表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
《五章(紅白戦争の終幕)》
53/56

50話

 先ほどまで罵声を飛ばしていた者たちは、誰一人として口を開かなかった。罰が悪ように目をそらし、中にはただただ二人の姿を見つめる者もいた。


「わかった。主ら……アリスの気持ちはわかった」


 向かいの部屋。無残に壊れた窓からこちらを見つめる赤の女王。その声音はとても優しく、表情はにっこりと笑みを浮かべていた。


「生きたいというのであればそれを叶えよう。これからも妾のそばに、妾を守るのであれば殺したりはせぬ」

「ハンプティさんと一緒にいることは」

「それはならぬ。其奴は妾にとっては邪魔でしかない。未来視の力は便利じゃが、散々妾を邪魔してきたのじゃ。その分の報いは受けてもらう」

「そう、なりますよね」

「さぁアリス、妾の元に戻ってくるのじゃ。安心するが良い。前とは何も変わらぬ。そう、何も変わらぬ」


 アリスはじっと赤の女王を見つめる。そして、ゆっくりと手を伸ばそうとするが、ただそれだけで、女王の元に行くことはない。代わりに、彼女の顔が酷く歪む。

 アリスは気づいていた。ずっと側にいたのだから、赤の女王の考えはわかっている。そんなに優しい言葉を投げかけても、殺さないと口にしても、彼女にはすぐにわかった。


「私が、そんな言葉を信じると思ってるんですか?」


 伸ばしていた手をゆっくりと降ろし、彼女は冷たい目を向ける。それは、流石の女王ですら身震いするほどの恐怖を感じさせた。


「どれだけ貴女のそばにいたと思ってるんですか?貴女が嘘をついていることぐらいすぐにわかります。不愉快です……私をその程度だと……気づかないだろうって思われたのが非常に不愉快です!」


 前と何も変わらない。そう、何も変わらない。変わらず、アリスは女王に殺される。生きることはできない。どちらにせよ、ハンプティと一緒にいることはできない。なら、拒んで彼女から逃げるしか選択肢はないのだ。


「私は戻るつもりはありません。どんなに罵られようと、自分は生にすがり続ける」

「っ!誰のおかげで今を生きている!誰のおかげで居場所ができたと思っている!」


 込み上がった怒りが一気に爆発したようで、女王としての風格もなく、ただただ暴力的に怒鳴りつける。

 手にしていた扇は二つに折れ、額に血管が浮かび上がり、ふぅふぅと息を荒げる。


「お前は私の所有物だ!」


 しんっ、と辺りが静まり返る。


「確かに、そうですね」


 俯きながら、アリスはぽつりと言葉を吐く。それは、女王の耳にも届いて居たようで、怒りの表情からホッと安堵した表情を浮かべる。


「だけど私は、また人として生きたいのです………——————ハンプティさん」

「ん?」


 急に名前を呼ばれ、ハンプティはきょとんとした顔で振り返る。

 アリスはそのままハンプティのネクタイを引っ張り、自身の唇とハンプティの唇と重ねた。

 驚きと、わずかな悲鳴が下から聞こえる。

 された本人は状況がわからず、頭の中で思考を巡らせ、やっと唇に感じる柔らかい感触と、0距離にあるアリスの顔に心臓が脈打ち、体温がどんどん上がっていく。

 ゆっくりと唇とネクタイを離し、初心な反応をするハンプティを横目に、アリスは唖然とする赤の女王に目を向ける。


「陛下。お世話になりました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ