん情報を与えてしまったかも!でもなんかうれしそうだからいっか!
あと、考え込むのはほんと気をつけよ。
ボケっと考え込んでてまた魔法で眠らされたりしたら、大変だよね。
「ごめんね。記憶がないから初めて聞くことばっかりで、脳の処理が追いついてくれてないみたいなの」
一部本当で一部嘘だけど。仕方ないよね。そういうことにしちゃったんだし。
「…本当に記憶喪失なの」
「え?」
「いやそういえば…ねえさんの状態が今の状況が理解できてないなと思って」
あぁ〜やっぱり、寝て起きたら記憶喪失って、ちょっと無理やりすぎるかな…。どうしたものかと考えようとしたけど、大きな声にさえぎられた。