夢の中で
「・・・」
ん?なんだ?
「ォ-ィ」
誰かを呼んでいるみたいだな。
「オーイ」
ん?返事がないのか。うるさいなあ、俺はまだ寝ていたいんだよ。
「オーイ」
呼ばれた奴は返事しろよ。目が覚めちゃったじゃないか。
「君だよ。」
ヒェッ?おどろいた。で、俺のこと?いったい何の用だ。
「いやー きみに頼みがあるのだけど。」
頼みって、なんで俺がお前の頼みをきかなきゃならんのだ?
別に知り合いでもなんでもないだろう?
そもそもお前は誰なんだよ、どこにいるんだよ。
てか、ここどこだよ。暗くてなにも見えないし・・・
「お?いきなり饒舌になったね。
しかも答えにくい質問だね。
僕も正しく答えられるか判らないよ。」
何言ってんだコイツ・・・
「いやぁだからここはなんていうか、君の夢の中で、僕は君なんだよね」
うわ変な奴きた、かかわらないでおこう
「いやいや、待って待って、話だけでも聞いて。
君のこれからにも関係する話だから。
聞いたからって何か要求するわけでもないから」
まあ、それなら聞いてやろうか
「あーよかった、ありがとう、まず、僕の名前は山本 純と言うんだ、中田 順二さん」
なぜ、俺の名前を知っている?
俺のことを調査しているのか。
やましいことはないんだが。
「いや、だから説明するからまず一通り話を聞いて。
僕はたぶん死んだんだと思うけど、よく言うじゃない死ぬ間際に走馬燈をみるって。
でね、ずうっと過去までさかのぼって見えたんだけど
最後に前世を見ちゃったんだよ。
でね、気が付くとココにいたってわけさ。」
へー それで?
「ここはあの世へ行く前の魂の中って感じかな。
で、生まれ変わった時に前の人格は消えてしまうのだと思うよ」
じゃあなんで俺は消えてないんだ?
「さあ判らないよ、きっと強い未練があったからじゃないかな。
だって君の最後はもうそれは悲惨でって、覚えてない?聞きたい?」
せっかく忘れているのに聞きたくないな。
「だよねー。でね 僕は死にたいので代わりに生き返ってほしいのだけど。
ほら、なんだか引っ張られるような感じしない?
たぶん蘇生がうまくいって生き返るみたいだから。」
いや、手や足がないってことになってないか。
そんなの嫌だぞ。
「大丈夫~ただの溺死だから、普通に目が覚めるだけだよ」
だったらいいけど…いいのか?
「いいのいいの、じゃあもう逝くからよろしく~」
あ、そうだ お前なんで死にたいんだよ…ってもういないのか、いったいどこへ行ったんだか。
しかし最後は悲惨な死に方だったのか、覚えてないな。
記憶ってのは海馬で短期記憶として処理されて、大脳に長期記憶として覚えるって聞いたことがあるけど
あっという間に死んじゃったってことだな。
うーん、最後っていうと、定年退職で最終日に車で帰ったんだっけ。
あーこりゃ事故ったのかな。
退職金もらって年金で旅行やら、やりたいことあったのにって、そんなに強い未練かね。
それに強い未練とかあったら自縛霊や悪霊やらのなるんじゃないのかな。
子供たちは自立して家を出たからいいけど妻には悪いことしたなあ。
けど、退職金と死亡保険金1億で勘弁してくれ。
でもまあ生き返れるなら未練のない人生を送りたいな。
あっ、あいつ年いくつなんだ?会社員だったら仕事がわかんねーぞ
まあ記憶喪失のふりして、やっていけないようなら退職だな。
学生だったらいいなあ、ラノベみたいな感じでって、ちょっと待てよ
あいつ”僕”っていってたから男だよな
まさか僕っ娘じゃあないよな
そもそもなんで死にたかったんだろう。
生き返った俺が死にたくなるような事態にならなきゃいいけど。
あー、聞いておけばよかった。