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未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
《五章(紅白戦争の終幕)》
54/56

51話

 何が起きたのかわからなかった。

 女王はただ唖然とその様子を見つめ、見上げていた国民や兵士たちはざわざわと騒がしく動揺していた。

 クールな態度のアリスに引き換え、顔を真っ赤にしてアワアワするハンプティ。キスはもちろんだが、アリスが大勢の前でこんな行動を取るなんて未来は視えておらず、あまりの驚きに頭の中が真っ白になりかけていた。


「あっ、アリス!何をしているのじゃ!」


 我にかえった女王はすぐにアリスに慌てて声をかける。尋ねた問いかけの答えは、すでに出ているにも関わらず、彼女はアリスに投げかける。

 しばし、真顔でじっと彼女を見つめた後、アリスは笑みを浮かべる。

 ほんのり頬を赤く染めたその表情は、どこか恥ずかしそうで、でも幸せそうな。今まで誰もみたことのない表情だった。


「きっ、キス……ですよ」

「そんなもの見ればわかる!わっ、妾が尋ねているのは、なぜそのようなことをしたかじゃ!」

「どうしてって……どうしてわかっていることを尋ねるのですか?答えはとっくに出ているではありませんか」

「それ、は……」

「好きだからです。私は、ハンプティのことを心から愛してます」

「っ!」


 絶望に満ちた表情を浮かべる赤の女王に比べ、幸せに満ちた表情を浮かべるアリスは、ぎゅっと胸を抑える。


「だから私は、これからもずっと彼と一緒に居たいんです。一緒に、今まで見れなかったもの、触れることができなかったもの。その全てを、一緒に。だから陛下。私はもうあなたのそばにはいられません」

「そんなことは許されぬ!いったであろう!お前は妾のものだと!」

「はい。でも、感情を持った道具は、そばにいても面倒なだけでしょ?自分のいうことを聞かないモノなど不要でしょ?」


 幸せに満ちていた表情は、だんだん冷めたものになって行き、アリスはまた、女王を見下ろした。


「だから陛下、そんな道具のことは忘れてください。私も、貴女のことをしっかりと忘れます」

「っ!アリス!」

「さようなら陛下。もう、会うことはないでしょう?」


 女王に背を向けたアリスは、そのままハンプティの手を取り、ジャックの背中に乗る。


「アリス!」


 大声で、劈くほどの女王の声が響く。ハンプティやジャックは振り向くが、アリスは彼女に視線を向けることはなかった。


「行こう、ジャック」


 大きく翼を羽ばたかせ、ジャックはそのまま空高く飛びたった。

 


 三人の姿は、どんどん城から離れて行き、やがて視えなくなってしまった。

 それから数時間後、白の国は完全に落とされ、戦争は赤の国の勝利という形で、幕を閉じた。


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