レジェンドサーファー
恵母子市南部の海岸線を東西に走る国道33号線沿いに、サーフィン界の“レジェンド”と呼ばれる男のサーフショップがあった。鈴木聖、齢80歳にして、現役のサーファーである。その鈴木聖を世間の人々にレジェンドと言わしめたエピソードがある。それは、遡ることおよそ60年前、まだ日本国内では、駐留米国人しかやっていなかったサーフィンを、自作のベニヤ板製のボードで挑戦したという逸話だ。もちろん、当時、聖に、ボードづくりに必要な浮力値やリッター値などという計数的な知識などない。近所の材木屋に行って、骨組みに使う木材、表面に貼り付けてボディ面をつくるためのベニヤ板など、必要な材料を揃えて、見よう見まねで、完成させたのである。そして、中が空洞の“笹かまぼこ”のような形状のお手製のサーフボードで、人生初のサーフィンへの挑戦を果たしたのだ。初トライは、みごと“撃沈”してしまったが、このときの失敗以来、その悔しさから、サーフボードづくりに、本格的にのめり込むこととなる。
聖のモットーは、「健康であれば、何度だってやり直せる。時間は、有限。やる気は、無限」である。聖は、いまでこそ、全国に、その名を轟かすゴッドグループの総帥として君臨し、不動の地位を築いたが、その人生は、波乱に満ちていた。聖は、親しい者に、冗談めかしてよく話す。
「僕の人生は、サーファーだからというわけではないのでしょうが、それこそ大波小波の連続で、好調不調が、潮の満ち引きのように、寄せては返します。たまたま現在がよいだけで、いずれ、悪い状況が来るかもしれません。たいせつなことは、好調なときに、準備をしておくことなのです」




