51.1話
白の国を離れて数分がたった。
ジャックの背に乗るアリスとハンプティは一言も言葉を発さず、彼の後ろにいるアリスはただ黙ってその背中にしがみついていた。
ハンプティはアリスのことを思って黙っている。アリスもまた、女王のことで話す気力すら湧いてこない。そう、普通なら思う。だが実際、二人が顔を合わせて話さないのには理由があった。
(ああああああどうしようどうしよう!抱きつかれてるとさっきの言葉とキス思い出す!恥ずかしくて全然アリスのほう見れない!)
(ど、どうしよう……勢いでキスしちゃったし、本人前にして陛下にハンプティさんが好きだって、愛してるって!)
アリスからの突然のキスと告白に戸惑うハンプティ。そして、自分の行いに今更ながら羞恥心に襲われるアリス。
ハンプティは前々からアリスに好意はあった。だがアリスは、恥ずかしそうなそぶりは見せるものの、好意を持っているかはわからなかった。しかし、あの場ではっきりと好意を向けられていることを自覚すると、今まで抑えていたものが込み上がってきて、自分の感情をうまく隠すことができずにいた。
アリスが彼に好意を抱いていると自覚したのは本当に最近のことだった。白の国の地下牢に拘束されているときにやっと、彼女は自覚した。本当なら、別のタイミングで口にしようと考えてはいた。今までとはまた違った恐怖の形に戸惑いながら、ハンプティとどう話そうかと必死に考えていた。
「あっ、アリス。あのさ」
「ひゃ、ひゃい!」
突然の声掛けにアリスは思わず今まであげたことない声をあげる。本人も、当然尋ねたハンプティも驚いてしまった。
バッ!とアリスはすぐに顔をうつむかせ、顔を真っ赤にして口元を抑える。あまりの恥ずかしさに頭の中はぐるぐるで、心臓がばくばくでどうにかなってしまいそうだった。
「ああああもうっ!ホントお前は……」
「ち、違うんです……い、今のは……」
「俺も好きだよ」
不意に言われた言葉に、胸の奥が震えた。今まで何度も言われた言葉。何度も流して、何度もそれを本気にしなかった。だけど今は、その言葉が嬉しくて、もっと言われたいと、ひどく欲張りになってしまうのを感じる。
「俺も、お前を愛してる。ずっと、一緒にいたい」
「……はい」
短い返事をしながら、アリスは幸せそうな表情を浮かべ、強く強く、腰に回した腕でハンプティを抱きしめた。
ジャックもどこか嬉しそうで、大きく翼を羽ばたかせ、高い空を登っていく。




