末永さん日常から非日常へ
第一章
プロローグ
季節は冬、地球温暖化の影響か雪が降る事は無いが極寒の風が吹く中を2人の男女がいた。
男性は黒髪短髪に眼鏡をかけた細身のおじさん。
女性は黒髪長髪に眼鏡をかけた丸身のおばさん。
その日は12月28日、今年も残り数日となった年末の夜、2人は仲睦まじく手を繋いで寒さに負けずに寄り添いながら、電柱の灯りを頼りに真っ暗な夜道を歩いていた。
「今年こそ宝くじ当たらないかなぁ…当たったら人生変わると思うんだよね」と男性が。
「当たれば嬉しいけど、ハズレたら悲しいから忘れとこうよ。また年明けに見てみよ!」と女性が。
毎年この時期になると年末ジャンボ宝くじを買い、この話をする。
そして今年もこの話をしてるあたり当たった事はまだ無い。
2人が夫婦になったのは数年前、2人が恋人だった期間も合わせれば10年以上の関係だ。
そして2人はこれからも変わらず、年末にはこの会話をして年明けに宝くじを見てガッカリし、初売りを見に行き、正月をグータラに過ごして元の生活を繰り返す。
2人にとって幸せな生活、幸せな年末、幸せな年始、変わらない幸せを繰り返す。
…はずだった。
さっき通り過ぎた電柱の灯りと、次の電柱の灯りのちょうど真ん中真っ暗な空間に、その静寂を壊すような音が響いた。
一瞬の出来事、何かが自分達にぶつかったのは分かったが、何かは分からない。
男性と女性2人は互いに繋いだ手を離さないように強く握り、寄り添ったままだった身体を抱きしめ合い離れないよう手放さないよう相手を庇い合い。
そして、お互いに意識だけを手放した。