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放課後のキスはミルクティーの味がして  作者: アザラシの逆説
6/6

第6話


—————レン視点


——シオンとヒヨリが面談した日の夜——


ピロンッ


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


シオン:レンくんこんばんわ♡通話してもいい?


レン:もちろんいいですよ


シオン:やった♡じゃあ掛けるね!


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


『も、もしもし?レンくん?』


シオン先輩は少し恥ずかしがっているのか声が少し上擦っている。


『こんばんわ、シオン先輩。』


『通話越しのレンくんの声も素敵♡』



通話で少し曇った先輩の声が俺の脳内を刺激する。



『先輩の声も素敵ですよ』



『あは♡ありがとう♡このままずっと惚気あってたいけど……レンくん、明日の放課後空いてる?』


『空いてますけど…?どうしたんですか?』




『明日も他の役員いないから…生徒会室で…そ、その…イチャイチャしたい…』



少し恥じらうその声に俺はハッキリとした興奮を覚える。

しかし、どうしてシオン先輩はここまで俺に固執するのだろう…



『先輩は…どうして俺なんかに初めてを捧げてくれたんですか…?』



『それはね、レンくんは私を…私の存在を初めて認めてくれた人なの…レンくんは気づいてないかもしれないけど、昔に私たち会ってるんだよ?』



『すみません。思い出せなくて——』



『———朝比奈汐音』



『!?まさか、先輩ってあの時の——』



『そうだよ…随分変わったから分からないのも当然よね。私が——あの時いじめられてた朝比奈汐音だよ。』


先輩の発言に耳を疑う。

なぜなら、朝比奈汐音は——





俺の初めて恋した人であり初めて失恋した人だからだ。





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


——————朝比奈シオン視点


——シオンとレンの電話のちょうど2年と8ヶ月前



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


——私は愛情を知らない。


私の母は誰かに尽くしていないと気が済まないタイプで私が幼いときから結婚と離婚を繰り返していた。数え切れないほどの男が母の異常すぎる愛情に恐れを来たし出ていった。


しかし、彼女の子である私にその愛情が向くことはなかった。


私は母に抱っこしてもらった記憶すらなければ、笑い合った記憶すらない。

それどころか、仮染めの父が私に構おうとすると母の心は嫉妬に染まり彼女の気が済むまで殴られ続けた。


こうして、無口で感情を表に出さない少女が出来上がった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


《朝比奈さんって何か変わってるよね》


《ねぇねぇ、朝比奈さんのお母さんって男を取っかえ引っ変えしてるらしいよ》


《ヤバっじゃあ朝比奈さんも…》


クラスの女子が私に聞こえるように敢えて大きな声で喋っている。


私がこの学校に転校してきたのは1ヶ月前。


最初は物珍しい転校生に期待し沢山の生徒が話しかけてくれた。

しかし、流行りのものやオシャレなどが一切分からない私と話が弾む訳もなく、日に日に話しかけてくれる生徒は減っていき、今では完全に孤立している。

それどころか、


「おい。放課後、いつもの体育倉庫に来い。」


クラスの覇権を握っている女子3人に呼び出されサンドバッグとして使われている。



「私、最近彼氏に振られてストレス溜まってんだよねぇ————クソッ!」



————痛いっ…



「私も親がウザくてさ〜————ドンッ」



————やめて…



「ちょっと…顔はダメだよ〜跡残ってバレちゃうじゃん————ドスッ」



—————助けて…



助けを呼ぼうとするが、スグ取り押さえられ更に殴られる。空が赤い夕焼けに包まれたころ、やっと私は解放された。




こんなクソみたいな人生早く終わればいいのに…

みんなみんな死んじゃえ…




しかし、こんなクソみたいな日常に一筋の光が差し込む。

ある日、私はいつものように体育倉庫へと呼び出されまたサンドバッグとして使われていた。


「こいつ、全然喋んねぇじゃん————ドスッ」


「ホント、生きてる意味あんの?——ドスッ」



あはは。生きてる意味?そんなのこっちが聞きたいよ。


私にはもう助けを呼ぶほど希望を持ち合わせていない。ただ時が過ぎることだけを待っていた——その時、



——————ガラッ



「あなたたち何してるんですか?」


扉が開き2人の男子が入ってきた。


「いや、、ちょっと遊んでいただけよ。」


「そ、そうよ!」


彼女らは何食わぬ顔で嘘を付く。

『助けて』その4文字を言えば救われるのかもしれないが、その後どうなるかは分からない。

すると、


「先輩方、そこに横たわってる女子を殴ってましたよね。なぁ、ケンタ?」


彼がそう言うと、後ろにいたもう1人の男子がスマホの画面を私たちに向けてきた。


そこには、暴言を吐きながら私を殴る彼女たちの姿があった。


「これでもまだ言い訳しますか?」


「あなたたち…一体何が目的なの?」


「いや、別に目的なんてありませんよ。でも、そこにいる女子をまたイジメたら、うっかり手が滑ってこの動画を学校に送ってしまうかもしれませんね。」


「…っ!正義のヒーロー気取りなわけ?くっだらな。」


そう言って彼女たちは足早に体育倉庫を出ていった。



「大丈夫ですか?」


私を助けてくれた2人が心配そうな目で問いかけてくる。

何か言わなきゃ行けないのに、言葉が出ない。


「無理して喋らなくてもいいですよ。立てますか?」


私は横に首を振る。


「——じゃあ、俺の背中に乗ってください。」


そう言って彼は後ろを向く。

私は言われるがまま彼の背中に乗り保健室へと向かった。途中、彼と一緒にいた男子は用事があると言って帰っていった。お礼言えてないのにな…


保健室に着くと誰もいなかった。


「この時間、先生たち会議があってるから。めんどうなことにはなりませんよ。」


彼はぎこちない敬語を使いながらも慣れた手つきで棚からキズぐすりを取っていた。

そして彼は私にキズぐすりを塗ってくれた。

男子に下着を見られるのは初めてで恥ずかしかったけれど、彼は終始真剣な眼差しで治療してくれた。


「よし、終わりましたよ。先輩少し落ち着きました?」


私は首を縦に振る。

この人になら心を開いてもいいのかもしれない。



「じゃあ、名前を聞いてもいいですか…?」



「——朝比奈…汐音…」



「朝比奈先輩ですね。俺は広瀬蓮です。下の名前で呼んでもらっていいですよ。」



「——レンくん…」



「そうです。朝比奈先輩、今日はもう遅いですし送って行きますよ。」



「——ありがと…」


こうして私とレンくんは出会った。

それからと言うもの、私へのイジメは減っていった。カースト上位の3人がイジメなくなったことで私はイジメの標的から外れたのだ。

レンは依然私と仲良くしてくれて、私は初めて友達という存在ができた。

仲のいい幼なじみを差し置いて私と毎日一緒に帰ってくれた。一緒に週末にお出かけをした。ぎこちなくはあるが私から会話を振れるようになった。


彼のおかげで私の人生は初めて色を持った。



しかし、そんな日々も長くは続かなかった。

いつものようにレンくんと帰っていたとき、



「——朝比奈先輩…俺、あなたの事が…好きです。付き合ってください!」



——付き合うって恋人になるってことだよね…

私もレンくんのことが好き…

でも、彼の恋人になるということは彼の交友関係の中でも特別になるということ。

もし私が彼の特別ではなくなったとき、私は二度と立ち直れないだろう…

ならば、この関係を続けていたい。

1番じゃなくても彼のそばに入れたらそれでいい。



私は自分の本当の気持ちに嘘をついた。



「ごめんなさい、レンくんとは友達のままでいたい。」



私がそう言うと、彼は走ってどこかに行ってしまった。不意にみえた彼の顔には大粒の涙が滴っていた。




その日を機に彼とは気まずくなり一緒にいる機会は減っていった。

それからすぐ私の母は離婚した。しかし私は父の方へ着いて行くことになったため、転校することとなった。



私は自分の愚かさを呪った。

またレンくんに会った時に私を選んで貰うため、私は苦手だった勉強を頑張り、疎かったオシャレにも気にかけ、運動する習慣を設け、苦手だったコミュニケーションを最低限取るようにした。



——そこに昔のような無口で感情を表に出さない少女の面影はなかった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


——レン視点



「シオン先輩って朝比奈先輩だったんですね…」



「レンくん、あの時はごめんなさい。私、怖かったの」



「俺もあの時は先走り過ぎました。すみません。」



「——ねぇ、今もわたしのこと好き…?」




「————当たり前じゃないですか…

あれからら何度もシオン先輩のこと忘れようとしました。でも、どう頑張っても忘れることが出来なかったんです。あの時から俺の中には先輩しかいませんよ。」



「嬉しい…私もレンくんしかいない…



レン…好き好き大好き!愛してる。」



「俺もシオン先輩のこと、いやシオンのこと愛してる。」



「ふふっ、やっと…やっと言えた…嬉しい。」



それからしばらく俺とシオンは2人の愛を確かめ合って、およそ6時間にも及ぶ通話が終了した。






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