神龍 生い立ち
「【被虐】の名を冠する魔物を、知っておるか?」
「………たしか、拷問並みのあらゆる痛みを、長期間受け続けると進化する、珍しい魔物です。」
「正解じゃ。」
「儂は、禁術に耐え続けた結果、次はそれに進化した。」
「まさか、記憶の追体験と呪いで進化するとは、夢にも思わんかった。」
「………神竜様が禁術を受けたのは、話の流れから、幼少の頃だと思われます。
その頃から、生きることを諦めなかったのは、尊敬します。」
「ありがとう。」
「じゃがな、竜からすれば、嫌厭する存在でな。」
「? 何故ですか?」
「敵を殺せて当たり前、ダメージを殆受けないのが当たり前。 それが竜という存在じゃ。」
「なのに、長期間ダメージを受けないと進化できない種族に進化するのは、不名誉に当たるらしい。」
「神竜様が望んで、そんな状態になったわけではない、被害者なのに、理不尽すぎませんか?」
「ふふ。 ありがとう。 [ナテナデナデ]
貴女の言うとおりだが、固定観念を覆すのは、並大抵の事ではないからな。」
「禁術のせいで遠ざけられていたのが、爪弾きになって、自由勝手に過ごせたから、別に良かったけどな。」
「それから、成竜に成るまで、人間の側で禁術を解除する勉強をしたんじゃ。」
「と言っても、勝手に盗み見てたんじゃがな。」
「結果はこのとおり、解除は出来なかったが、技術系統の中の最高峰、【賢】の名を冠する【賢竜】に、進化することができた。」
「魔術/医術/調合/錬金術/体術/策術などの、あらゆる術に精通しているといわれている、魔物と言ったらいいのか判らない存在のことですね。」
「そうだ。」
「他の竜族の方の、神竜様に対する見識は、」
「変わらなかった。」
「だから、儂は旅に出た。」
「あちこちを見て回り数百年、ふと、気付いたことがあった。」
「山/大森林/湖/海などの決められた範囲内では、そこを支配している魔物が、範囲内の生き物から零れ出ている生命エネルギーで、自然環境を整理しておったのじゃ。 小さな世界のようじゃった。」
「その生命エネルギーが、負のエネルギーと似て非なる、真逆のエネルギーじゃったので、習得しようとした。」
「生命エネルギーを増やすために、魔術で半竜半人となり、体術を極めて武術へと昇華させたり、魔術と併用できるようにしたり、」
「山/大森林/湖/海などで、何十年も瞑想して、自身の存在が強大過ぎて、そこに住む生物の害になっていることに気づいて、存在を消す方法を探して取得して、」
「ついでに、医術で何十年も直接命を救って、」
「又、山/大森林/湖/海などで、何年も、存在を消して瞑想して、」
「なんとか、生命エネルギーを感知できるようになって、操れるように修行して、」
「【自然】と冠する、山/大森林/湖/海などの範囲、小さな世界を領域とする、その世界の管理者、調整者。 主となる魔物へと、進化できた。」
「おめでとうございます。」
「じゃが、禁術を解くことも、負のエネルギーを打ち消すことも、出来なかった。」
「絶望した。 打つ手が何も思いつかなくて、絶望した。」
「種族名が【竜】から【龍】に変わった以外は、何も、変わらなかった。」
(っえ、龍?)
「死のうと思った。」
「じゃが、【被虐竜】の特性を得たせいで、何をしても、ダメージを追わなくなったうえに、耐性が出来るようになった。」
「だから、この島に来た。」
「昔のこの島は、荒れ果てた不毛の地で、何もなかった。」
「朽ち果てるつもりで、この場所で寝てた。」
「そうしたら、予想外の事がおこった。」
「【自然】を冠する魔物は、居るだけで、領域を調整する能力が有る。」
「儂は常時、周囲に漂う負のエネルギーを吸収し続けている。」
「寝ている間、余っている負のエネルギーを、ただのエネルギーに変え、領域内へと流して、調整していた。」
「この島に苔すらなかったから、意味が無かったけどな。」
「そうして何十年、何百年経ったか判らないが、又、進化した。」
「【怠惰】の名を冠する、自身の力、能力、エネルギー等を、他者に譲渡して、自身は何もせずに、他者に代わりをしてもらう存在。」
「身の回りを他人に任せ、生きる努力も他人任せ。 何もかも他人任せで、本人は動きもしない。
他者がいないと、衰弱死するような存在。」
「まあ、儂は膨大な負のエネルギーのおかげで、死ぬに死ねなかったけど。」
「又、時が流れて、ここに人間が来た。」
「この島を、流刑地に使うようになったらしい。」
「そこから先は、王城にあった、建国記で読みました。」
「なら、概要は知っているか。」
「起きた時の話をするが、あの時は驚いた。」
「周りが植物で生い茂げ、森の中のようになっていた。 側には大木まで生えていた。」
「この樹の事ですね。」
「そうじゃ。」
「状況確認のために飛ぶと、森の横に街が有り、人が住んでいた。」
「その人間達が、儂の事に気付くと、一斉に、拝跪してきおった。」
「意味が解らんかった。」
「なので、事情を知ろうと、偉い人が住む場所、一番大きい建物に向かうと、死にかけの老人が出てきおった。」
「そして、儂に、この国の守り神をしてほしいと、言ってきた。」
【幼竜】⇒[特殊進化]⇒【溜呪竜】⇒[特殊進化]⇒【被虐竜】⇒[成竜化]⇒【賢竜】⇒【自然龍】⇒【怠惰龍】




