11 キャパオーバー
「…今のって」
「僕が言ったよ、兄さん」
「!?」
あれ?すごいキャパオーバーしてますって顔をしてるように見える。
「もど、れたのか?」
「一部の人の前だけだと思うけどね」
…お兄ちゃん呼び方(仮)は、唖然とした表情でしばらく固まった。どこからどう見てもビックリしている。
私はアクトを見た。アクトは実の兄をただただ静かに見つめ続けていた。
まるで、とんでもなく長い時間が過ぎたように感じた後に、お兄ちゃんが放った言葉は、
「それでも……。よかったよぉぉぉぉぉぉ」
だった。
ぴょんぴょんと飛び跳ね始めたお兄ちゃんを横目に。
少しの緊張から解放されて、いつの間にか入っていた肩の力が抜けた。なぁんだ、兄弟仲は悪くなさそうだ。良かった。
それにしても、なるほどぉ?アクトは別に本当のことしか言わないなんて、言ってないもんな…。私だけが知ってるってのはしっかり、嘘でしたよっと。
でもこれじゃあ、アクトがどういう状況なのか、よく分からない。もどれたってなんだ?お兄ちゃんは、めちゃくちゃ喜んでるように見えるけど何故にこんなに?
疑問がポツポツ湧いてきただけではなく、そういえば、これってアクトにしれっと騙されたのではと、思いつき、なんなら一人で抱えきれなくなったので、
「うそつきぃ」
耳元でこそっといってみた。
耳元でこそっと言われた。
「ごめんねっ、ねえさんならいいかなってっ」
くぅぅぅぅぅぅぅぅ。なんか、腹立つ。顔が、声が超絶絶妙で、なんか腹立つのだけれど!
「可愛いから許す」
「ちょろ」
やっぱり、可愛くなーい!と思おうとしたけど、そんな生意気なところもしっかり可愛かったので、反論は出来なかった。