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お姫様になった僕

かつて、テーブルトークゲームやそこから派生したゲームブックなどがたくさん作られた20世紀。


それがコンピュータという新時代の技術と融合しあいRPGという新ジャンルのゲームが生まれた。


その一方で、魔法によって、ファンタジーの世界を構築しようという試みによって生まれた伝説の本があった。


それが、『マジカルファンタジーブック』だ。


科学万能が信じられてい現代において、魔法の力など信じるものはおらず、その存在はひそかに都市伝説として語り継がれているのみであった。


ある日、僕は、友達のショウヤから珍しいものを手に入れたから見に来てほしいと呼び出された。


ショウヤは、運動神経もよく勉強もできて女子にモテるクラスの人気者。


それに比べて僕、アリノブは、勉強こそ並みだが、チビで、運動音痴。


ショウヤのようにはなれない自分を情けなく思っていた。


「他のみんなはまだ来てないみたいだな。まあいいや、アリノブに先にいいもの見せてやるよ。じゃーん。ファンタジーブック」


「ファンタジーブックって、ネットで都市伝説になっているあれ!?そんなもの本当にあるの?」


「あるからこうして呼んだんじゃないか。魔法の力でこの本の世界の中に入って大冒険できるらしいぜ」


「どうやって?」


「こうやって本を開いて、ここに書いてある呪文を唱えると入れるらしいぜ」


「えっと、『マジカルマジカル、不思議な世界に入って大冒険しよう』」


本が蛍光灯のように光りだした。


「ばか!いきなり読むやつがあるか!みんながそろってからだな」


風が舞い、僕たちの体は小さくなり、本の中に吸い込まれた。


「おーい、ショウヤ、遊びに来てやったぜ。あれ?いない?部屋にいるとおばさんが言ってたのにどこに行ったんだ?」


遠くから友達の声が聞こえつつ、僕の目の前が真っ暗になった。


遠くの方に光が灯されたのが目に入るのでそちらに向かうと声が聞こえた。


「よく来たな、冒険者よ。職業を選ばせてやろう」


「だ、だれ?なにごと?」


目の前に、文字が表示された。


騎士、盗賊、魔法使い、賢者、忍者、武道家、僧侶、王子、姫


「これは、ファンタジー定番の職業選び?」


「そうだ、好きな職業を選ばせてやろう。あ、騎士はすでに先約がいるから別の職業でな」


僕は悩んだ。


悩んだ結果、選んだのは…


「お姫様。なってみたいかも」


「男の子なのにお姫様になりたいと?」


「うう…。ごめんなさい。恥ずかしいのでやっぱり別の職業を」


「いいですとも」


「へ?」


「あなたの心の奥底にある秘めたる願望を引き出すのがこのファンタジーブックの役目。あなたのお望みの通りに叶えてしんぜよう」


僕の胸が輝きだし、白いレースのフリフリドレスが体を包んだ。


ブロンドの髪がわさわさ生えてきて、僕の耳や肩にかぶった。


自分の顔は見れないが、どうやらお姫様の体になってしまったらしい。


手でお股を確認すると男の体に生えているはずのものがなくなっていた。

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