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ダブルアップ  作者: 皆賀 幸
第二章 王都への旅路
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75 似た者同士

 領内では号令がかかり、騎士団が一人の女性を探していた。

 女性の名はサリィという。

 ハークスレイ家の者であり、ヒムルカの従者である。

 ヒムルカに長く秘書助手として仕える彼女は、度胸も行動力もありヒムルカに似た性格の持主であった。

 そんな彼女が騎士団によって捕縛される。

 そして、一部の事実が明るみとなったのである。


 今朝、サリィは、ヒムルカと一緒に洋服店を出た後、ヒムルカに指示された通り、すぐに連絡をとり、例のレストランにペイジュスを向かわせた。

 その後、彼女は普通に屋敷へと戻る折、街中で騎士団や自警団の姿がやけに多いなと気にはなっていたが、まさか自分を探しているとは思いも寄らなかった。

 何の警戒もなく、屋敷付近まで来た時、いきなり、彼女はその場で捕縛された。



 実は、既に捕縛されていた盗賊の頭目の証言により、サリィの名前が浮上していた。

 この頭目は以前の襲撃の件で、サリィから襲撃の指示を受けたと証言していたのである。


 彼は、後々、金をせびることが出来るようにと、盗賊の情報網を使ってサリィの身元を洗い出していたのである。そして、襲撃現場で部下を見捨てて逃げ出した後、すぐに所持金が底をつき、金をせびるために何とか領内付近までやって来た。そこを巡回中の騎馬部隊に捕縛されたのである。彼は指名手配犯でも、あったのだ。


 サリィは捕縛された直後は、暴れはしたものの、取り押さえられ、風魔術系のバインドで全く動けないように縛られてしまうと、すぐに冷静さを取り戻した。

 そして、自分の罪を少しでも軽くしてもらえるようにと、騎士団員に取引を持ち掛け、知っていることを洗いざらい、話し出したのである。


 彼女の話しによると、計画では、ランドルは盗賊に襲われて殺されるというのが大方の筋書きであった。もし、邪魔が入って、盗賊が失敗をしたとしても、絶対にランドルが生きて帰らぬようにと、念のためにペイジュスにも依頼をしていたのだ。そして、そのペイジュスには、あと腐れがないように最終的には盗賊全員の殺害も併せて依頼していたのである。


 ランドルの死体のそばに、ランドルを守って死んだ護衛の死体や盗賊の死体が幾人か揃っていれば、状況からして、盗賊に襲われたのだと判断され、自分達は疑われることもないだろうと、完璧な計画であるとヒムルカもサリィも自負していた。


 だが、まさかの出来事が起こった。

 全ての後始末を依頼していたペイジュスが同行していた冒険者の護衛に敗れてしまったのである。

 このこと事態が想定外なのであるが、そもそも、ペイジュス自身がランドルを殺す必要がない。ランドルと同行者は盗賊に襲わせて、残った盗賊は場所を替え、分けて、殺すというのがペイジュスへの依頼なのである。


 ペイジュスはサリィの指示を無視したのである。

 ペイジュスは盗賊にランドル達を殺させるのが、勿体ないと考えたのかは定かではないが、自分から先に動いてしまった。

 この結果、盗賊も生き残ってしまったのである。


 その後、ランドルの護衛に重傷を負わされたペイジュスは、自分一人では事を成し遂げられないと判断し、急遽、別の任務のために、近くに潜んでいた仲間と連絡を取り合い、今回、尻ぬぐいのため依頼を受け、再度の襲撃をしたのであった。



 一方、ヒムルカは逃亡中である。

 ヒムルカは屋敷に戻った時、伯爵に2階に報告に来るようにと侍女から言付けを聞いてはいたものの、使用人らが盗賊の頭目が捕まったとの話しをしているのを耳にして、すぐに屋敷を後にした。恐らくは、雲行きが怪しい、危険だと感じるものがあったのだろう。


 彼女は機に敏感で、判断力に長けた女であり、ランドルに美しい容姿のみを気に入られて、秘書に取り立てられた訳ではなかった。


 現在、ヒムルカはサリィも知らない、とある家の地下室に隠れている。

 屋敷を後にし、逃げる途中でサリィが捕縛されたことを耳にした彼女は、咄嗟に屋敷を飛び出してきた自身の判断は正しかったと思い返しながらも、この後どうしていいのか、自分でも分からなくなっていた。


 今、まさに、彼女は商人としての全てを失い、追われる身へと落ちてしまったのだ。

 これでは、ランドルが死んでいても意味がない。

 ここまで、用意周到に準備してきた計画が簡単に崩れてしまった。

 けれども、ヒムルカの中では、実は絶望よりも怒りが勝っていた。

 怒りの対象は、計画を潰した者達である。

 指示を無視したペイジュスとランドルの護衛であるカルの二人が、どうしても許せなかったのである。



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 一方、レストランではバスが戻ってきた。

 店の入口に映った影は、出て行ったばかりのバスであった。

 なぜに、こんなに早く、戻って来たかと言うと、彼は店を出て、直に騎士団の者と出会い、事情を伝えることが出来たからである。


 都合良く、騎士団の者と直に出会えたのには理由があった。

 彼らは、逃走した可能性があるサリィを探し始めていたのだ。

 既に領内の城壁の門は閉ざすよう指示がでており、これから領外への移動については、人も馬も馬車も制限がされるらしい。

 その話をバスから聞いて、カル達は今日の出発を諦めた。

 今、無理に出発しようものなら、変な嫌疑をかけられてしまいそうだからだ。


 沈む空気の中、フェルビーは僅かな可能性にかけ、倒れた騎士と従騎士の二人に、治癒魔術をかけ続けている。

 だが、ペイジュスから受けた傷は深く、時間が経過した今では命を取り留めるのは難しかった。


 ジルはジルで、まだソワソワしている。

 きっと、奥に、この店の従業員らの死体があるはずだ。

 この場で騎士団の者らに会うと面倒極まりない。

 だが、現実問題、バスは出て行ったかと思ったら、すぐに騎士団の者と話しをして戻ってきている。まだ、すぐそこにいるかも知れない。


 不安で仕方がないジルは、自分が仲間のために出来ることを考えた。

 そこで思いついたのが、カルを守ることである。

 彼は即座に、みんなに口裏合わせをしようと言いだした。

 内容はというと、敵二人を倒したのは、亡くなった騎士と従騎士にするということであった。間違っても、カルの名前は出さず、俺達は拘わらないようにする。

 これが彼の意見であった。

 反対する者はいなかった。

 結果的に自分の命を救ってくれたと理解しているため、ランドルも賛成してくれた。


 そもそもが、Fランク程度のものしか、ここにはいないのである。

 騎士団員も信じてくれるはずである。

 信じなかったとしても、二人の家族のことを思えば納得してくれるだろうとジルは踏んでいた。なぜかというと、一般人を守って死んだとなれば、彼らの遺族にも救慰金等が多く支払われるからである。


 打ち合わせも終わり、みんなで店から出ようとしたところ、店外にいた騎士団員が入ってきた。

 一気に空気が重くなる。

 彼らは、仲間が死んでいるのを目にすると、直に振り返りこちらへと向かってきた。


「一体これはどういうことだ。…知っていることを全て…話してください」

 話しかけてきた騎士団員は丁寧な言葉を使ってはいるものの、同僚が死んでいることもあり、語気は強かった。

 ジルセンセが事情を説明したものの、全員の同行を求められた。

 騎士団員が殺されている、この状況では断れる理由もなく、結局、俺達は事情徴収のため、騎士団の事務所へと連れて行かれることとなった。

 

 口裏合わせは済んでいる。内容だって、彼らの仲間に配慮したものとなっている。

 各自が別室で話した内容が同じだったということから、それほど時間もかからずに、俺達は自由の身となった。ジルセンセの功が奏した形となったのである。

 

 全員無事釈放されての道中である。

 ジルセンセは、とても明るい。

 ご機嫌なのである。

 理由は、ここにいる全員が分かっている。

「どうだ! 俺様の機転! 恐れ入っただろ」

「はい、ありがとうございます」

「直ぐに口裏合わせをするなんて、俺様は凄いだろ!」

「え、ええ」

 ジルセンセは、久しぶりに鼻高々である。

 みんなに褒めてもらいたいのである。


「……」

 ジト目のエスティル。

「何だよ! お前も恐れ入っただろ! 凄いと思うだろ!!」

 止せばいいのに。調子に乗って、エスティルにまで絡みだした。


「……ふ~ん。…カルの剣はかっこいいね! さぁっすが、公爵家から頂いただけはあるわね。家紋もきちんと入っているし」

 …ジルセンセの手柄の価値を半減させる言葉である。

 あたかも、事情徴収が短かかったのは、ジルセンセの機知というよりも公爵家の威光だといわんばかりの言葉に、ジルセンセは微妙な表情をしだした。

 高くなった鼻が下向いてしまったようである。

 寂しそうなウサ耳を見て、クミアが何ともいえない笑顔である。

 

 実は、このジルとエスティルの二人は、互いに『褒められたくて仕方がない』というところだけでなく、『誰かが褒められるとつまらない』というところも共通しているのであった。

 …似ているのである。

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【御礼】

今回、DUをお読みいただきまして、ありがとうございました。

この小説を読んで、

「興味がもてた!」

「続きを読みたい!!」

等と少しでも感じていただけましたら、★★★★★を押して応援いただけますと嬉しいです。

ブックマークも是非ともお願いします。本当に、更新する原動力がわいてきます。

是非とも、よろしくお願いいたします。

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