醍醐です
ラジオパーソナリティーの澤田が、スマートフォンを手に取って、アプリを起動させ、通話履歴に記録されているある番号をプッシュした。数秒のタイムラグの後、呼び出し音に変わった。
「嘘だと思うなら、自分で話してみろよ」
と、笑いながら、アシスタントの小桜恵美に、手渡した。瞳は、一応、受話口を耳にあててはいるが、冗談だと信じきっているので、笑いを堪えてるようだ。
「もう、澤っちと来たら、冗談にも念が入ってるわね」
恵美は、笑いを堪えながら、相手が電話に出るのを待っている。そして、呼び出し音が5回鳴るのを聞いた。
(…ほら、いくらウケるためとはいえ、見え透いた嘘は、おもしろくもなんとも…)
受話口の向こうから、男のしゃがれた声がした。
「はい、醍…」
恵美は、少し驚いた。どうせ、澤田の友人のひとりと示し合わせて、ドッキリまがいのいたずらを仕掛けているに決まってるとは思っているが、なぜか胸は高鳴った。
「醍醐です」
恵美は、慌てた。うろたえ過ぎて、通話オフのアイコンを押してしまい、慌てて、スマートフォンを、澤田に返した。
「澤っち、誰?『醍醐です』って言った…いくらドッキリにしたって、これはやり過ぎじゃない?醍醐さんの事務所には、許可もらってるの?」
澤田は、苦笑しながら、
「だから、ご本人だと言ってるじゃ…」
と返答している、そのとき、澤田のスマートフォンの呼び出し音が鳴った。




