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未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
《四章(一緒に……)》
38/56

35話

「あああああああああああああああああああああ!!」


 薄暗い白の国の王城地下室。そこに響き渡る少女の激しい叫び声。

 白の女王から残酷な拷問を受けるアリスは、身体中に痛々しい跡が残っている。


「ぁ…はぁ……ぅ、あ」


 打撃はもちろん、体を斬られたり、熱された鉄で肌を焼かれ、きめ細やかな美しい肌がただれてしまっていた。そんな光景は酷く残酷で、あまりにも痛々しい……。

 そんなボロボロになり、醜い体になったアリスに満足げな笑みを女王は浮かべ、

テーブルに置かれたハサミに手を伸ばした。


「その長い金髪も目障りね」


 ザクザクと音をたてながら、錆で汚れた鋏で長くて美しいアリスの髪を切っていく。結果、彼女の髪は肩に毛先が付くぐらいに短くなり、少しばかり顔立ちが幼くなってしまった。


「ハンプティは長い髪が好きなのよ」


 自分の髪を優しく撫でながら、恍惚とした表情を浮かべる女王。

 発作のようにまた何度も彼の名前を呼び始め、その様子を見たアリスは女王を嘲笑った。


「確かに、長い髪が好きですけど、白は嫌いだと言ってましたよ」

「嘘を言わないで。彼は昔言ってくれたわ、綺麗だって……」

「好みは月日が経つと変わるものです。今でも好きかどうかはわかりませんよ」


 奥歯を噛み締め、女王はこみ上げた怒りをそのまま拳に溜め込み、勢いよくアリスの頬を殴った。

 口から血を吐きだすが、アリスはニヤリと笑みを浮かべながら女王を見下さす。


「知ってますか?ハンプティさんはコーヒーが好きなんです。甘いものを食べるときはいつも苦いコーヒを飲むんです。朝が弱くて、起きたらいつも寝癖がついてるんです。結構甘えたで、よく私に触ってきます。私をからかったり、でもたまに優しくて」

「うるさいっ!」


 聞きたくないというように、女王はアリスをもう一度殴り、熱々に熱した鉄を肌に押し付けた。


「ぐいあああああああああああああッ」


 ジュワッと肌が焼ける音がなり、アリスは再び悲鳴をあげる。だが、グググっと唸りながら女王を見下ろし、また笑みを浮かべる。


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」


 女王は悲鳴のように、嫉妬と怒りの入り混じった感情をアリスに叩きつけるように、

強く強く熱した鉄を押し付ける。


「はぁ……はぁ……」


 ひとしきりわめき散らした女王は、手にした鉄をそのまま地面に投げ捨てると、背を向けて歩き出す。


「少し休憩する。またしばらくしたら戻ってくるわ」


 眉間にしわを寄せ、息を荒げる彼女を睨みつけ、女王は牢屋を後にした。

 遠くなっていく足音を聞き、何も聞こえなくなるとそのまま体に込めていた力を抜き、激しく咳き込み、息を荒げ涙を浮かべる。

 体に感じる苦痛はあまりにも激しい。火傷が外気に触れてひどく痛み、切り口はピリピリと痛み、殴られたところはズキズキと痛みを感じる。


「はぁ……はぁ……」


アリスはそのまま前に体重をかけ。深々と息をつくが、息を吸うだけでも体に激しい痛みを感じてしまう。


「ははっ……我ながら、生きてるのが不思議だと思っちゃう」


 普通なら、あまりの苦痛に失神したり、下手をすれば死んでいるかもしれない。だけどアリスは下唇を強く噛みながら、必死に泣くのをこらえた。

 後少し、後少し我慢すればいい。アリスは心の中でそう思っていた。

 今日の戦のメインはこの城を落とすこと。数時間と待てば、赤の国の兵が攻め込んでくる。そうれば、誰かがここにくるかもしれない。助けに……


「来るのかな、助け……」


 こんな状況だと不思議と弱気になる。化け物である自分を、自国の人間が助けにくるのだろうか……戦争が終われば、自分は用済みになる。だったらいっそ、このまま……。

 我慢していた涙がポロポロと溢れ出し、地面に流れ落ちる。


「泣いてる顔、初めて見たかも」


 不意に聞こえた声に、抜けていた力がまた体を固くした。


「随分と珍しい光景だね。君の、そんな姿は」


 ゆっくりと顔を上げれば、彼はニヤニヤと鉄格子の向こうで笑っていた。

 アリスはぼんやりとする意識の中、じっと彼を見つめていた。


「チェシャ猫……」


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