じわじわと、侵食。
「んん。」
「起きたか。」
「!!申し訳ありません。」
「謝らなくていい。 儂のためにあれだけ準備をしてくれて、今も儂のために頑張ってくれているのだからな。」
「はい。ありがとうございます。」
「それで、今回の御礼だが、」
「もう、十分過ぎるほどに、頂きました。」
「すでに渡した。」
「はい?」
周りを見渡しても、何も無い。
「渡したのは、加護じゃ。」
「加護、ですか?」
「儂の、神としての権能を受けやすくなる。 一部使うことが出来る。
他の神からは、儂のお気に入りと、一目で判る。
そんなものじゃ。」
(そして、じわじわと、儂との親和性を上げていく。
儂が長時間、触れられるように。)
「………そのようなものが、あったのですね。」
「儂も、今まで使ったことがなかったから、忘れておった。
それと、儂の加護を貰ったという証を、目に見える形で表すことができるみたいじゃな。」
「どのようなものですか?」
「儂の権能を、判り易い図案にした、入れ墨みたいな感じじゃな。」
「………痛くはないのですか?」
「判らん。」
「………」
(出来れば、付けてほしいのじゃがな。)
「決めました。してください。」
「!!よいのか。」
「はい。」
「わかった。」
「因みに、どこに付ける?」
「どこでもいいのですか?
物語だと、胸(心臓付近)/背中/額/手の甲ですよね?」
「好きなところに、付けられそうじゃぞ。」
「でしたら………? そういえば、どのような図案になるのですか?」
「儂の場合だと、まず〈龍〉じゃな。 それと、
守護と、儂自身の丈夫さを示す〈何か〉、
豊かな大地を示す〈植物〉、
負のエネルギーを示す〈亡者〉、
膨大な知識を蓄積していることから〈辞書〉を、組み合わせたものになるじゃろうな。
初めてだから、どのようなものになるか、想像がつかんが、多過ぎじゃな。」
「5つ。 多いのですか?」
「そうじゃな。
普通は、進化の過程で特化していくうえに、分岐したとしても、神となった時点で得意分野に絞られるから、1つ2つ、多くても3つじゃろうな。」
「そうですか。」
「儂の場合、本来なら【守護神龍】に、〈植物〉〈辞書〉〈亡者〉も含まれるのじゃが。
現状、土地は無制限に肥えていき、負のエネルギーも世界中から集まっておるから、〈植物〉と〈亡者〉は、必ず証に出てくる。」
「ただ、〈辞書〉だけが、どうなるか判らん。
知識をひけらかしたことも無く、知識を集めていることも知られてないと思うから、証に出ることはないと思う。
じゃが、長寿=知識を蓄えていると思われていると、出てくるかもしれんのぅ。」
「そうですか。
………でしたら、額は狭く、胸だと歪んでしまいますね。
背中ですが、見せるたびに服を脱ぐのはちょっと気まずいので、」
「手の甲、か。」
「はい。そちらで御願いします。」
「解った。」
神龍様の手が、私の左手を触る。
「(? 親和性があるからか?)終わった。」
「速。 っと、すいません。」
「見てみろ。」
「はい。」
仰られた通り、〈龍〉〈植物〉〈亡者〉〈辞書〉と〈何か〉が、証として現れた。
図案は、植物で描かれた縁取りが、盾のようになっている。
その中に、辞書を持った龍が描かれ、龍に亡者が群がっている。
………亡国になっても護り続けている、不死龍。
亡者達の守護龍、みたい。
(彼女の手の甲に、儂の証が描かれた。
それだけ。ただそれだけなのに、この高揚感は何だ。
彼女を抱きしめたい。 いや。 この昂りに身を任せて、衝動的になりたい。 例え、その後、後悔してもかまわない。)
彼女に手を伸ばしかけて、
([反対の手を握りしめる。 掌に爪を食い込ませる。]
じゃが、今、それをするわけにはいかない。
何より、彼女を失いたくない。
ここは我慢。 我慢するのじゃ。
………それにしても、儂がこんなことを思うなんて、夢にも思わなかった。)
「[息を吐いて]これで貴女は、肩書だけでなく、本当の儂の使徒となった。 おめでとう。」
「有難う御座います。」
「まあ、実質的には、少し、儂の権能の効果を受けやすくなるぐらいじゃがな。 他人には判らんじゃろ。」
「それでも、嬉しいです。」
(彼女の何気ない言葉なのに、こちらまで嬉しくなる。 これが独占欲、か?)
「………あの、権能の効果を受けやすくなるとは、どういったものですか?」
「まず、【儂の持つ耐性を、効果を落として、貴女も持つ】。」
「えっ? [小声]ステータス。 うわ!! 本当だ。 チートみたい。」
「次に、これまでのように、【儂が食べた物の影響を、受けやすくなる】。」
「………? それは、これまでと何が違うのですか?」
「全然違う。」
「この島の国民は、儂から漏れ出る魔力に何世代もかけて適応した結果、影響を受けているだけじゃ。」
「対して貴女は、儂自ら適応できるようにしている。
つまり、影響力が天と地ほども有る。 ということじゃ。」
「無礼な事を言ってしまい、申し訳ありませんでした。」
「構わん。 これも、イレギュラーな事なのは、解っている。」
「そもそも、多大な力を持つ神の住む地に、人が住む事がおかしいのじゃ。
そのせいで、土地に影響を与える力が、人間にも及ぼしてしまっただけじゃ。
混同してしまっても、仕方が無い。」
「………そう仰られますと、まるで、人が泥棒のようですね。」
「実質、変わらん。
変わらんが、儂から溢れ出るエネルギーは膨大じゃからな。 盗まれても変化が無い。
むしろ、盗まれても溢れとるしのぅ。」
「話を戻すが、それ以外の効果は、
【植物に魔力を流すことにより、速く育てることが出来る】。
【知識を蓄えやすくなる】。
【負のエネルギーに耐性を得る】。」
「どれも、凄まじいですね。」
「どれも、加護程度じゃ、少し影響を受けるだけじゃ。 そう、気構えなくてもよい。」
(そして、徐々に親和性を上げて、加護の位を上げていく。 儂がずっと触れられるように。)
ドロドロとした思いを書くのは、緊張しました。




