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長田修羅

 少年は、剣介の問いかけなどには耳を貸さず、サーフボードの話を続けている。


「…このハンティントンレッドは、サーフィンのレジェンドと呼ばれる鈴木聖(すずきひじり)が第三回全日本選手権で初優勝したことを記念して、シェイピングした3本のうちの1本だね。“ハンティントン”は、アメリカの都市・ハンティントンビーチのことで、鈴木聖がボードのシェイピングの修行をしたところだよ。あっ、鈴木聖は、シェイパーとしても有名なんだ。でね、この3本の板は、ブルー、レッド、イエローの色違いで、当時、どれもショップでは売られなかったんだよ…鈴木聖が、自分を応援してくれた恩人に、お礼として贈ったんだってさ。もしも、オークションにかけたら、高級車を買えるくらいの落札価格になるかもしれないって、父さんが言ってた…」


 少年は、そこまで、話してから、思い出したかのように、剣介の質問に答えた。


「ああ、俺?俺の名前は、修羅(しゅら)長田修羅(ながたしゅら)って言うんだ。みんな、“アッシュ”って呼ぶけどね。ほら、瞳の色が、灰色だろ?で、アッシュ」


 そして、今度は、修羅が剣介に尋ねる番だった。


「ねぇ、おじさん。なんでおじさんが、このボードをもってるの?おじさん、鈴木聖の友達?なんて名前?」


 剣介は、一瞬、名前を明かしたものかどうか迷ったが、相手に尋ねておいて、自分が名乗らないというのは、礼儀知らずなこと。ましてや、こんなあどけない少年に名を伏せるなど、子どもの手本となるべきおとなのすることじゃないと考え、ここは、きちんと挨拶をしておこうと思った。


「おじさんは、醍醐剣介(だいごけんすけ)。そして、彼女は、僕の妻の夕凪(ゆな)だ。よろしくね。…ゴッド社の鈴木社長には、随分昔のことだけど、仕事をお願いしたことがあってね。このボードは、そのときのお礼として、いただいたものなんだ」


 剣介が、助手席の方を向き、そう話すと、修羅は、少し、はにかんだように笑い、夕凪に会釈した。そして、羨ましそうな表情で言った。


「ふーん、醍醐さんって、すごい人なんだね。鈴木聖からサーフボード貰えるなんて…俺なんか、買ってもらえないから、果奔(かほん)といっしょに、こうやってスケボーで、横乗りの練習してるんだ」


 修羅は、食い入るように、目の前の赤いサーフボードを眺めている。


「“カホン”といっしょに?」


挿絵(By みてみん)


 

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