誕生
〇〇月☓☓日、私は産まれた。
異世界ケイダリスに、女神様から拝命された使命、報酬として頂いたスキル【危険感知】【結界】【治癒】と、前世の記憶を持って。
ただし、使命のことは覚えていない。
女神様いわく、使命に縛られた人生を送ってほしくないから、とのこと。
その代わりに、使命を達成しやすいように、目標の近くに産まれる事になったらしい。
女神様からの情報によると、私が産まれる場所は、離島に建てられた国に属する村の一家族。
島の外側は、複雑な海流と、凶暴な海の魔物が支配している為、めったに人が来ない。
島内は、植物の楽園、と言っていい状態。
多種多様な植物が、大量に生息していて、おまけに、育成も早い。
そして、食糧に困らないせいか、人も魔物も、温厚なのが多い。
肉類は、間引きか、寿命、(突然変異の)気性が荒い魔物を討伐して、食べるようだ。
この、平和そのものといった場所に産まれる事ができた私は、人生勝ち組だと思う。 覚えていない使命があるけど。
と、産まれる前は思っていた。
実際に産まれてみると、考えが変わった。
なんか、両親が太い。
産まれて直ぐは、目の焦点が合ってないせいで、ブレて見えるだけだと思っていた。 思いたかった。
でも、数日後に運ばれた場所で見た、村人の殆どが、太かったので、考えが変わった。
ここでは、太いのが標準。
元日本人の私には、信じられない事実。
しかし、希望はある。
太っていない村人は、逆に、筋骨隆々だった。
私も、あそこまでとは言わないけど、目指そう。
絶対に、太らない。
私が運ばれた場所は、精巧に作られた竜の石像の前だった。
周りの大人の話を聴くと、島を守護してくださっている竜(島民は、略して【守護竜様】【マモリ竜様】【竜神様】と呼ぶらしい)を、象どったものらしい。
何故、ここに運ばれたかというと、無事に産まれた事への謝辞と、お披露目、らしい。
前世の知識を持つ私からしたら、そんなことをしても意味が無いと思っていたが、村長が言い終わると、突然、石像の周りに植物が生えた!!
それも、よく見ると、ほうれん草/柑橘類/大豆/小松菜ぽい野菜を中心とした、緑黄色野菜が大量に。
全部、産後の肥立ちに取るといいと言われている植物ばかりだ。
さすがに、肉類と海洋類は無理みたいだったが、それでも凄い奇跡だ。
両親を筆頭に、村人全員が拝み倒している。
私も、心の中で御礼を言った。