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緑の村

エルフの村はそこかしこに自然が転がっており、とても住み心地の良い場所である。中でも存在感を放つのが中心にあるでかい木であろう。その木はリンギルの木と呼ばれており、噂では始まりのエルフであるオーシスが見つけた時から今まで、何事もなく聳え立っているという。眉唾ものだが、カケルにそのことを教えたエルフは本気で信じているようだ。


「本当だって!あのリンギルの木には森の神様から自己再生の祝福がかけられているんだよ!外界ではゴーレムの自己修復機能を解明して人間に施すという禁術が発明されたみたいだけど、あのリンギルの木は自己修復じゃなくて自己再生!自然って言うのはそうやって再生していくものなんだよ!」

「そういうものなのかなぁ・・・」


余所者のカケルに親切に説明してくれたエルフの言葉を受けながら、カケルは未だ半信半疑である。だがすぐに一つのカードを思い出す。「傷癒し」という災厄カードだ。


〇傷癒し[アイテム] コストなし ☆6

効果・貴方のプレイヤー、陣地、モンスター全ては【自己再生】を獲得する。

ー自然の理ー


ディープワールドカードゲームにおいて、【自己再生】は毎ターンHPを2回復するという効果だ。単純な効果だが、それを持っているカード自体は少ない。それに単純故に強い。長期戦になればなるほど強いそのカードは、初代世界大会優勝者が獲得したカードである。地球の事を思い出して少し懐かしがるカケルの心の心境など知らず、おしゃべりなエルフは絶えず話し続ける。


「まぁ人間なら自己再生なんて聞いてもいまいちピンと来ないのも無理はないか!でも人間なのにピーギァに好かれているって珍しいよね!どうやったらそんなに好かれるの!?」

「それは傷を負っていたピーギァに自然の治癒を使っただけで、特にそれ以外は何もしていないんだ。だから俺にもよく分からない。あとマシーンゴーレムにも敵対されなかったな。代わりに森狼やルフには襲われたけど」

「ピーギァもマシーンゴーレムも比較的賢いモンスターだからね、敵対しなければ自ら襲ってくることは少ないよ!あと色の日の影響も大きいかもね!」

「色の日?赤の日なら赤のスペルの威力が上がるっていう、あの?それが何になるんだ?」

「実は色の日はスペルの威力に影響を与えるだけじゃないんだよ!たとえば最近は緑の日が減ってきて久しぶりの青の日だけど、今日はリザードマンの機嫌がいいんじゃないかな?水を愛するリザードマンにとって青の日は過ごしやすいんだよ!」

「へぇ、モンスターの心にも変化を与えるのか・・・」


おしゃべりエルフの情報を聞いて思わずカケルは感嘆の声を上げる。やはり長生きしている分、エルフ達は人間が知らない事さえも知っている。それでリザードマンがいきなり口を開いたのかとカケルは納得する。そんな風にエルフの村での日々は流れるように、だが着実にカケルにとって意義のあるものとして過ぎていった。最初はリザードマンとウッドゴーレムに命名する踏ん切りがつかなかったカケルも、次第に彼らと触れ合い、彼らの本気さを知っていく。


「私はただの戦士。王都グーンラキアでの市兵衛という侍の様な生きざまが似合います」


リザードマンはそう言い、ウッドゴーレム両の腕を高く掲げてやる気を見せる。ウッドゴーレムとリザードマンにとって、王都グーンラキアでの暮らしは彼らに大きな影響を与えたようだ。王都の住民たちは亜人であるリザードマンと明確なモンスターであるウッドゴーレムを見て、臆することなく接してきた。彼らは純粋に王都の街並みを守りたいと願ったのだ。そしてそんな彼らの願いを聞いてしまったら、カケルにはそれを無下にするという選択肢は残されていなかった。


「・・・分かった。命名の儀は今夜やる」


そう言ってカケルは覚悟を決める。夜を待つ間、カケルはやるべきことをやる。投影装置を見ると、そこにはカケルの陣地が映っている。イート国との戦争に備えて整備された陣地がそこには映っている。

カケルの右斜め前と左斜め前にはそれぞれ獣の通り道がプレイされており、カケルの左右のスペースにはそれぞれ緑の地と機械工場がプレイされている。因みに陣地は遠くには設置できないので、全ての陣地は未知の森の中にある。幸いにも未知の森やユタの村がある方角の先にイート国があるので、イート国が攻めてきたら未知の森付近でカケルのモンスター達が迎撃できる。


〇緑の地[陣地] 体力10 スペル緑 ☆1

ー緑は再生ー


〇機械工場[陣地] 体力10 ☆2

効果・貴方のモンスターは墓地にはいかずこの陣地の下にストックされる。この陣地が破壊されるとき、下にたまったストック3枚につきカードを1枚引く

ーここは死の工場だー


〇獣の通り道[陣地] 体力1 ☆1

効果・この陣地がモンスターから受けるダメージは0になる

―小さな道に誘われ、大きな夢を見る―


さらにそれぞれの陣地にはモンスターが配置されている。獣の通り道には不動のガーゴイルとキラービー、赤の陣地にゴブリン、スライム、機械工場にマイコニドが置かれている。


〇不動のガーゴイル[モンスター] コスト1 1/1 ☆1

効果・死亡時、プレイヤーの最大HPー1することで不動のガーゴイルを本陣に召喚する

―何かの守り人―


〇キラービー[モンスター] コスト1 1/1 ☆1

効果・死亡時、相手のデッキの一番上のカードを墓地に送る

―キラービーに挑むならこちらもケガをする覚悟を決めろ―


〇ゴブリン[モンスター] コスト2 3/2 ☆1

効果・陣地が破壊されるたびにカードを1枚引く

ーガラクタも奴らにとっては宝物だー


〇スライム[モンスター] コスト3 2/4 スペル青 ☆1

ー・・・ー


〇マイコニド[モンスター] コスト2 2/3 ☆2

効果・召喚時、同じ場所にマイコニドを1体召喚する

ー菌は増殖するー


レア度が低いカードばかりで随分と心もとないが、それでも今のカケルにとっては立派な戦力だ。それに数はある。それに未知の森には独自にモンスターが数多く徘徊している。加えてこれらのモンスターを倒しながら未知の森を突破するのは難しいはずだ。ひとまず防御の面に関してはこれで十分だと言える。手札は振るわないが。


〇復元装置[アイテム] コスト1 ☆1

効果・貴方の使ったアイテム一つを選択する。両プレイヤーはそのアイテムの効果をすぐに使用する

ーよくある模倣品だー


〇怒りの石[アイテム] コスト1 ☆2

効果・プレイヤー、陣地、モンスターいずれか1つの最大HPを-1して、その後1ダメージ

ーガナスの村は破滅の運命ー


〇誰かの隠れ家[陣地] 体力7 ☆5

効果・プレイ時、カードを5枚引く

―今は忘れ去られた誰かの家―


〇大障壁[スペル] コスト緑・赤 ☆2

効果・1つの陣地を選択する。その陣地にモンスターは進軍不可

ー突如現れたその壁は生き物を拒んだー


アイテムとスペルはどれも使い道が難しく、唯一の☆5カードはエラー表示が出てプレイできない。手札は振るわないがカケルの現在のHPは22、色の日の影響でスペルの効果は安定していないが、順調にHPは増えている。バルコたち冒険者が友軍を集めれば、十分イート国にも太刀打ちできる状況となっている。後はエルフを味方につけられるか、それ次第だろう。この戦争、全力で挑めば勝機は必ず見えてくる。そんなことを考えていると夜がやってくる。日が沈んでもエルフの村は変わらず綺麗なままだ。月明かりがリンギルの木を照らしている。透き通るほどの静寂がこの緑の村を我が物顔で闊歩する。そんな幻想的なリンギルの木の前にリザードマンとウッドゴーレム、それにカケルが立っている。周りはエルフ達が取り囲んでいる中、カケルが口を開く。


「・・・命名が済んだらもう後戻りはできない。そうなれば後は俺が死ぬか、君たちが死ぬか、どちらかだ。君たちはその覚悟が出来ているか?」

「無論」


リザードマンが即答し、ウッドゴーレムも頷いている。カケルは☆が低いモンスターの弱さを知っている。基本的なステータスの低さもさることながら、何より低レアのカードは生き延びたいという強い意志がない。オフィーリアなどは搦手を使いながら盗賊を返り討ちにしたが、低レアのカードたちはどんな状況でも突き進むことしか知らない。だからこそカケルは自らの召喚したモンスターに命令する。


「俺からの命令は一つだ。生き延びてくれ。俺は君たちと少しでも長く楽しい時間を共有したい。それだけは忘れないでくれ。これからもよろしく、ギークとガイア」


カケルはリザードマンにギークという名前を、ウッドゴーレムにガイアという名前を授ける。名前を授かったモンスター達はカケルの命令を噛み締めるように感慨深い顔をする。リザードマンとウッドゴーレムが命名の儀を通過したことにより、エルフ達は完全にカケルに心を許す。


「改めて歓迎しよう、客人たちよ」


そういうオーシスの言葉にカケル達は笑みを浮かべる。その日はもう遅いので解散という流れになったが、思いがけずエルフ達からの反応がいいことにカケルは喜びを隠しきれない。イート国の悪行を話せばエルフ達も必ず力になってくれるはずだという確信がカケルにはある。何故ならディープワールドカードゲームの期間限定イベントで、カケルはこの状況を知っているからだ。イート国という世界征服を目論む国が、王都グーンラキアを攻めた際に未知の森を破壊しながら進軍してくる。王都グーンラキアはその前に魔王軍による攻撃を受けた歴史があり、今回は主人公がそんな王都グーンラキアを救うためにエルフに協力を求めイート国に抗うというシナリオだった。


(でも俺みたいな召喚者がいるんだ。ディープワールドカードゲームのシナリオ通りに進むとは思えない。やれることはすべてやる)


人知れず決心しながらカケルは眠りにつく。カケルと強い絆で結ばれたガイアとギークがくっついて、中々寝付けなかったのはご愛嬌という奴だ。

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