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未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
《三章(繋がれた鎖)》
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32話

 ハンプティがその時視た未来は、王が流行り病に掛かり、そのまま亡くなってしまうというものだった。その未来は結果的に現実となり、王はそれから半年後にベットの上で眠るように死んでしまった。

 それからの国は今のような有様になってしまった。当時姫だった彼女は突如として女王になるが、お飾りの女王として玉座に腰を降ろし、大臣達が国を好き勝手に動かしたことにより白の国はもう手遅れなほどに腐敗していた。


「ハンプティ……パンプティ……」


 その腐敗の影響を受けたように女王もまた人が変わってしまい、心を病んでしまっていた。

 激しい束縛と執着。彼女はただただハンプティに好意を抱いており、彼からの愛情を求めているが、ハンプティにとっては嫌悪感しか感じなかった。


「女王として、努力する気は無いんですか?」

「今の状況でいいのよ。変に頑張っちゃうと、お父様のようになってしまう」

「……ご存知、だったんですか?」


 体を離した女王は、にっこりと笑みを浮かべる。だけどその表情を見たハンプティは、その笑顔がどこか暗く、悲しみを含んでいるように見えた。

 王は、流行病で死んだとなっているが、実際は大臣達によって殺された。

 ハンプティにはその未来が視えていたが、それを防ぐことはできなかった。視えたのは、不敵に笑みを浮かべる大臣と、眠るように死んでいる王の姿だけだったのだから。


「自分たちの私利私欲のためにあの人たちはお父様を殺した。私が出しゃばれば、私もまた殺されてしまう。だったら、お飾りの女王のままでいいわ」


 また体を密着させ、女王はハンプティの両頬に触れ、にっこりと笑みを浮かべる。


「死ぬなら、後継を残してからにするわ」


 ゆっくりと女王がハンプティに顔を近づけていき、その唇を奪おうとした。


「陛下」


 残り数センチというところで、ハンプティは彼女の動作を静止させるように突然として呼びかけた。

 女王はまたゆっくりと体を起こすと、優しい笑みを浮かべながら「どうしたの?」と訪ねてくる。


「大丈夫よ。すぐに気持ちよくなるから……」


 ねっとりと体を彼女が這う。楽しそうに、早くと求め、わずかに息を荒げながらジリジリとハンプティに近づいていく。


「俺は、陛下に好意を抱いていません」


 きっぱりと、ハンプティは女王を拒絶した。

 言われた言葉の意味がわからないのか、女王はゆっくりと首を傾げながら横たわる彼を見つめた。


「俺は今の貴女は悍ましい何かにしか思えない。だから貴女からの好意はただただ嫌悪感しか抱かない。俺が心の底から求めているのは、アリスの声、アリスの温もり、アリスの全てです」

「アリス……アリス・カーマイン……ハンプティ、それはまがい物だよ。彼女に、心なんてない。あんな……人を殺すだけしかできない化け物……あんなのに、温もりなんてない」


 俯き、女王がその言葉を吐くが、それは酷くハンプティを怒らせ、明らかな敵対心の目を女王に向けた。


「あいつは人間です!」


 女王はその場で黙り込み、全く動こうとしなかった。そして、まるで糸の切れたマリオネットのようにフラフラとしながらそのままベットの外へと落ちていった。


「あ……あぁ……ああああああああああああああああああああああああああ!!」


 悲鳴をあげ、立ち上がった女王は部屋のものを壊しに壊しまくる。カーテンを裂き、花瓶を割り、木製の椅子を叩き壊す。

 ひとしきり部屋の中のものを壊し尽くした女王はその場に膝をつき、また動かなくなってしまった。


「あはっ……あははははははははははは!」


 笑いだした女王は、ゆっくりとベットに拘束されたハンプティの方を向いた。

 笑っていた。だけどそれは酷く不気味に見えた。


「あの子が貴方をそうさせたのね」

「陛下……?」


 ゆるりと立ち上がった女王は、乱れた服を正す。ハンプティはその様子をじっと見つめていた。さっきの笑み。よからぬことを考えているように見え、不安に感じた。


「っ! 陛下、やめてください!!」


 未来を視たハンプティは、これから彼女が行うことに動揺し、止めようとジタバタとベットの上で暴れる。だけど……


「暴れちゃダメよ」


 頬に何かがかすった。

 顔の真横、そこに女王の投げた短剣が突き刺さっていた。

 頬の傷から血が流れる。

 女王はにっこりと、歪んだ笑みを浮かべる。


「貴方は心配しなくていいわ。私が、貴方のためにあの子を殺してあげる」

「陛下っ!」


 ハンプティの呼び止めに答えず、女王はそのまま部屋を出て行き、ゆっくりと扉が閉まっていく。


「クッ……アリス」





 扉が閉まった直後、その前に立つ女王はゆっくりと目を閉じた。


「ホワイトナイト」

「はい」


 いつの間にか隣にいた純白の甲冑を身に纏った彼女が女王の隣に立っていた。


「よろしくお願いね。誰にも、バレないように」

「……わかりました」

「あぁハンプティ……これで、貴方は私のものに」


 恍惚とした表情を浮かべる女王。その様子を一度見て、ホワイトナイトは甲冑を揺らしながらその場を後にした。

 手にしている剣の柄を強く握りしめながら……


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