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未来視軍師と紅の剣姫  作者: 暁紅桜
プロローグ《雨の日のお誘い》
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0話

 その日は、本当にいつも通りの日だった。

 いつも通り、無駄な一日だった。

 だけど、あの瞬間だけはいつもと違うものだった。

 空は曇って、分厚くて黒い雲が空を覆い、光をまったく地上に照らそうとはしなかった。遠くから重く響く雷の音。もうすぐ雨が降るかもしれない。人々はそれに焦りを感じて、どんどんどんどん戦いのスピードは上がった。

 静まり返り、肌を刺すほどの冷たい風が戦場の上を走り抜けた。

 先ほどよりも空は暗くなり、響き渡る雷鳴は重く、地を揺らすほどに響き渡る。空からは、ポツポツと雨が降り出し、鼻につくのは湿った土の匂いではなく、辺りに転がる屍の死臭。

 その中で、地に膝を着いて少女は見上げていた。虚ろな瞳。生気はなく、ただ糸の切れた人形のように全く動こうとしなかった。

 真っ赤な服と月光に照らされたような綺麗な金髪。吸い込まれるような蒼眼そうがん

 また一日が終わる。いつものようにこのまま立ち上がって城に戻り、汚れた服を脱いでシャワーで血や泥を落とす。今日は雨だから、いつものお茶会は開催されていないだろうと思い、それを残念に思いながらベットに入って眠りにつく。そして、また一日が始まる。

 そう……いつも通り……


「あぁ……近くで見るとなんとも……」


不意に聞こえた声に、少女はゆっくりと振り返った。

 白い軍服に身を纏った男は、優しい笑みを浮かべた。敵国の軍人だとわかったが、少女は腰の剣に手を添えようとはしなかった。


「なぁ、この戦をお前はどう思う?」


 じっと男を見つめながら、少女はその言葉に対しての返答を彼に返す。

 ただ淡々と、感情なんてない。ただの何気ない会話をするかのように。


「くだらないと、そう思ってます。戦争、というよりは、ただの”殺し合い”です。

 国のためじゃなく、ただただ自身の欲望のために動いてるだけです」


 欲求を満たすために剣を振るい、誰かを殺す。【殺人は罪だ】と法律で定められても、戦争になれば、それは罪には問われない。

 誇りも忠誠も何もない。ただの”無駄”な戦争だ。


「私と一緒だな。私も、この戦争をくだらないと思ってる。領土など、大きくしたところで何も得られない。人を蹂躙させても、ただ罪を重ねるばかり。実につまらないよ」


 男はゆっくりと手を伸ばし、再び少女に笑みを浮かべた。


「なぁ、一緒に逃げないか?」


 まるでデートに誘うように、男は少女にそう尋ねた。

 降り続く雨。少女の体についた血は流れ落ち、雨に濡れた少女はじっと男の顔を見つめ、その手を取った。



 数時間後に雨は止み、分厚い雲の隙間から陽の光が差し込んだ。

 いつものように悲惨で無駄な戦争。だが、もう何度目になるかわからない戦争の最中、赤の国の剣姫“アリス・カーマイン”と白の国の軍師“ハンプティ・ダンプティ”が、姿を消したのだった……


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