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ダブルアップ  作者: 皆賀 幸
第二章 王都への旅路
73/130

73 暗殺集団 = ペイジュス = 再戦①

 ランドルは、ジルの強い口調に困惑している。

 いきなり、ジルに要求され、言われた通りに四人の護衛には店外へ出て貰った。


 すると、ジルはランドルにソッポを向きながら話し出した。

「もう、お前のお漏らしの件は自由に話すからな。俺様は、嘘つきは大嫌いだ」

「え? ま、待ってくれ! 俺は君らの秘密は誰にも話していない!」

 ここで嫌われたら、もう終わりだと思い、ランドルも必死に食い下がってきた。


「お前、良く言うな! あの時、誓うといっただろが!」

「言った! だから、誰にも言っていない! 誓って誰にも言ってはいない!」

「じゃあ、なぜ、あの女は、カルがペイジュスを撃退したことを知っていたんだ! 言ってみろ!」

 

 それを聞いて、ランドルは青ざめた。

 ジルはそれ見たことかと、少し自慢げである。怒ってはいるのだが。


「お前が言わないと知っている訳ないだろ! 普通、一番強そうに見えるのは、このフェルビーだろうが! なぜ、あの女は、一番特徴のないカルが倒したと知っているんだよ。そもそもが、撃退したこともだ! どうなんだ、ランドル!」

 ジルは畳みかけた。


 ……「一番特徴のない」って、言わなくても良くないだろうか。

 

 ランドルが青ざめた理由がバスには分かっていた。

「ラ、ランドル様。ランドル様は話していないのですね。ならば、なぜ、ヒムルカ殿は知っていたのでしょうか?! ……お、恐らくは、あの発言をしたことに、彼女は未だ気付いておりません。私めは表情を悟られぬように俯きましたので」


 バスが言うあの発言とは、ランドルがヒムルカに強い口調で返した後の発言である。

「こんな男、ど、どこから見ても普通の冒険者です。ペイジュスを倒せる訳がありません」

 そう言って、カルを指していたのである。

 全体を通すと、カルが倒したことを認めた発言ではなかったが、知っていたのは事実である。

 知っていて、カル達を遠ざけたいといった趣旨の発言であった。…皆が思い出していた。


「馬、馬鹿、お前は何であの時、それを言わなかったんだ!」

「ヒムルカ殿にお話ししたのかもと思いましたので」

「俺が話す訳ないだろ! ……つ、つまり、ヒムルカは逃げた頭目か、ペイジュスのどちらか、もしくは両方と繋がって、いるかも知れないってことじゃないか!」

 ランドルは絶望の淵に立たされた気分である。


 バスは、ヒムルカの捕縛を依頼するため、店外の護衛に話をしに行った。

 その話を受けて、護衛は屋敷とグリズリンのもとへと向かった。

 

 店内では二人の表情が、生き生きとし出していた。

「面白いわね。一気に解決させて王都に向かうわよ」

「はい、エスティル様」

 オルガはやる気である。


 ジルは自分の決め台詞が空振りに終わり、不本意この上なかったが、聞く側に徹していた。


「解決させて、って……。あの後、ヒムルカは自分の発言に気付いて、そのまま逃げ去っているかもしれないだろ。………気付いてなければ、昼食を予定しているレストランで、盗賊かペイジンにランドルを襲わせる。…なんて手を打ってくるかもしれない。両者とも、襲撃の機会があるなんて話しを聞けば、依頼がなくても仕返しをしに来そうだ。…でも、流石に急過ぎてそこまで早くはできないか」

 カルは少しばかり、突拍子もないことを口にしたなと一人恥じた。


 だが、カルのこの言葉を受けて、即座に霊体であるリグルスは宙を飛び、探りに行った。

 リグルスは優秀な執事である。

 王都からムリアズ男爵領にかけての土地勘や高級店は全て、頭に入っているのである。

 既に、店名を聞いていたので動きは早かった。


「襲わせに来るわよ! あの女はそういう目をしてたわ。逆に盗賊の頭目は来ないわよ。そういう目をしていたもん。盗賊は下っ端だけでは来ないだろうから、仕返しに来るなら、ペイジュスとかいう奴でしょ」

 エスティルは自身あり気に言う。

「お、お前、凄いな」

 ジルは、当然の如く話すエスティルに感心していた。


「ま、待ってくれ! お、俺はどうすればいいんだ?」

 ランドルは怖くなり、手の震えが止まらない。


「好きにしなさいよ。まあ、一番安全なのは私達の傍にいることだけどね。じゃあ、ほら、早速行くわよ」

「!!ッ、 何で行くことになってんだよ! 待てよ。護衛は契約してるけど、わざわざ戦いに行くのは契約外だよ。俺様は反対だ! 危険すぎる!」


「金貨1000枚貰うのよ。…それぐらい、いいじゃないの。ランドル、あんた一緒についてきなさい! そうすれば、その場で護衛してあげるから」

 ランドルは守ってもらえると分かった瞬間、その声の主が女神様に見えていた。


「だから、お前は無棒なんだって! ペイジュスが1人とは限らないだろ! 2、3人いたらどうするんだよ!!」

 ジルは断固反対の構えである。


「2、3人いたら、2、3人、やっつけるに決まっているじゃないの。…馬鹿なのジル」

 エスティルは半目である。


「そりゃ、そうだけど。……そういうことじゃなくて、全く情報が無いから危ないとか…思ったり」

 ジルの声が小さくなっていく。


「う、っるさいわね!! カルが何とかするわよ! いくわよ! さっさと終わらせて、王都行くんだから」

「う、うん」

 指揮官と化したエスティルには、ジルも逆らえない。

 こういう場合、どうしても、『エンデルの森』の洞窟を思い出してしまうのだ。


 カル達一行は、例のレストランへと向かった。

 ランドルもついて来た。

 彼は、エスティルに声を掛けられたものの迷いはあった。

 もしかしたら、自分は死地へと向かっているのではないかと思いながらも、ついて行ったのは、カル達と離れるのはもっと怖かったからだ。

 側近のヒムルカに狙われているのだとしたら、思いつくところに逃げても、直に見つけられてしまう。

 震えながらも、ランドルはついていくことを決断した。


 途中、リグルスが戻って来た。

 報告によると、レストランの店員は既に全員殺されており、店内にはこの前、対峙したペイジンを含めて敵が二人待ち伏せしているとのことである。


 カルは腹をくくった。

 前回、取り逃がしたのが悪かった。

 ランドルが目当てなのだろうが、恐らくは、腕を斬り落とした自分も標的であろう。

 だが、やられる気は毛頭ない。

 ここで、必ず返り討ちにしておかなければならない。

 ……それにしても、二人でくるとは。

 

 萎縮などしている場合ではない。

 何としても、倒しておかないと、この先、仲間にも幾度と迷惑が掛かるかも知れないのだ。


 カルは店内の前迄くると、ジルから受け取った仮面を被った。

 未だに、何の効力があるのか知らないし、今更、ジルセンセに聞けない。

 謎の仮面である。

 

 先程の話しだと、店員は殺されているとのことだが、血の臭いはしてこない…。

 流石は暗殺を生業にしているだけのことはある。といったところだろうか。


 ここで、カルを制する者がいた。

 グリズリン配下の護衛である。

 護衛者は二人が連絡のために、抜けたので、今は二人となっている。

 二人は、さすがにFランクの若者では歯が立つ訳がないからと、自分らが行くという。

 相手はペイジンだと言っても、きかない。

 というか、信じていない。

 

 この二人、グリズリン直属の騎士と従騎士であり、多少は腕に自信があった。

 二人は、剣を抜くとレストランの扉を蹴破って入った。

 

 足を踏み入れた瞬間、天井から何かが降ってきた。

 二人の目では捉えることが出来なかった。

 何かが動いたと思った瞬間、一人は左肩から腹部までを縦に斬り裂かれ、もう一人は、腹部を横一文字に斬られて地面に伏してしまった。


 店外ではあったが、騎士達の真後ろにいたカルは、その様子を目にしていた。

 騎士団員でも、上級の者でなければ、この敵の動きを見切れるものではない。

 しかし、カルには敵二人の動きを目で追えていた。

 そのため、目の前での惨劇にも臆することなく、冷静であった。


 カルは店内全体へと目を移す。

 強く、真っ直ぐな陽の光が差し込んでいる。

 今、所々に光と影が並び別れている。


 何も無かったかのような静寂に包まれた店内は無風。

 そして無音の世界が広がっている。

 不自然な空間である。


 息を潜めて隠れている敵の位置は、大方検討がついている。

 だが、襲って来る時の速さと、手持ちの武器が先程と同じだとは限らない。

 けれども、それは敵側からしても似たようなもの。


 俺と戦った奴も、同じことを考えているかも知れない。

 だからと言って、様子見などと後手で動こうなんて思わない。

 自分の命が懸かっているのだ。

 最善、最速で剣を振るう。


 ……考えるのも、ほどほどに意を決した。


 カルは腰袋から小さな人形を左手で取り出すと、騎士達を踏みつけ、店内へと飛び込んだ。

 その際、人形を軽く放り投げた。

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【お願い】

今回、DUをお読みいただきまして、ありがとうございました。

この小説を読んで、「興味がもてた!」「続きを読みたい!!」等と少しでも感じていただけましたら、★★★★★を押して応援願います。

ブックマークも是非ともお願いします。

本当に、更新する原動力がわいてきます。

是非とも、よろしくお願いいたします。

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