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ダブルアップ  作者: 皆賀 幸
第三章 天塔迷宮(トゥルス・ダンジョン) Ⅰ
88/130

88 露出狂の女

 夜のミーティングは、ダンジョンの地図の見方等の地味な内容から始まった。

 それだけで、俺達は素人集団なのだと、あらためて思い知らされた。


「ところで、俺様達は何階層に行けば、いいんだ? ゲン爺」

 屋敷到着直後から、コミュニケーションをとっていたとはいえ、ジルセンセはフラットな物言いである。

「今、聞くと、無駄に考えるじゃろうし、精神的にもきついじゃろうからな、知らない方が良いじゃろ。しかし、『全癒の翆石』は特別なもの。覚悟しておくがいい。階層ルートも途中から変わるしのぉ。まあ、その辺は『銀翼』に聞けば良い。それよりも、今は基本を身に着け、『銀翼』との待ち合わせ場所となる10層に辿り着くことだけに専念せよ」

 ゲン爺は、ジルセンセの質問を逸らかし、目の前のことに集中することを強調する。


 このゲン爺。昔は冒険者だったらしい。だが、普通の冒険者ではないのだろう。

 公爵家に呼ばれて来るほどの人材だ。相当、ダンジョンには詳しい筈。

 質問すると、的確に回答してくる。いろいろと教えてくれるのである。

 この先のことについての質問については、はぐらかされたが…。


 まず、トゥルス・ダンジョン(天塔迷宮)そのものであるが、これは王都が管理をしているという。

 けれども、入塔する冒険者に限っては、冒険者ギルドが委託を受けて管理をしているのだそうだ。


 ある程度は、マーレに聞いていたので理解している。

 一応、ジルセンセが、ゲン爺に確認の意味で聞いてみた。


「要するに、俺様達は5層までの各階毎の階層主を倒した後、一度、地上へと戻って来る。そして、階層主を倒した証拠となる魔石を持ち帰り、ギルドに申請してパーティーランクをEランクとする。その後は、10層まで行き、パルー達と合流すればいい訳だ」


「まあ、やることは、そういうことじゃ」

 ゲン爺は、にっこりと頷く。


 10層クリア後は、サポートメンバーたる『銀の翼』とともに、ダンジョン内を進んでいくことになる。要は、ここからが、本番となるのである。

 ここで、なぜ10層から行動を共にするのかと言うと、10層までの間に『女神の祝福』がパーティーとして機能するよう、戦闘の連携が出来るよう、慣れさせるためなのだという。


 ゲン爺からは、10層迄の魔物の情報を、事前にこれだけ知り得ているのだから、入塔迄には、各階層において戦闘時の役割や手法を決めておくようにとアドバイスを受けた。


 けれども、どう見ても、予習をするような面々ではない。

 メンバー内での打ち合わせを始めた時点で、直に揉めるのが目に見えている。

 最終的には、ジルセンセが泣かされるのだろうけど。


 それと、あくまで、第一の目標は5層の階層主を倒すことである。

 それまでは、無用な戦闘は避けることに徹し、味方の魔力を温存しておくのが得策である。


 公爵家の関係者に聞いたのだろう。

 ゲン爺は、既に俺達の『エンデルの森』での活躍を知っていた。

 それだけに、ある程度の実力は認めてくれてはいたものの、ただ、天塔迷宮トゥルス・ダンジョンには初めて入塔するということで、興味本位で目を奪われる等して、大事にいたらないようにと心配をしてくれた。


 ゲン爺のミーティング終了後、皆で話しあった。

 入塔に必要なランクE、Dの冒険者など、ギルドに行けばいくらでもいるだろうから、取りあえず、片っ端から声を掛けることとする。仮メンバーとして一時的に雇うのだ。パーティーランクがEとなる迄のつきあいである。

 

 要は少しの間だけ、行動を共にするだけの仲間ということなのである。


 そこに、先程、紅茶を運んできたマーレが口を挟んできた。

「多くの冒険者達は、魔物が一番少ないとされる騎士団討伐直後に入塔するはずです。なので、雇うのであれば、入塔する前、明日にでも決めたほうが良いと思います。でも、もしかしたら、もう、天塔迷宮トゥルス・ダンジョンへと大半が出発してしまって、王都に残っている冒険者は、少ないかもしれません」


「「「 なるほど! 」」」

 俺達は、マーレの言う事は最もだと思い、明朝、ギルドへ行くことにした。

 場合によっては、その足で、天塔迷宮トゥルス・ダンジョンへと向かう。


 その話を聞いたマーレは、ニッコリ笑うと、申請書の準備と天塔迷宮トゥルス・ダンジョンへの移動手配は、直に行いますと、みんなに告げた。

 一連のスケジュールも、フレデリカ様に都度、報告しているのだろう。

 侍女というよりも、優秀な秘書である。

 



 翌日。

 俺達はマーレとともに、ギルドへと向かった。

 イシュルミットも一緒である。


 朝一の訪問にも拘わらず、ギルドの受付嬢の対応は、きちんとしていた。

 さすが、王都の冒険者ギルドといったところである。

 グリアの接客とは大違いである。


 マーレが尋ねると、やはり、大半の冒険者はダンジョンへと移動してしまったとのことであった。

 一応、加入してくれそうなEかDランク冒険者について、心当たりはないかとも聞いてみたところ、全員がFランクのパーティー、つまり、素人集団の中に一人で入っていって、全員の面倒をみるような、そんなお人良しな冒険者を見つけるのは、難しいと言われた。

 もし、そのような冒険者がいたとしても、相当なプレッシャーがかかるはずなので、ギルドとしても勧めないという。


 確かに、Fランク冒険者は、ダンジョン内ではお荷物的存在である。

 普通はランク上位のいるパーティーに入れてもらって、経験を積むものなのである。


 それを、浅層階とはいえ、経験なしのFランク冒険者だけで、天塔迷宮トゥルス・ダンジョンに俺達は挑もうとしている。

 そんな無謀なパーティーに加入したいと思うE・Dランクの冒険者なんて、やはり、いないのではないか。…少し、考えれば分かることである。


 だが、実際のところ、俺達は、全く経験がない訳ではない。

 『エンデルの森』で、ダンジョン探索、いや、戦闘は経験済であるのだ。

 けれども、あの時はBランク冒険者パーティーやら王都兵士団が一緒であったために、ギルドとしては、実績とは見てくれていないらしい。

 もっともな、話しではある。


 もう、ここで待っていても、希望する人材に会える可能性は低い。

 それなら、今から王都を発つしかない。

 そう、話し合っていたところ、ジルセンセの両耳がピーーンと立っている。

 みんなで、ジルセンセの視線の先を見ると、衝撃的な恰好をしているエルフ族の女性がソファーに座って、こちらに艶麗な視線を送ってきていた。


「な、なによ、あれ! あの破廉恥な恰好は! 露出狂じゃないの!?」

 女性のエスティルでさえ、目のやり場に困るほどである。

 生唾を、のみ込む男性陣。


 露出狂と思われる女は、立ち上がるとカル達の方へやって来た。

 立ち上がってみると、隠すとこは隠してあるが、全裸といえなくもない。

 どうやら、一応はファッションのようである。

 高潔とされるエルフ族は、普通このような恰好は毛嫌いするものである。

 容姿はというと、イシュルミットの美しさに、大人の色気が加わった感じで、妖美さがうかがえる。


 この女。

 真っ白な艶めかしい美脚を交互に交差させ、ゆっくりと歩きだした。

 その靴音に男達が魅入る。

 廻りの男達の反応を感じいり、楽しむかのように、カルをみつめながら近づいてくる。

 立ち止まると、カルをみつめて、ウットリとしている。

 やや息も荒く、興奮しているようである。


「たまらないわ~、魔力の無い男。……手元において、可愛がってあげたいわ~」

 みつめてくる瞳は尋常ではなく、彼女は我慢が出来なくなったのか、舌なめずりをし始めた。


 こ、これって、その手の変態だ。

 カルは目を逸らす。というか、合わすことができない。


「こ、この、へ、変態、変態露出狂女! 近寄ってくるんじゃないわよ!」

 エスティルは、徹底抗戦の構えである。

「あら、怖いわ~」

 そう言いながらも、女は自分の宿先が書いてあるメモをカルに渡そうとする。


「変な物、渡すんじゃないわよ!」

 エスティルは、奪い取り、突き返す。

 この変態露出狂女も、さすがにエスティルの剣幕に気圧されている。

 それでも、今度はエスティルに興味がわいたらしく。

「あら、あなた。私と同じくらい美しいわね。あたなも、一晩、御一緒する?」

「す、するわけないでしょ! こ、この、ド変態!!」

「まあ、ひどいこと」

 変態露出狂女はそう言いながらも、流し目で、再び俺に視線を送ってくる。

「それじゃあ、天塔迷宮トゥルス・ダンジョンで逢いましょうね。待っているわ」

 帰るのにも、お尻を左右に振りながら歩く後ろ姿は、刺激的である。


 最後の一言に、エスティルは怒りを露にしている。

 マーレにいたっては、出入り禁止にするべきだと受付に掛け合っている。


 ギルドの係員が走って、やって来た。

 昨日、マーレが手配していた馬車が到着したのだという。

 俺達は、すぐさま、王都を出発することにした。

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【御礼】

今回、DUをお読みいただきまして、ありがとうございました。

この小説を読んで、「続きを読みたい!!」等と少しでも感じていただけましたら、

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本当に更新する原動力がわいてきます。

是非とも、よろしくお願いいたします。

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