主要人物紹介 + 100 憂鬱と胸の痛み
久方ぶりの投稿ですので、主要人物を纏めてみました。
寄って読んでいただけますと嬉しいです。
< CHARACTER >
登場人物が多くなるので、主要人物だけ纏めました。
----- 女神の祝福(冒険者パーティー)
■カルミュース・スワットマイツ
本作の主人公。通称・カル(ギルド登録名:カルアイヤ)
休息途中の魂であった彼は、何者かに召喚される途中に想定外の素体と一体して転生を果す。
魔力量はゴブリン並み。本人はスローライフを送りたい。
■エスティル
湖のそばで石像にされていたところをカルに助けられる。記憶を喪失したエルフ。
■ジル
エンデルの森で、魔女やドライアド達と暮らす。泣き虫でチョットプライドの高い兎人族。
人サイズの兎の姿に変身できる。
■ウォルター・リグルス
元は貴族の執事。カルを恩人と仰ぐ幽霊。
■ルバート
意思を持つ白銀の武具。四つに分割されて本来の力を失っている。
現在、カルの左腕に巻き付いている。
■オルガ・アミュカル
エスティルの従者と名乗る。赤みの髪に筋肉質な槍士。アミュカル家の次女。
■フェルビス・リーフォン
エスティルの従者と名乗る。通称・フェルビー。ヒーラー。大柄で坊主頭。
----- 公爵家の人々
■マーレ・ラファンツ
公爵令嬢フレデリカの侍女。カルに好意を抱いている。特殊スキルもち。
■フレデリカ・ラノ・フォン・ミューラー
エンデルを治める公爵家の令嬢。カルの幼馴染であり、主筋。
■ジルフリード・ラノ。フォン・ミューラー
フレデリカの兄。将来はミューラー家の当主。
■イシュルミット・アンセット
元は孤児。戦闘センスをかわれて公爵家の一員になる。マーレが気になる。
----- 鉄戦士(冒険者パーティー)
■ビグル
冒険者パーティー『鉄戦士』のリーダー。本職は傭兵。エスティルをボスと呼び、一目置いている。
■ベック
『鉄戦士』では唯一の冒険者あがりであるため、ダンジョンの事柄に詳しい。
----- 銀の翼(冒険者パーティー)
■パルー
冒険者パーティー『銀の翼』のリーダー。カルの剣術に興味をもつ。
■ジュノー
冒険者パーティー『銀の翼』の主に前衛職。猫人族。レイピアを扱う。
■ガルツ
冒険者パーティー『銀の翼』の主に前中衛職。ドワーフであり、エレンやジュノーの愚痴の聞き役。
大斧を扱う。
■エレン
冒険者パーティー『銀の翼』の主に後衛。光の魔術を扱う。剣はからっきしダメなので、前衛と交代する時に備え、フルプレートアーマーを装備している。エスティルとはシャルティエットの件でよくもめる。
----- その他
■アイナ
ダンジョンで、ゴブリンに捕らえられていた女冒険者。カルに助けられて同行している。
■モンティ・レ
天塔迷宮の冒険者試験官。エスティルらには変態露出狂女として嫌われている。本名はゼリハネイトといい、火魔術と鞭打ちが好きなエルフ。武器はロッドソード。
★ここから100話となります。
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「たいへん、なんですーーーーーー!!!!!!」
両腕を左右に振りながら、独特のフォームで突っ走ってくる女性。
「と、ととと」
全速力で廊下を走ってきて、急停止したところは、ある執務室の扉の前であった。
その女性は、礼儀としてノックを2回するも返事を待つことなく、扉を乱暴に開け放った。
バタンッ!
「ど、どうしたのかね。バレッタ」
室内で書類に目を通していた老人は、今しがた彼女の勢いある走りでズレてしまった老眼鏡を掛け直しながら、声を掛けた。
天塔迷宮の1階ロビーで受付のチーフを任されているこの女性は名前を、バレッタ・シーハンスという。
老眼鏡がズラされた老人には、幼少の頃から可愛がってもらっていたこともあり、ファーストネームで呼ばれている。
「はあっ。はあっ。はあ」
「そんなに息を切らして…。落ち着きなさい。チーフになったばかりなんじゃろ」
「ラーキンガム様、た・い・変・なんです!!」
そう呼ばれたこの長髪の老人は、天塔迷宮において、国王から全権を委託され、また、この都市、ラッツ=ウルブスでもギルドマスターを兼任している人物である。名をベレント・ラーキンガムといい、御年600歳を超えるエルフである。
この世界において、エルフの寿命は最大で700歳とも言われており、600歳を超えているラーキンガムは、そうとうな老齢である。
バレッタは幼少の頃から可愛がってもらっていたこともあって、すぐに彼に知らせねばと思い、中間職を全てすっとばして、最高責任者に伝えに来てしまった。
彼は、バレッタの話を聞くと、別に驚いた様子もなく『うねり』じゃなと、一言だけ呟いた。
既に諦めてしまったようなものの言い方である。
彼の長い人生において、幾度と経験してきたことなので、『うねり』がどのような物かは充分に分かっている。そして、防ぎようのないことも。
だが、最悪の状況を踏まえ、やらなければならないことはある。
彼は直ぐに秘書を呼ぶと、王城と王都のギルド、そしてラッツ砦にこのことを伝える様に指示をした。また別の者も呼び寄せ、魔素の流れに異常はないか調べるよう伝えた。
老齢のラーキンガムが、テキパキと指示する姿を見て、バレッタは呆気に取られていた。
だが、直ぐに彼女は我に返る。
「自分がここにいても、邪魔になるだけ。自分は自分の仕事をしなければならない」
思い直した彼女は、足早に部屋を出た。
考え事をしているためか、彼女は俯きながら廊下を歩いていた。
彼女の脳裏に浮かんでいたのは、つい最近のことである。
後悔の念に苛まれていた。
なぜなら、このタイミングで、初心者だけのFランクパーティーをダンジョンへと送り込んでしまったからである。
彼女は規則どおり、五層到着後にロビーへと戻るよう伝えてから入塔させた。説明に間違いはないのだが、この状況化では最弱パーティーである彼らは、生きて帰ってくることは到底出来ないだろうと繰り返し悲嘆にくれていたのである。
過去、『うねり』がもたらした被害は甚大で生還出来た例は数少ない。
なぜならば、ダンジョンが魔力を欲していることが原因であるからだ。
天塔迷宮は、外部の建物部分である『天塔』から自然界にある魔素を吸収して成り立っている。だが、今回のように魔力が不足している場合は、地下『迷宮』内に入っている人族から吸収しようと強力な魔物を冒険者にあててくるのである。
バレッタはいたたまれない気持ちで、一人佇んでいた。
鬱蒼とする気分の中、彼らには連れがいたことを思い出す。
すぐに、状況を説明しなければと、彼女は再び駆け出した。
ロビーに人は少ない。
先程までいた多くの冒険者らは、入塔してしまったからだ。
ガランとしたロビーの中、何も知らないマーレらは未だテーブルにいた。
バレッタは、彼女らを見つけると、その場で一度息を整えた。
ギルドチーフが、慌てふためいて伝える訳にはいかないからである。
身なりもチェックすると、足早にテーブルを目指した。
途中、モンティがいることに少し驚きはしたものの、冷静を装いマーレらのテーブルの前で立ち止まった。
「本日、入塔された冒険者さんの関係者で、お間違いないでしょうか」
「はい」
いきなり、テーブルの前に来られたこともあり、マーレは不審に思い、声も小さい。
「現在、確認中ではありますが、天塔迷宮は『うねり』の状態にあるかと思われます」
マーレも、イシュルミットも、スコットも冒険者でないので、『うねり』と言われても、ピンとこない。
反応したのは、モンティであった。
「なんだと!! それは、間違いないのか」
「い、一応、確認中となっていますが、ほぼ、間違いないと思われます」
バレッタは普段見たことのない、試験官・モンティの態度や言葉使いに萎縮してしまった。
「それで、どれくらいで収まるんだ! 見通し位ついてんだろっ、あのジジイは何て言っていた!」
普段のモンティとのギャップが大きすぎて、バレッタは言葉がでてこない。
「あ、あの、『うねり』とは何ですか!」
マーレは、会話に置いてきぼりにされそうなので、意を決して質問した。
彼女の優しい声に、バレッタは自己を取り戻す。
「『うねり』とは、現象だけ捉えれば、一時的に塔内の階層やら魔物が入れ替わって混在してしまうことです」
「何か、面白そうだな。やっぱし、ボクらも行けば良かった」
イシュルミットは強い魔物と戦いたいこともあって、素直な心で答えた。
「それって、物凄く、危険なことなんじゃ……」
「はい。天塔迷宮では100年に一度あるか、ないかの厄災といっても過言ではありません」
「そ、そんな! 予兆とかなかったんですか! 分からなかったんですか!」
「はい…」
マーレは絶句した。
他を余所にモンティは、ラーキンガム総長の執務室へと駆けだした。
幾人かのスタッフに止められるも、制止を振り切り、執務室の扉を強引に開けた。
バタンッ!
いきなり、ノックもなく、乱暴に扉を開け放たれたので、老眼鏡がズレ、今度は机上に落ちた。
ラーキンガム総長は、慌てはしなかった。
「ゼリハネイトか、来ると思っていたよ」
総長は、老眼鏡にヒビが入ってないかと確かめながら声をかけた。
「そんなもの、気にしている場合じゃねえだろ! エスティルが中にいるんだよ! 分かってんだろ!」
モンティと名乗っている時の言葉使いとは打って変わって、素のゼリハネイトは総長に対しても全く遠慮がない。
怒りに任せて喋っている。
「それは勿論分かっているが、そもそも、君も彼女らを止めてはいないし、魔力の無い男を合格させたのも君だし」
「こんなことは想定してねぇっ」
「そりゃあ、儂も同じじゃ、想定なぞ、してはいない」
「ぐぬぬっ、どうすればいい! どのくらいで収まる!」
「どうしようも出来ぬ。探し出すことは不可能なんじゃからの。収まるのは最短で3カ月じゃの」
「教科書どおりじゃねぇか! 何か、アンタの力か何かで助けられないのか!」
「そんな力はない。現実はそんなものじゃ」
その一言を聞くや、ゼリハネイトは机上の老眼鏡を手に取ると、床に投げつけてしまった。
「こ、こら、何をするか! 物にあたるでない、未熟者めが」
「煩い!」
「給料から引いておくぞ! 足りない分はエスティルの取り分から引いとくぞ!」
「うううっ! カルから引いとけ!」
そう言うと、またもや扉を乱暴に扱って、出て行ってしまった。
「全く、のう……。……はて。カルって誰じゃ?」
モンティは怒りが収まらない状態で、マーレ達のもとへと戻ってきた。
マーレは自分に出来ることがなく、悲嘆に暮れていた。
一時は、今から冒険者登録をして入塔しようとしたが、何の準備もしていない状況で入塔すると二次災害になると、スコットに止められ、断念していたところであった。
もしかしたら、今、戻って来るかもしれないと思うと、この場も離れたくない。
マーレの気持ちは複雑であった。
モンティは、この娘も彼奴に惚れているのかと思いながら見つめていた。
見かねたスコットが、もう、ここはカル達に対してはバレッタに伝言を頼み、一度戻って、フレデリカ様の判断を仰ごうと切り出してきた。
「マーレ殿、急ぎ、戻りますよ。いいでありますかな」
スコットの優しい言葉にマーレは頷く。
そこへ塔の入口から、微かながら声が聞こえて来た。
バレッタが振り向くと、左足を引きずりつつ、剣を杖代わりにして、何とか歩いてきた男がいた。彼は全身血だらけとなっている。
彼女は最初の生還者を目にして、手を口にあてたまま、声がでない。
マーレらは急ぎ駆け寄った。
ロビーにいた受付嬢らもポーション等を持ち寄り、集まってきた。
バレッタは顔をみるやいなや、声を掛けた。
「あなた、ドラウさんですね、『双竜』のドラウさんで、間違いないですね」
ドラウの意識はしっかりしていた。
「そ、そうだ。俺はドラウだ。…ここは、そうか、で、出られたんだな。俺は生きて出られたんだな。ううっ、」
この『双竜』のドラウという男は、鼻っぱしが強く、エレンとよく衝突する男である。
本人によると、七層で他のパーティーと合同で戦闘を開始したところ、対峙した魔物がとてつもなく、強く、苦戦をし、訳も分からずに気が付くと一人になり、彷徨い、歩いて、ここに辿りついたのだという。
その時の仲間の生死もわからないという。
「なあ、リュゴンは戻っていないのか!」
リュゴンとは相方の名前である。
「戻ってはいません」
バレッタは、『うねり』のことは説明せずに、その場で応急処置を係の者にさせた。
「あ、あの、『女神の祝福』は見ませんでしたか! 剣を背と腰に提げた人間族で…」
既に声が涙に濡れている。
「い、いや、悪いが全く知らない」
マーレは、彼の容態を見ていて、カルもこのような様子で戻ってくるのかと思うと、やはり、この場で待っていたいという、気持ちでいっぱいになった。
カルのことが、心配で、心配で、胸が痛むのだ。
彼女は、過去に一度、フレデリカのお供で馬車に乗り、魔人に出くわしたことがあった。当然、フレデリカの安全が優先されるため、供として馬車で、その場を後にした。
屋敷についた後、死体は恐らくは焼かれたためにないが、カルは魔人に殺されたのだろうと聞いて、それこそ、胸が張り裂ける思いをしたことがあったのである。
もしも、今回、命を落とすようなことがあれば、彼女にとっては二度目の悲劇となる。
ドナウの姿を見て、彼女の涙はとまらなかった。




