20話
自国へと連れ戻された二人は、現在それぞれ監禁状態となっていた。
赤の城、その地下牢に吊るされ、拘束されるアリス。
もう何度も嗅いだことのある嫌な臭い。奥の奥に閉じ込めていたものを刺激する錆びた鉄の混じった臭い。
体を揺らせば、じゃらじゃらと鎖が揺れ、地下牢全体に響き渡る。
服はビリビリに引き裂かれ、身体中には鞭の跡や切り傷、打撲痕が残っていた。
ボロボロのアリスは、ただ生き絶え絶えに体中に痛みを感じていた。目はどこか虚ろで、だけど端から涙がこぼれ出ていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
誰に向けて謝っているのか、彼女はただその言葉をつぶやく。口から言葉が溢れだすたびに、彼女の心は少しずつ壊れていった。
「アリス……」
そんな痛々しい彼女の姿を、牢の外から一人の少年が見つめていた……
白の国の王城、白の女王の寝室。
その日の女王の機嫌がいいことは、部屋の出入り口に控えている専属メイドのディーとダムにはすぐにわかる。いや、誰でも彼女の機嫌の良さは一目でわかる。
「あぁ、ハンプティ……私のハンプティ……」
隣に座るハンプティに寄り添い、愛おしそうに彼の体に触れている。今までにない恍惚とした表情。無抵抗なのをいいことに、彼女は好き勝手に彼に触れている。
ハンプティが抵抗できないのも仕方がない。もう逃がさないと、彼女は彼の両手足を錠で拘束しており、隣に座っているというよりも、座らせているように見える。
「可哀想に……あの子に無理やり連れていかれたのでしょう?でも大丈夫、何度連れ去られても、私が必ず見つけてあげるから」
体に纏わりつくように漂う花の香り。頭がクラクラし、どんどん吐き気が込み上げてくる。この匂いは、嫌という程彼女を思い出す。どこにいても、花がなくても、忘れた頃に引き戻すようにその匂いが不意に襲いかかってくる。
「ハンプティ、私の愛しいハンプティ。貴方はずっと、私の傍にいてね」
もう何度と言われた言葉。だけどその言葉に、ハンプティは今まで一度も、返事を返したことはなかった……。
離れ離れとなり、自国に拘束された二人は、再び地獄の世界へと戻されてしまった……。




