表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の茶会...Revisited  作者: 藤 和香円
3/4

茶会

 ありが列を成し、草花を掻き分け進んでゆく。

それを横目に、きつねが一匹、地べたを黒の鼻で嗅ぐ。黄金こがねの体毛を逆立たせ、森の中へと姿を消した。

風が吹けば、木々の青や野原の緑が、うねりを見せる。

小さな円卓は、元からそこにあったかのように、何にも動じず、孤立する。

草原そうげんの真ん中に、茶会は開かれた。


 円卓を覆うクロースは、古色を帯び、べにも淡い。痛んだ箇所から、腐った焦げ茶が覗く。

ぽつんと置かれた二杯のティーカップだけが、茶会を飾り、狐色の紅茶は、いっぱいに注がれた。

白地しろぢと細かな藤の紋が、どこか懐かしいティーカップであった。


 きらめく湯煙ゆけむりと、整った角砂糖が、”はかなさ”を語り、消えていった。それも、ある時は霧のように、またある時は雪解けのように、形を失う。

”諸行無常”。

一見、”パンタ-レイ”とイコールで結ばれているようにも思えるが、地中では、異なった根が、支えを果たしている。

しかし、その様を見たものはいない。

皿の角砂糖へ、蟻が列を成している。


 男はその狂いようから、神々の手により囚われた。腰かけた椅子から、手を伸ばす。

「君とまた、話ができてうれしいよ」

音もなく、ティーカップを置いた。

「なんだか、懐かしい気分だ」

向かいの椅子に、マネキンが俯いている。

「わかるよ。見ていて、つらかっただろう。でも、きっと意味があったと思うんだ」

辺りを見回す。森が赤を帯びていた。

「――幕は閉ざされた。安心して」

斜陽しゃようが、茶会を陰に染める。

静寂――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ