食事会
一週間後、待ちに待った日が来た。
この、なんの変化も無い毎日に、刺激を与えてくれる日が。
あまりに嬉しすぎて、竜神様の側(顔側)で、起きられるのを御待ちしてしまった。
「………おはよう。」
「お早う御座います、守護竜神様。」
「……なんだか、楽しそうだな。」
「はい。 今日という日が来ることを、毎日、楽しみにしておりました。」
「そうか、儂も楽しみにしていたよ。」 ニカッ
………出来れば、人間形態で聞きたかった。
「それと、」
「はい?」
「儂は、竜神ではなく、【神龍】じゃ。」
「申し訳ありません。」
「よい。 儂の国の民、全てが勘違いしていることだから、間違えるのは、仕方がない。」
「今直ぐ国王様に連絡を入れ、訂正するように、国民全てに知らしめるようにします。」
「かまわん。 これまでにも、何度か直そうとしたが、変わらなかった。」
「申し訳、ありません。」
「そもそも、違いを理解してないのが、悪い。」
「………ちなみに、その違いを、教えていただけますでしょうか?」
「………いいだろう。」
「【龍神】は、リュウ(龍/竜)達の神という意味。
【神龍】は、神の前に〇〇が付く。 〇〇に属する龍を、意味する。」
「神にとって、名前の詐称は、重罪であり、諸刃の剣である。」
「神は、信仰や畏れを糧にする。
ゆえに、名が違うと、その糧が手に入らずに、」
「ゴク。」
「消滅する。」
「ーーーーー」
「申し訳、ありませんでした。[土下座]」
「知らなかったとはいえ、貴方様に罪を犯させてしまい、ましてや、糧を奪ってしまい、申し訳ありませんでした。」
「私のような、ちっぽけな存在では、全然足りませんが、心から、謝罪いたします。」
「申し訳、ありませんでした。」
「………誠意は受け取った。」
「儂は、特殊な【神龍】じゃから、糧は他にある。」
「司る属性が特殊じゃから、他の神も、文句を言ってこれん。 そもそも、近寄ってこないしな。
近寄れるのは、最高神のみじゃ。」
「その最高神すらも、儂を罰すればどうなるか、予想がついておるから、罰せられん。」
「じゃから、気にしとらん。」
「………はい。 かしこまりました。」
(後で、緊急連絡をいれとこう。)
「それじゃあ、家の中に入ろうか。」
「お待ち下さい。」
「?」
「本日の食事は、外でやりたいと思います。」
「何故?」
「理由の1つは、自然を感じながら、食べていただきたいからです。」
「もう1つの理由は、料理の工程上、どうしても煙が大量に出ますので、外の方がいいかと思います。」
「解った。」
スープを、家の中の魔導具で温め、並行して、神竜様の前方で、石を錬金術で整形したバーベキュー台に、網を置き、熾した炭を配置して、肉を焼く。
「御待たせしました。 スープ(大皿)になります。」
「うむ、前より野菜と薬草の種類が増えている。
………それ以外にも、何か入っているな。」
「はい。 前より格別に良くなっているのは保証しますので、御賞味ください。」
「それほどに、自身があるのか。 どれ。」
「!!これは、」
[ニヤ]
「前のスープが、様々な植物の生い茂る世界だとしたら、このスープは、世界に柱が立った、芯が出来たと言うべきか。」
「その原因となった、この、よく解らない物、覚えがあるが、一体………」
「鳥系魔物の骨と、捌いた時に出た切れ端からスープを作り、野菜スープと混ぜました。」
「動物から作ったスープか!! それだけで、こんなに違うのか。」
「言うだけのことはある、素晴らしいスープだった。」
「有難う御座います。」
「お代わりは、あるか?」
「はい。 直ぐに用意いたします」
「神竜様、一息ついたと思われますので、御食事の説明をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。」
「本日の御食事のテーマは、食感です。」
「最初の料理は、一つの生物から取れる内臓を分別して、焼きます。」
「………それだけで、儂を満足させると?」
「はい。」
「………解った、期待しよう。」
「御待たせしました。 【鶏の内臓の網焼き】です。
どうぞ、お召し上がりください。」
「………部位ごとに食感が違うなんて思わなかった。
丸齧りでは知りえなかった。 これは、楽しい。」
「量は、これだけか?」
「食材は有りますので、焼く時間を頂けましたら、大量に用意できます。」
「………焼くのは、時間がかかるのか?」
「大きさによります。 神竜様は、大きい方がいいですよね?」
「そうだ。」
「でしたら、かなり時間が掛かります。」
「ふむ………。」
「それは、特殊な焼き方か?」
「はい。 中心部に、熱が伝わるようにしないといけません。」
「焼くのに必要なものは?」
「こちらの、炭になります。」
「炭を使って焼きますと、内側と外側、両方同時に、焼くことができます。」
「ふむ………、原理は解った。
これを魔術式にして、内部が焼けているかの確認できる魔術式も加えて………、出来た。 あとは、」
神竜様の御側に、空間が割れて、見覚えのある光景が現れた。
「食材は、どれじゃ?」
「失礼します。
この区画にあります物が、下処理をした肉類一式となります。 肉の種類は、鶏/豚/牛となります。」
「解った。」
神竜様が取り出した内臓肉に、先程御創りになられた魔術式を発動させると、香ばしい香りが漂い、肉の色が変わった。
「出来たな、どれ。 ふむ。 焼けているな。 術式に問題なし、成功じゃ。」
食べ終わると、別の内臓肉を取り出して、焼きだされた。
一瞬で創られた魔術式、まさに、神の御業と言える行い。
しかも、出来たのが、電子レンジと似たもの。
家庭〜殺生物に使える、魔術。
思わず、拝んでしまった。
楽しいのか、凄いスピードで、食べ進んでおられる。
このままだと、直に食べ尽くされてしまう。 なので、
「神竜様、こちら【各種軟骨の焼きと揚】です。
ご賞味ください。」
「………骨にも違いがあるのだな。
普通の骨と違い、楽しい。」
「揚げている理由は?」
「中まで火を通すためです。」
「なら、この術式が使えるな。 よし、上手くいった。」
神竜様が楽しんでおられる間、別の料理を用意する。
竜なら絶対に、気に入ると思う料理を。
加工できた。 あとは、蒸さないといけないから、
「神竜様、こちらを、御賞味ください。」
「………儂は、味が理解できないと、言ったはずだが。」
「味わって頂きたいのは、味ではなく、風味です。」
「?」
「これは………、果物、か? 柑橘類の香りが、僅かにする。」
「それの元になった魔物が、好んで食べた果物の匂いが、身に移ったと思われます。」
「調理する時にも、匂いが損なわれないように、真水に塩を入れただけのお湯で、湯がきました。」
「成程、これなら儂にも楽しめる。
他にも有るのか?」
「ございます。」
「どのへんだ?」
「こちらの区画になります。
焼くと匂いがとびますので、湯がきましょうか?」
「いや、このまま食べる。」
そう言い終わられると、合間合間に、箸休め/デザートのように、生肉をいただかれた。
その間に、完成した。
「神竜様。 こちらがメインの、特別な料理になります。」
「先程から調理していたものか。
しかし、これ以上の料理があるのか?」
「はい。 こちらです。」
「………ワームの幼体か?」
「いえ。 洗浄しました腸肉に、塩漬け肉を挽肉にした物と、香草類を混ぜたものを入れました、腸詰め肉と呼ばれるものの一種です。」
「………この匂い、味、血液が入っているのか。」
「はい。」
「確かに、生物を生きたまま食べる、儂等の種族に合った料理だ。」
「お食事を召し上がっている最中に、血の味がしないのは、物足りないかと思い、ご用意させて頂きましたた。」
「気が利いているな。」
「ついでに、こちらも、ご賞味ください。」
「白いな。 ………これは、乳か?」
「乳と血液は、似ておりますので、お気に召すかと。」
「ふむ。 これもいいな。」
「これで、本日用意しました料理は全てになります。」
「実に楽しい時間を過ごせた。 礼を言う。」
「有難う、御座います。」
「又、用意できるか?」
「本日と同じ量を用意するとなりますと、一月かかります。」
「かかる理由は?」
「解体作業と下処理が、一番かかります。
スープの方は、一週間あれば、出来るかと思います。」
「………錬金術、使えるよな。」
「はい。」
「なら………、この術式が使えないか?」
「これは?」
「貴女の知識と経験を参照に、解体作業と下処理をしてくれる魔術式(要必要:錬金術)。」
「頂けるのでしょうか?」
「焼肉用の魔術式もな。」
「頂戴いたします。」(電子レンジゲット。)
「あの、料理で、不満な点とか、ありましたか?」
「脂が多かったことぐらいか。」
「それは、その、この島の魔物ですので、どうすることも、出来ません。」
「………」




