自由奔放にふるまう
僕は、王宮で退屈な日々を過ごしていた。
どうやら王族というものは語学堪能であることを求められ、帝王学という面白くないものを家庭教師にしつけられ、社交術というものを身に付けなければならないらしかった。
せっかく、中世ファンタジーの世界に来たのに、姫の日常生活はどうやら刺激がなくてつまらないものらしかった。
でも、かわいいドレスを日替わりで着れるのはちょっといいかもしれないなんて、男らしくもない恥ずかしい満足感も得ているのも事実だった。
「明日、隣国の王子と結婚してもらう」
王様がそれを言ったのは僕がお城に戻って1週間してからだった。
「ええっ。そんな。心の準備ができていないよ」
中世のお姫様といえば政略結婚の道具。
そんな当たり前のことに僕はすっかり忘れてしまっていたのだ。
ファンタジーブックの世界にまで来てなんでそんなことしなきゃならないんだ。
僕は家出することにした。
リアル中世ではなく、ファンタジーだからこそ、都合よく、眠りの魔法で見張りの兵士を寝かせることに成功し、都合よく宙を舞い、城下町に繰り出した。
かわいいドレスは捨て、麻でできた町娘の服に僕は着替えた。
そして、僕は、街でなすがまま、奴隷商人につかまり、そして、たまたま街を歩いていたリューサスに再び助けられてしまったのだ。
「あなたに逢いたくて家出してきたんです」と言って僕はリューサスの手を握った。
リューサスは真っ赤な顔をしている。
あれ?おかしい。僕もなんだかドキドキしてきたぞ。
リューサスは魔王退治のミッションを背負っているようだった。
僕としても、姫としての政略結婚ミッションよりもそっちの方が面白いと思って、一緒に旅することにした。
ドラゴン退治、暗黒街の帝王との対決、悪魔の迷宮踏破。
僕たちに与えられたミッションの内容は多岐にわたった。
リューサスは剣を振るい、敵を倒し、僕ことアリサは魔法で彼を回復し、補助魔法でピンチを救った。
僕は、正体が友人であること男子であることを隠し続け、風使いのモンスターにわざと近寄ってはスカートをめくられるなど、わざとエッチなハプニングを起こしてはリューサスの反応を楽しんでいた。
そんなある日、ついに宿屋で壁ドンされてしまう。
「僕をたぶらかし続けるのはやめてくれないか?僕の気持ちを知っているくせに」
「いけませんわ。お父様に叱られます」
僕は騎士の前でいたいけな女の子を演じることが快感になっていた。
騎士はがばっと僕を押し倒した。
そう。これは僕が望んだこと。
いつかこんな日がくるとわかっていて、彼をたぶらかし続けたのだ。
そう。僕は悪いやつだったのだ。
彼は、しばらく目を泳がせた後、立ち去った。
うふ、うふふ。
先ほどの彼の形相を思い出して僕は心底萌え狂っていた。
そうです。
僕は女の子になって滅茶苦茶にされたい願望のある変態だったのです。