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未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
二章《引き戻される死の匂い》
21/56

20話

 自国へと連れ戻された二人は、現在それぞれ監禁状態となっていた。

 赤の城、その地下牢に吊るされ、拘束されるアリス。

 もう何度も嗅いだことのある嫌な臭い。奥の奥に閉じ込めていたものを刺激する錆びた鉄の混じった臭い。

 体を揺らせば、じゃらじゃらと鎖が揺れ、地下牢全体に響き渡る。

 服はビリビリに引き裂かれ、身体中には鞭の跡や切り傷、打撲痕が残っていた。

 ボロボロのアリスは、ただ生き絶え絶えに体中に痛みを感じていた。目はどこか虚ろで、だけど端から涙がこぼれ出ていた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」


 誰に向けて謝っているのか、彼女はただその言葉をつぶやく。口から言葉が溢れだすたびに、彼女の心は少しずつ壊れていった。


「アリス……」


 そんな痛々しい彼女の姿を、牢の外から一人の少年が見つめていた……






 白の国の王城、白の女王の寝室。

 その日の女王の機嫌がいいことは、部屋の出入り口に控えている専属メイドのディーとダムにはすぐにわかる。いや、誰でも彼女の機嫌の良さは一目でわかる。


「あぁ、ハンプティ……私のハンプティ……」


 隣に座るハンプティに寄り添い、愛おしそうに彼の体に触れている。今までにない恍惚とした表情。無抵抗なのをいいことに、彼女は好き勝手に彼に触れている。

 ハンプティが抵抗できないのも仕方がない。もう逃がさないと、彼女は彼の両手足を錠で拘束しており、隣に座っているというよりも、座らせているように見える。


「可哀想に……あの子に無理やり連れていかれたのでしょう?でも大丈夫、何度連れ去られても、私が必ず見つけてあげるから」


 体に纏わりつくように漂う花の香り。頭がクラクラし、どんどん吐き気が込み上げてくる。この匂いは、嫌という程彼女を思い出す。どこにいても、花がなくても、忘れた頃に引き戻すようにその匂いが不意に襲いかかってくる。


「ハンプティ、私の愛しいハンプティ。貴方はずっと、私の傍にいてね」


 もう何度と言われた言葉。だけどその言葉に、ハンプティは今まで一度も、返事を返したことはなかった……。





 離れ離れとなり、自国に拘束された二人は、再び地獄の世界へと戻されてしまった……。


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