11話
朝目を覚ました時、とても寒く、気づけば何枚もの毛布を被っていた。
ベットから起き上がり、曇った窓を吹いて外を眺めれば、あたりは白銀の世界とかしていた。
この世界において、季節は不規則に移り変わる。三日前まで夏だったのに、突然として春に変わり、一週間も経たずに夏に戻ることもある。
今日は冬に変わってしまったようで、いち早く目を覚ましたジャックが庭で大はしゃぎをする。雪上を走り回り、しばらくすれば凍った湖の上へ行き、その下を泳ぐ魚を、涎を垂らしながら眺めていた。
その様子を微笑ましく見つめながら、コートを身に纏って、アリスは朝食の準備をする。
「寒いし、温かいものがいいかな」
すぐに暖炉に火を付け、部屋の中を暖かくする。冷えた水をポットに注ぎ、温かいお湯を沸かし、その間に朝食の準備をする。
煙突から立ち込める白い煙。それに気づいて、ジャックは雪の上を走って家の中に戻ってくる。
「アリス、おはよー」
「おはようジャック」
「今日は冬になったよ!!」
「そうだね。温まるもの作るね」
「湖の魚食べていい?」
「だーめ」
ジャックと会話をしながら、アリスは着々と朝食の準備をする。ジャックはそのままてくてくと暖炉の前まで行き、外で冷えた体を温める。
泣き叫ぶようなポットの音。お湯が沸き、それを準備したカップに注いでいく。
一つ、また一つとテーブルの上に朝食が準備されていく。
「こんなものかな」
「できたー?」
「うん。ジャック、ハンプティさん起こして来て」
と、ちょうどその時、隣の部屋が開いてハンプティがやってくる。
それに気づいて、アリスも振り返って声をかけようとした。しかし……
「ハンプティさん?」
アリスのそばに来ると、彼は彼女の手首を強く握った。
どうしたのだろうと彼の表情をみると、いつもとは違う、どこか焦った表情をしていた。
*
その日の桜蘭は少し騒がしかった。
なぜか赤の国の兵士と白の国の兵士が数十名とやって来たからだった。
武装した彼らは、特に村人たちに手を出すことはなかったが、手にした紙を彼らに見せて人を探しているようだった。
皆関わりたくないのか、素直に質問に答えて行き、兵たちが辿り着いたのは桜蘭の森の奥。シンボルとされる大きな木のある村。そこには多くの兵士たちが待機していた。
村人たちは家の中で、彼らが去るのをただただ待っていた。
「ここだな」
橋を渡り、十数名の兵は木のそばの一軒家を取り囲むように配置する。
煙突から立ち込める白い煙。
兵の一人が扉をノックする。返事はない。再度ノックをするがまたしても返事はなかった。
兵たちは顔を見合わせ、ノックしていた兵が勢いよく扉を蹴破って中に入り、それに続いてなだれ込むように他の者たちが中に入っていく。
「くそっ」
そこには誰もいなかった。
テーブルには用意された朝食。暖炉の火は炊かれたままで、少し暑く感じた。
「探せ、まだ近くにいるはずだ!!」
あの日と同じように、ハンプティとアリスは、突然としてその家から姿を消したのだった。




