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ダブルアップ  作者: 皆賀 幸
第一章 エンデルの森
26/130

登録名はカルアイヤ

エスティルとジルがパーティー名で言い合いをしていると。


「そこ、煩いぞ!」


 ジルが大声をだしたために、『隻眼の狼』のメンバーに叱られた。

 当然である。

 森に入るための最後の注意事項を話している途中だったのだから。

 

 周囲が黙っていた分、もの凄く目立っている。

 ジルはバツが悪そうにしながらも、辺りを見廻すと『銀の翼』が意外と傍にいるのに気が付いた。

 『銀翼』も『女神の祝福』同様に先鋒隊に組み込まれていたのである。


「会いたかった~、シャルティエット~♡」

 エレンは後ろからハグしつつ、背中に頬ずりをしている。

 また性懲りもなく、現れたかと3人で見ていると、パルーもやって来た。

 パルーは、挨拶がてらに編制内容を説明してくれた。


 討伐隊は大別して、先鋒隊(130名)と主力部隊(200名)に分けられるという。


 先鋒隊の内訳は、王都兵団は100名、冒険者らは30名。

 王都兵団は、1組10人の先鋒隊が7つ。残りの30人は応援部隊となる。

 冒険者らは、1組10人程の部隊が3つとなる。


 探索中にもし、何かあれば、組毎に支給された杖を使って、空中へファイアボールを3発撃つようにとの指示だ。撃てば、直ぐに主力応援部隊が駆けつけるといった算段である。


「冒険者の10人ってメンバーは、決まっているんですか?」

 カルが不安気に尋ねた。


「ほぼ、決まっている。俺としては君らと組みたかったんだが、ちょっと仕事のからみで、別のパーティーと組むことになっているんだ。悪いな。何かエレンが来ちゃったから声を掛けに来たみたいな感じになってしまったが、違うんだ。はは」


「…そうなんですか」

「そうなんだ。ほら、エレン戻るよ」

「なんで、来るのよぉ」

 エレンは、迎えに来るのがジュノーであれば、もう少しいるつもりであったが、パルーが来てしまったので、渋々一緒に帰っていった。


「………Fランクパーティーと組みたいなんて奴、普通に考えたらいないよなぁ」

 カルは自分らの立ち位置をあらためて、痛感していた。


「別に俺様達は目的が異なるんだから、どことも組まなくたって、いいくらいじゃないのか?」

 確かにジルセンセの言うとおりである。

 俺らとしては、扉を探しだすのが目的であって魔物と戦うのが目的ではない。

 その行動を邪魔するようなパーティーとは組みたくはないというのが本音だ。

 けれども、組まないで済む訳にも、いかないだろう。


 組むのであれば、俺らは4人だから6人前後のメンバーが必要となる。

 今、残っている者は、自分らと同様に能力の低いものに違いない。


「おー、いたいた。カルアイヤ、あたいを仲間に入れてくれい!」 

 『カルアイヤ』って、誰のことかと思いつつも、声のする方へと振り返った。


 すると、そこには参加登録した時のギルドの受付の女性が立っていた。

 防具を身に着けてこの場にいるのだから参加者なのだろう。

 どうやら、お一人様での参加らしい。


「これでも、優に10年以上冒険者をやっていたんだ。腕は確かだぜ、前衛は任せな」

「あ、あの、その前に、カルアイヤって、俺のことですか」

「お前が名乗ったんだろ! だからギルドカードにそう登録したんだぜ」

「え、名乗った? どういうこと?」

 カルは暫く言われた意味が分からなくて考え込んでいた。

 そして、思い出したのである。

「………ああっ!! そうか、確かにそう言った。あの時言った。そういうことか!」


 俺は登録時の会話をはっきりと思い出した。

 ということは、ギルドでは、俺の名は、『カル』ではなくて『カルアイヤ』となっているのか…。


「で、どうなんだい。まあ、選択肢はそんなにないだろうけれどな」

「「「………」」」

「入れて貰うけど。みんな、いいかな」

「いいんじゃないの。ねえ。カルアイヤさん」

 エスティルも当時の発言を思い返して、クスクス笑っている。


「あたいの名前は、グリア。グリア・ガーレルだ。グリアって呼んでくれ、得物は見た通り両腕のこのクロー(長爪)だ。よろしくな」


 少し上から目線の話し方は、やはり自分のキャリアとランクがC(+)だからであろう。

 まあ。当然ではある。

 こちらはランクF。駆け出しの冒険者なのだから。

 

 よくよく考えていたら、もう選択枝はなかった。

 3チームできるのだ。


 チームA 『隻眼の狼』とその他 ……… (計 11人)

 チームB 『銀翼の翼』とその他 ……… (計 10人)


 は既に相手が決まっている。

 残りもの同士で組まざるをえない。というわけで、チームCが結成された。

   

 チームC 『女神の祝福』とその他 ………(計 9人)


 チームCは、『女神の祝福』の3人+1人以外は皆、単独の冒険者か傭兵である。

 結局、カルを含めて6人が前衛となるバランスの悪いチームとなった。


 とりあえずはと、自己紹介と戦闘時の打ち合わせを始めようと試みるが、名前だけの自己紹介となった。

 各々が、自己の魔法属性や戦闘方法を、話すのが嫌なのだ。


 チーム連携も何もあったものじゃないと思いつつも、『女神の祝福』自体も素人同然なので、言えたものじゃない。



 早速、先鋒体として森に入るのだが、先頭はチームAではなく、なぜか、俺達チームCであった。


 弱小チームが先頭。…どうしても、捨駒感が拭えない。。

 なのに、前衛部隊は至って前向きである。

 なぜなら、最初に魔物を狩ることができるからだという。

 

 前衛はカルとグリア。ほか4人となる。

 4人とも皆、30代、40代のベテランに見える。

 彼らは特に会話をすることもなく、黙々と武器の手入れをしていた。


 一方で、グリアは積極的に話かけてきた。

「そうだ。あんたのところのリーダーと色違いの服を着ていた綺麗なお嬢ちゃんがあっちにいたぜ。知り合いかい?」


「色違いの服? あ、あのもらい受けた服って、キャンセル服だったよね」

 カルは思い出した。


「よ、余計なこと言わないで!」

 エスティルが恥ずかし気に言う。


「確かチームBの女だよ」

 グリアは少し首を傾げながら答えた。


「Bって、『銀翼』がいるところだ。もしかして、それって、エレンのお下がり?」

「エレンは胸が小さいから違うわ。別のパーティーの娘よ」

「あっ、そうなんだ」


 無意識ではあったが、カルの視線はエスティルの胸を捉えていた。「しまった」と思い、視線をサッと移動させたが遅かった。移動させたと同時に彼の頬は抓られていた。


「ひててっ」

「この間の件は、帳消しね」

「……」

 この間の件とは、シャルティエットの前で、俺が転生者であることを喋ってしまった件であろう。エスティルも、気にはしてくれていたらしい。

 イマイチ、納得がいかないものの、彼女が気にしてくれていて、少し嬉しいようでもあるので帳消しを了承することにした。


 ……ちょい、ちょい、頬を抓られるのも嫌なので、視線を隠すために仮面をつけようとしたその時である。


「!! カ、カル……?」

(しまった。…知り合いか?)

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