澤田弘
人生をダイナミックに生きる聖が、もっとも気をつけていることが、健康である。そして、健康の源である食事には、とくにこだわりがあり、自らが考案した独自のレシピを用意するほどだ。朝は、妻の智美がつくってくれる野菜と果物のスムージーを飲むだけに止める。そして、お気に入りのラジオ番組を聴きながら、店内のソファーに座り、新聞や業界誌に目を通し、情報収集するのが毎日の日課である。ラジオから、午前7時を知らせる時報とともに、ラジオパーソナリティーの元気な声が聞こえた。
「グッモーーーーーーーーーニング サムヤマタウン エボシシテイ!!おはようございます。また、きょうも始まりました“澤っちの朝食は牛丼と音楽で”の時間です。本日も、パーソナリティーの“さわっち”こと澤田弘と…」
『アシスタントの小桜恵美。提供は、牛丼の吉田屋で、お送りします』
聖は、コミカルなこのパーソナリティーとアシスタントの掛け合い漫才のような会話が大好きで、仕事が始まる前の寛ぎのひとときを、BGM代わりにして楽しんでいる。パーソナリティーの澤田が軽快にジョークを飛ばす。
「みなさん、おはようございます!!“相撲”と書いて、“相模”と読む…」
『いや、最初から“相撲”なんて書いてないって!ちゃんと“模”って書いてるでしょ?』
「えっ、そうだっけ…いいじゃないか、一文字くらい」
『よくない!!』
「…わかったよ。はい、みなさん、FM相撲…いや、ちがった。FM相模から、食と音楽の情報をお届けするこの番組が、スクープをキャッチしました…」
聖は、飲んでいたスムージを危うく噴出しそうになった。
「恵美ちゃん、今日は、いきなりビッグニュースが舞い込みましたよ。なんと、恵母子市出身の国民的歌手である醍醐健介さんが、来月の7日に、3年ぶりの新曲をリリースします。しかも、今回の新曲は、独特のメロディーで、前半をバラード、後半をロック調で構成しており、音楽史上初の試みとして、多くのアーチストも注目しているということです」
『あら、それはすごいお話しですね。でも、うちのような小さなFM局が、よく他局を出し抜いて、そんなビッグニユースを入手できましたね。どこからの情報なんですか?』
「オンエアー前に、ご本人に、お話を伺いました」
『あははは。もう冗談ばっかり!!』
聖は、地元の大スターである醍醐剣介が、新曲を出すと聞いて、笑みをこぼした。なぜなら、剣介が曲を出せば、大半の曲は大ヒットし、出身地の恵母子市も世間の注目を受け、恩恵を被ることができるからだ。




