騎士様に助けられて
僕は薄暗い山奥に居た。
そして鎧を着た屈強な戦士が目の前に表れてこう言うのだ。
「姫様、あなたは大臣が権力得る上で邪魔な存在です。誠に残念ながら、ここで死んでもらいます」
たった、一言だけだが、状況は飲み込めた。
どうやら、王国内の権力闘争に巻き込まれて殺されようとしているのだ。
なんという最初からクライマックス!
ピンチ!
「待て!そうはさせまいぞ!」
遠くから声が聞こえる。
「だ、誰だ!」
「我こそは、騎士、リューサス、そこの女の子に手出しをするのはやめるんだ」
あ、このシチュエーション。
僕、ちょっとときめいちゃうかもしれない。
リューサスは颯爽と現れてばったばったと敵をなぎ倒していった。
「お、おのれ、騎士リューサスめ。覚えておれ」
捨て台詞を言って悪者っぽい人たちは去っていった。
「あ、あの。助けていただいて、ありがとうございます」
「当然のことをしたまでだ」
騎士は顔をそむけた。
少し赤くなっていた。
「俺の名前はショウヤ、あ、間違えたリューサス」
「あ……」
僕は察してしまった。目の前の騎士の正体がショウヤであることを。
「私の名前はアリサ。アリサ姫といいます」
やばい。
本名を微妙に変えた偽名を名乗ったが正体がばれたかもしれない。
僕がお姫様になってるだなんて知られたらどれだけバカにされるだろうか。
騎士の方に近づこうとして、1歩前に歩くと、僕はドレスの裾を踏んでこけてしまった。
「きゃあ!」
僕は、ショウヤの前で恥ずかしながら、おパンツを見せてしまった。
「ごめんなさい。はしたないところをお見せてしまいまして」
「い、いやいいんだ」
僕は、ショウヤ、いや騎士様の股間がもっこりしているのを見てしまった。
なんか、かわいいかもしれない。
いつも僕の一歩先を進んで僕を振り回して僕の劣等感を弄ぶショウヤ。
そんなショウヤが僕の行動でドギマギしているのを見ていると、ちょっとした優越感が僕の中で芽生えてしまった。
「姫様!」「ご無事ですか!」
遠くから兵士らしきやつらが現れて僕に跪き、ショウヤに剣を向けた。
「おのれ!不審者め!お前が姫様を!」
「おやめなさい!その方は大臣の魔の手から私の命を救ってくれた方です。礼をつくしなさい」
「そうとは知らずにとんだご無礼を!」
こうして、ショウヤことリューサスは王国で、ひととおりもてなしを受けると去っていった。