【下巻】エピローグ
「いやぁ、最高!泣けるねぇ!」
道化師が拍手をしている。
暗いホールの中ではその音がとてもよく響く。
「どこが泣けるのか。こんな物語をみて感動するのですか?あなたは」
黒髪の女は蔑んだ目で道化師を見ている。
「逆にどこが泣けないんだい?こんなに感動するものを見て泣けないなんて、ほんとに人間じゃないんじゃない?」
道化師はニコニコとした顔で反論する。
「私は元より人間じゃありません。泣けない場所は全てです。あなたこそ人間じゃないのでは?」
そう言い終えた女はこちらを向く。
「あなたはどう思いますか?」
自分は____。
「やめやめ、やめー!あれに聞いても面白くないよ。それより、もっと見ていく?超がつくほど感動する物語!」
目をキラキラと輝かせながら黒髪の女に言う。
「あなたの物語は飽きました。別の所にでも行きます」
そういうと女は椅子から立ち上がり、暗闇の中へ消えていった。
結局彼女はなんだったのだろう。
「はぁ、つれないなぁ。まあいいや。新しい物語でも探そうかな〜」
道化師が辺りをうろつき、"自分"に気づく。
「まだ君いたの?出てったら?もうここには物語なんてないよ。この先にあるのは白紙だけだ」
さあほら、散った散った!と言いながら手をシッシッと振る。
確かに、この話はもう終わりの様だ。
〜fin〜
「おーい、まだ見ている人いる?いるよね?いないとかないよね?うんうん。この物語はこれでお終い、それは変わらない。僕の時間もここで止まっちゃう。でも"自分"は止まらないでしょ?本の中の住民じゃないだろうし。……だから、少しだけ羨ましい。それを言いに来ただけ!僕だって一応人間なんだよ?ふふっ、じゃあね、また別の僕で会おう!」
これがほんとの終わりだよ!by僕