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ダブルアップ  作者: 皆賀 幸
第二章 王都への旅路
68/130

68 暗殺集団 = ペイジュス =


『 == 逃してはならぬ == 』


 心の内なる声であった。


 なぜ、今かと思ったが剣を振り斬った。

 相手は翻り躱す。


 手ごたえは差ほど感じなかったが、剣先には血がついている。

 完全に躱された訳ではなかった。


「貴様っ! 魔力を消しさり、俺の背を取るとは!」

 声を発した男は、頭からローブを被り、黒い仮面で顔を隠している。


「まさか、我らの暗殺剣と同じ剣を使える奴が、いるとは…」

 暗殺者の目を見ると、苦痛に歪んでいる。

 傷を負った証拠である。


「言っていることは良く分からないが、目の前で人が死ぬ経験はしたくないんで」

 カルは意外と冷静であった。

 内なる声が聞こえたからかも知れない。

 

 敵は傷を負っている。ならば、もう逃げることも視野に入れているはず。

 だが、必ず、その前に何かを仕掛けてくる。

 そして、こちらに隙が生じた際に、逃げ去るのだろう。


 案の定、敵は右手に持っていたナイフを左手に持ち替えると、前傾姿勢で向かってきた。

 二歩目を踏み出す際、右手で腰の中剣を抜くかと思いきや、投げつけるように手が動いた。


 ここで、敵に想定外のことが起こった。

 二歩目が着地した時、カルが既に間合いの中にいたのである。

 そう、カルの一歩目の踏み出しは速かった。


 剣が振りきられると、暗殺者の左腕が宙を舞い、直後に剣を軽く握ったままの右手首が地に落ちた。

 カルは、逆袈裟で斬り上げると、敵の右に抜けた。

「ぐぐっ」

 声を漏らすと、暗殺者はそのまま、一直線に駆け、逃げ去って行った。


 馬車の奥では、ランドルが失禁しながら一部始終を見ていた。

 と言っても、速くて動きそのものは見えてない。

 だが、腕が舞っているのは見ていた。


 声は、まだでそうにない。


 一難去って、また一難である。


 前回、見た光景が繰り返される。

 どこに隠れていたのか、また盗賊団に囲まれていたのである。

 今度は、50人を超えていた。しかも、前回、風魔術での犠牲が多かったこともあって、盾を持つ者が多い。


 リグルスも盗賊の出現に気が付くことが出来なかった。


 暗殺者が気配を気取られないようにと使った風魔術によって、風の音、流れに意識が持っていかれたことと、暗殺者が放った瞬時の殺気と比べると、その後に生じていた盗賊の殺気は、あまりにも弱かったために、リグルスは感知出来なかったのである。


「おう、お前らその盾があれば大丈夫だ。あのガキを殺して、さっさと、ずらかるぞ!」

「「「 おおっ! 」」」

 実は、前回、エスティルが放ったウインドエッジ対策として、盾を用意してきたのだが、頭目は誰が放っていたのかまでは、把握していなかった。

 ただ、ウインドエッジの被害が一番多かったというだけで、準備していたのである。


「あんたが盗賊の頭目ね。しつっこいわね!」

 エスティルは、クミアを怯えさす盗賊に腹を立てていた。


「へへっ、姉ちゃんらには何もしねえ。ちょっとの間だけ、そのままお喋りでもしててくれな。すぐ終わらすから。こっちは金を貰っているんでね」

 頭目の冷酷な目は、馬車のみを見据えている。

 前回、頭目はエスティルらとは、馬車を挟んだ反対側にいたため、彼女の顔は印象に残っていなかった。


「残念ね。あそこには、私の騎士がいるわよ。それに、私らはお金を貰えるのかしら----------。護衛の依頼はあるのかしら----------」

 エスティルは急にお金の話の辺りから、大声を出し始めた。

 カルに対して、ランドルが契約延長するかどうかを確認しなさいと言わんばかりである。

 エスティルは、ランドルが契約延長すると踏んでいるので、頭目を逃がす気はない。


「な、なんだと!」

 頭目の目がひん剥いた。

 彼は、護衛の女が解雇された情報を手に入れており、今は護衛がいないものと思っていたのである。


 エスティルの大声は、ランドルにも聞こえていた。

「なんか、聞こえるように大声出しているけど、契約の延長はどうする? 契約期間、ムリアズ男爵領までの護衛だったかと思うんだけど…」

「えっ、延長で、伯爵領まで、契約延長でお願いします」

「多分、倍額っていうと思うんだけど。大丈夫?」

「大丈夫に決まっています!! こっちは命の代金なんです!!!」

 珍しく、カルが交渉し、ランドルからOKを引き出した。


「契約成立だーーー!」

 カルは、エスティルに聞こえるように叫んだ。


 エスティルはカルの返答を聞くと、最後通告とばかりに頭目に話しかけた。

「警告しておくけど、多分、その盾は無意味よ。盾の魔力量でわかるもの。それがミスリルとかだと話は別だけど。違うのが分かるし」


 頭目は青ざめた。

 前回のウインドエッジを放っていた奴が目の前の女だと察したからだ。

 余裕のある口ぶりからして、嘘を言っているようには見えない。

 だからと言って、もう、今からやめると言っても、集めた仲間は指示に従わないだろう。ここで、自分は降りるというようものなら、部下らに殺されかねない。

 頭目は自分の命を守ることを優先した。


「お前ら! ランドルの首を取った奴は、俺の後払い金の半分をくれてやる!」

 聞いた寄せ集めの部下たちは、大いに湧き、勢いづき、馬車へ一直線に襲い掛かった。

 その隙に、頭目は反対方向へ逃げ出した。


「酷い奴……。カル! 馬車も守ってーーー!」

 エスティルは一言呟いた後、大声で叫んだ。

「わかった」

 今のカルは、『古来剣術』の使い手である。

 凄まじい動きと剣捌きで、容赦なく盗賊を斬り捨てていく。


 馬二頭は、エスティルがウインドエッジで守っている。

 盗賊の持つ盾は、いとも簡単に切裂かれていく。


 エスティルの護衛には、オルガがついていた。

 時折繰り出すオルガの火魔術には、常にフェルビーが水魔術で消化にあたっている。

 森での火魔術は、マナー違反なのだ。


 盗賊団は全滅した。


 その光景を見て、ランドルは言葉が出ない。

 立ち尽くすだけであった。

 そんな時、ランドルの秘書が走って来た。

「ご無事で何よりですぅ」

 秘書は縋りつきながら、泣きだした。


「お、お前、今頃、顔を出しやがって! 今迄何してた! 俺に万が一の事があったらどうするつもりなんだ! このバカッ、バカッ、バカッ」

 秘書を突き放し、例によって、また足蹴にしている。

 ランドルは、不満が爆発し、四つん這いで蹲る秘書を蹴り続けた。やがて、気がすむと、今度は怯え出したのである。


「あ、あいつ、絶対にペイジュスだ……間違いない。誘拐じゃない。金目的じゃないんだ。誰かが、誰かが、俺を殺そうとしているんだ」

 ランドルの発言に、秘書は言葉に詰まってしまった。


「ジルセンセ、ペイジュスってなんです?」

「え、ペイジュスって、暗殺集団のことだよ。…実在するのか、わからないけどな」

「「 へ~ 」」

 カルとエスティルは知らない。

「ペイジュスは実在しております。闇社会でギルド化して、殺しを請け負っているのです」

 オルガが訂正した。


「あいつ、俺が魔力を消して、背後を取ったって言っていた…」

「流石です。ペイジュスのお株を奪ったあげく、即座に戦闘不能にしてしまうとは」

 オルガは、地面に転がっている左腕や右手を見て、カルに対して尊敬の眼差しを向けていた。そして、流石は、エスティル様のお気に入りだと感心していた。

 

 俺にとって、そんなオルガの眼差しは心苦しい。

 実際は、魔力を消したのではなく、もともと、僅かしかないだけなのだ…。

 それにしても、暗殺を生業としている者が気付けない程、魔力が無いとは。


 ……悲しすぎる。


 そう言えば、誰かさんに生きていくのも大変なレベルとか言われていたような…。

 まあ。考えて増える訳でもないし。


 実は、この話題については、あまり触れて欲しくないのが本音である。

 事実は事実として、誤魔化すような気持ちは毛頭ないし、見栄を張ろうとも思わないのだが、エレンにゴブリン以下とか言われて、正直、傷ついている。

 …避けたい話題は、誰にでもあるかと思う。

 所謂コンプレックスとなっているのである。


「そうなんだ、それで、あんなに簡単に近づいて追い払えたんですね」

 ランドルは、藁をも掴むような気持なのか、縋るような目を向けてくる。


「い、いや、もう無理。同じことは出来ないよ」

 カルは、ランドルの目に耐えられなくなって、思わず否定した。

 そもそも、『内なる声』があって、はじめて出来るものなのである。

 今、振り返ると、今回はなぜか、声が掛かるのが早かった。

 なぜだろう。


 再三、思っていることだが、何か、声がかかる基準みたいなものが、分かると嬉しいのだが、全く分からない。

 だからと言って、人に相談する気にはなれない。

 頭の中で人の声が聞こえてくるなんて話を、人にするのも、少し勇気がいるものである。


「それにしても、この腕、襲ってくるなんてことはないよな」

 カルは斬り捨てた腕を見て、洞窟で『宙に浮く左腕』に襲われたことを思い返していた。


「何の魔力も感じないから大丈夫よ」

「んぐっ!」

 エスティルからしてみれば、シャルティエットへの信頼を表す言葉でもあった。

 

 クミアは、今のカルの話を聞いて怯えだした。

 それを見たフェルビーは、いきなり、自前の杖を取り出すと炎で腕を焼き払ってしまった。


「フェルビーって、結構、やること凄いな…。そうだ! ランドルッ、もう、代金は金貨300枚で、これで延長するとなると、600枚だぞ、本当に払えるのか!」

 いきなり、お金の話をジルセンセが始めたので、全員驚いたが、ランドルは平然としている。


「だ、大丈夫! ビルトリアン伯爵領ならギルドもあるから、前金として金貨300枚を払うから領内でも続けて守ってくれ! …あそこは、賑わいもあるが、夜になると恐ろしくて、立ち寄れない場所もある。そんなところに、ペイジュスがいて、俺を狙っていると思うと…」


 みんな、後半の言葉は聞いていなかった…。

 けれど、前半はしっかりと聞いていた。

 ビルトリアン伯爵領へ着けば、金貨300枚が入って来る。

 そこだけは、全員聞いていた。

 クミアでさえも。

 6人は、興奮気味に急いで馬車に乗り込んだ。


「何やってるのよ。ランドル! 早く乗って!」

 エスティルの声にも張りがでている。


「は、はい」

 ランドルは股間を洗いたいと思ったのだが、言い出せずに馬車にそのまま乗り込んだ。


「伯爵領内のギルドに急ぐわよ! オルガ、馬車を出しなさ~い!」

「ただいまっ」


 こうして、エスティルのハイテンションに引っ張られるように馬車は、再び動き出したのである。


「何か、おしっこ臭いじゃない! 誰よ!!」

「……すみません…」

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【お願い】

今回、DUをお読みいただきまして、ありがとうございました。

この小説を読んで、「興味がもてた!」「続きを読みたい!!」等と少しでも感じていただけましたら、★★★★★を押して応援いただけますと嬉しいです。

ブックマークも是非ともお願いします。

本当に、更新する原動力がわいてきます。

是非とも、よろしくお願いいたします。

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