食事会②-③ 包
「神龍様。 次が最後の料理となります。」
「もう、終わりか。」
………!! ああ。 なに、あの表情。 悲しそうな表情。 シュンとした表情。 愛犬が好物を食べきって、無くなった時にする表情。
メッッッチャ、キュンキュンする。 これが母性本能?
今すぐ抱きしめたい。 頭を私の胸に押し付けて、抱きしめてあげたい。
[食事会の【緊張】+海へ行って帰っての【疲れ】+魚の速捌きの【疲れ】による、ハイテンション中]
「[小声]んん。 神龍様。 次の料理は、神龍様しか食べることのできない、特別な料理となります。」
「ほう。」
………ああ、駄目です駄目です。 そんな嬉しそうな表情をしてわ。 目がキラキラしてますわー。 夜空のようですわー。
「説明させていただきますと、熱すぎて、普通の人だと火傷をしてしまう、料理となります。」
「それは確かに、儂専用の料理だな。」
「はい。」
「お待たせしました。」
「これは………、何?」
「前世の、様々な包料理を再現させていただきました?」(パイ包み焼き/饅頭(中国の)、のイメージです。)
「包料理?」
「とりあえず、こちらを、このままご賞味下さい。 ただし、一口でお願いします。」
「? ふむ。 おお!!」
[ニヤ]
「口の中に香りが、溢れてくる。 これは果物、オレンジか。」
「他の物も、お試しください。」
「別の果物に、香草。 野菜。 キノコ類。 肉類。」
「お待たせしました。 海産物もご用意させていただきました。」
「はは。 確かにこれは、一口で食べないと勿体ない料理だ。」
「喜んで頂けて、何よりです。」
「神龍様。 最後にこちらの包料理を、ご賞味ください。」
「!! 様々な香りがする。 これは、」
「前世にて、カリーと呼ばれる、薬草類を乾燥させて混ぜて、水で溶き、野菜や肉を入れて煮込み、トロミをつけた料理が有ります。」
「今回は、各種肉類の挽肉と、刻み野菜/キノコ類/果物類を炒めた物に、薬草類を乾燥させて混ぜた物を入れ、スープで溶いて煮込み、トロミをつけた物を、ご用意させて頂きました。」(キーマカレー、みたいな物だと思ってください。)
「普通の人なら、混ざり過ぎて、それぞれの風味を判別ができないと思いますが、神龍様なら問題ないと思いますので、ご用意させていただきました。」
「………これ、味はどうなっている?」
「豚と牛と脂に、甘味と酸味と苦味と辛味、薬草とキノコの香りと、野菜のキノコの食感でしょうか?」
「それもまた、味わってみたいな。」
「味が判別できるようになりましたら、必ず、お作りします。」
「頼んだ。」
「今回の食事会も楽しめた。 有難う。」
「恐縮です。」
「今回のお礼だが、何がいい?」
「あの、毎回お礼を頂けるのは、心苦しいです。」
「そうなのか?
それは、申し訳ないことをした。」
「いえ。」
「じゃがな、感謝の気持ちを示したいしな。」
「その御気持ちだけで、十分です。」
「ふむ………今回は、貴女の欲しい物を報酬にするのはどうじゃ? それなら、心苦しくないじゃろ。」
「わがままを聞いていただきまして、ありがとうございます。」
「でしたら、神龍様の御体を、触りたく思います。」
「………何故?」
「前世では、魔法/魔物/ドラゴン等は、空想の世界の産物でしたので、触ってみたいと思いました。」
「そんなことでいいのか………。」
「………いいだろう。」
「ありがとうございます。」
「ただし、」
「?」
「儂の、神としての権能の中には、呪い/負の感情等の負のエネルギーが有る。」
「首飾りがあるとはいえ、万が一があるかもしれない。」
「一瞬だけ触れるんなら、問題は無いと思うが、そうじゃないんじゃろ?」
「はい。」
「何が起こるか、わからないんじゃぞ。 それでも、触るか?」
「はい。」
「即答か。 物好きだな、貴女は。」
「………解った。 貴女の好きにすればいい。」
「ありがとうございます。」
「それで、儂はどうすればいい?」
「そのまま(龍形態)でいてくだされば、大丈夫です。」
「解った。」
ゆっくりと、神龍様に近づいていく。
触れる距離まで近づくと、気付いた。
微かに、震えてる。 表情は、変わっていないのに。
もしかしたら、かなり怖がられているのかもしれない。
………そういえば、何時ぶりなのでしょう? 誰かに触られるのわ。
ゆっくり。 ゆっくり。 手を伸ばしていく。
決して、速度を上げない。 これ以上、怖がらせないために。
[ピタ] [ビクッ]
「大丈夫ですよ。 痛みも何も、感じてはいません。」
「診るぞ。」
「はい。 どうぞ。」
「………問題は、無いようじゃな。」
「はい。」
「よかった。」
「はい。」
「神龍様は、」
「?」
「私の、手の感触を、感じますか?」
「………ああ。」
「温度は?」
「感じる。」
「温かいですか?」
「………そうじゃな。 温かい。」
「良かったです。 [ニコ]」
「!!………ふっ、ありがとう。」
神龍様の御体を、ゆっくりと撫でてゆく。
全身を、手の届く範囲で。
龍鱗。 どんな攻撃も効かなそうな龍鱗。
龍爪。 鋭く。 触れただけで手が斬れそうな龍爪。
力強い筋肉。 太い尻尾。
凄い。 凄いとしか言えない生物。 前世ではありえない生物。
そんな神龍様を殺そうとしてくる、この世界の人間の思考は、わけがわからない。
………そういえば、角はどうなっているのだろう?
「神龍様。」
「! 何じゃ?」
「人の姿になっていただけませんか?」
「………まあ、鱗なんぞ、触っていても面白くないじゃろうからな。 当然じゃな。」
「いえ、気になることがありましたので、その確認のためです。」
「? まあ、いいじゃろ。」
「それで、気になることとは?」
「失礼します。」
龍角を触っていく。
「?」
「前世にて、角とは頭蓋骨から直接生えていることから、角に衝撃を与えて揺らせば、脳も揺らすことができるのでは、という発想がありまして、」
「怖いことを考えるな。 貴女の居た国わ。
まあ、気をつけておこう。」
「はい。」
神龍様が私を、じっと見てくる。
不安そうな、でも試してみたい、というような表情で。
私はじっと見返す。 顔を、目を逸らさない。 絶対に。
こういう表情をする人は、勇気を出そうとしている時だ。
この機を逃したら、相手は二度と、勇気を出さない可能性がある。
たから、逸らさない。 決して。
しばらくして、意を決しされたのか、
「抱きしめてもいいか?」
「[ニコ]勿論です。」
[両腕を広げて、ハグ待ちをするかのように]
「どうぞ。」
「ああ。」
[ギュ]
「もっと強くしても、大丈夫ですよ。」
「解った。」 [ギュウウ]
「いかがですか?」
「………温かい。 それにこれは、心音か? 鼓動が心地よいな。」
照れくさい。
けど、神龍様の生い立ちを思うと、なんとも言えない気持ちになる。
だから、
「!!」
抱きしめ返す。
強く。 強く。 抱きしめる。
私の存在を、示すように。
ここに、貴方の側に、存在していることを、示すように。
[ギュウウウウ]
強く、抱きしめる。




