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未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
《五章(紅白戦争の終幕)》
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46話

アリスとハンプティたちが部屋を出てしばらく、白の女王はベットの上で伏せっていた。

 俯き、シーツを強く握りながら浅い呼吸をし、目元は赤く腫らしていた。泣くだけ泣き、放心状態となった彼女の頭の中は少しだけ冷静に、気持ちはスッキリしていた。

 側にはホワイトナイトがただ黙って立っていた。いつものように全身を純白の甲冑で隠し、置物のごとく微動だにしていなかった。


「おやおや、こんな所におったのか?」


 遠く、カツカツとヒールの音が聞こえ、聞き覚えのない、だけど知っている女性の声が聞こえる。

 ゆっくりと顔を上げたその先には、自分とは違う、真っ赤なドレスに、真っ赤な髪をした絢爛豪華な女性の姿があった。

 護衛と共に姿を表した赤の女王は、部屋の有様を左から右へ、首を動かしながら眺めていた。

 荒れ果てた部屋の中、やつれた白の女王の姿。側にはホワイトナイトのみで、連れ戻したハンプティの姿もなかった。

 ニヤリと、見下すような表情を浮かべながら赤の女王は白の女王を見つめる。


「フラれでもしたか?」


 白の女王は何も答えず、またそのまま俯いた。

 赤の女王はベットの前まで足を進めると、女王とは名ばかりの彼女を見下ろした。


「哀れなものじゃのう、あれだけ執着しておったのに。真正面から拒絶されたらその有様とは」

「………」

「戦はもう終わりじゃ。白の領土は妾が貰いうけるぞ。まぁ主にはどうでも良いよな、おパペット女王クイーン

「………」

「安心すると良い。妾が女王になれば、白の国の住人も幸せに暮らせる。主は、安心して穏やかな生活を送ると良い」

「……そう」


 ニッコリと笑みを浮かべる赤の女王に対し、白の女王は小さな声でその一言だけを呟いた。

 反論しないことにつまらなさを感じたのか、赤の女王はすぐに笑顔から冷めたような表情に変わる。


「捉えよ」

「「はっ!」」


 女王の指示に従い、護衛のトランプ兵が白の女王に手を伸ばそうとする。だが、全く動こうとしなかったホワイトナイトが、彼女を守るように剣を抜いた。甲冑で当然顔は見えないが、「触れるな」と言っているようで、襲いかかるプレッシャーに兵士たちはその場に尻餅をついた。


「何をしている! さっさと捕まえぬか!」

「彼女はどうするの?」


 狼狽える赤の女王に対し、特に動揺を見せない白の女王は小さな声で尋ねる。


「彼女?」

「アリス・A・カーマイン」

「アリス? どうして主がアリスの心配をするのじゃ。主にとってあの子は恋敵ではなかったのか?」

「貴女には関係のないこと、いいから答えて。戦のために作られたあの子は、戦が終わればどうなるの?」


 白の女王の意図を探るように唸るが、すぐにどうでもいいかと結論を出し、赤の女王は彼女の質問に答えた。


「実験の情報は残してはならぬ。ことが済めば処分するつもりじゃ」

「また、貴女のそばを離れても?」

「当然。どこへ逃げようと、必ず処分する。あの子には、戦以外の場所で生きることなど許されぬのだから」


 不敵な笑みを浮かべる赤の女王。その様子をじっと見ていた白の女王は、さっきまでの無気力の表情とは一変し、小さくゆっくりと笑い始め、最終的にお腹を抱えて笑った。

 その様子に唖然とする赤の女王とトランプ兵。しばらくすれば、笑われていることに怒りが混み上がり、そのまま彼女の胸ぐらを掴んだ。


「何がそんなに可笑しいのじゃ!」


 自然と白の女王の顔が上に上がり、赤の女王と目が合う。しかし、彼女は変わらず笑みを浮かべる。その笑みには、悔しさも入り混じっていた。


「私に散々拷問を受けたあの子が、貴女にそう簡単に殺されるわけがない。あの子は、誰よりも生にしがみついているのだから」


 その表情に奥歯を噛み締めた赤の女王は、そのままベットに彼女を突き飛ばし、氷のような静かな怒りを彼女に向ける。


「そういえば、主にはアリスを捕まえて好きかってにやった罪があったのう……生かして連れて行くつもりじゃったが、主がいては何かと面倒そうじゃ」


 スッと手を差し出し、床に転がる兵士から剣を受け取理、剣先を彼女の首元に当てる。


「命乞いをするなら、今のうちじゃぞ。まぁそんなことをしても許すつもりはないがのう」

「命乞いをするつもりはないわ。それに、どうせ貴女は殺される」

「はぁ?何を訳のわかぬことを」


「聞け!両国の兵士、そして国民よ!」


 外から聞こえた大きな声に女王はすぐさま視線を窓の外に向けた。

 今の声はなんだと慌てふためいている時、白の女王は小さなため息をつく。しかし、彼女はなんだか嬉しそうな顔を浮かべていた。


「何をした!」

「何もしていないわ。気になるなら、外を見たらどうかしら」

「クッ!」


 勢いよく手にして剣を投げ捨てると、赤の女王はボロボロになった窓のそばへと駆け寄り、その光景を見た。


「な、んじゃ……」


 窓の外の向かい側の塔のてっぺん。そこには人々が恐怖する、一匹の呪われたドラゴンと、互いに寄り添い合うアリスとハンプティの姿があった。


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