また見つかった。
真っ黒い服を着て……、って、これのこと?
人生の喪服って感じかしら。
ずっとじゃないよ、ただ、時々着てみたくなるから……
だれだって、一着は持ってるんじゃないかしらね。
あなたは自分の道を見つけて、前に進むんだって信じてる。
でもわたしは……、相変わらず、霧の中に自分を置いてけぼりにして、
自分がどこにいて何をすべきなのか、つかめずにいるっていうか……
また見つかった。
永遠が、見つかったの。かけがえのない失くしものだよ。
まさか、こんなところで再会するとは思わなんだ。
滝つぼの水を、吸って吸って、吸いつくさんばかりのエネルギー。
みずみずしい緑色の蛙と、
きんいろにかがやくマリーゴールド。
わたしはかもめ……、いいえ、そうじゃない。「こいつは光合成ができそうだ」、そう言おうとしたんだった。
そうそう、ピエロの話をしていたんだっけ。
石っころのように泣いていた、あの哀れなピエロちゃんの……、
あれ、違った?
わたしはいまだに、地面に寝そべってるんだってさ。
足音が聞こえる……
またいつでも、いらしてお取りになってちょうだい。
昼と夜のロケットのことさ。
昔の人は、詩を捨てて、南の国へ旅立ったっていうけれど、
わたしはいまだに、ここに惹きつけられるんだ、
かもめみたいに……、ね……
それでも、頭をぶち抜いたりはしないよ。
原稿を破る勇気だってないさ。
ことば、ことば、ことば……
ことば……、かもめ……
昼と夜のロケットを捨てて、
剥製になって、大陸を越えた。
大事に大事に、かけがえのない銃創をかかえながら……
それは、昔の人の話……、
その人は他者。
わたしはかもめ。
……なんだか、デカダンじみてるね。
失くしてさえ、大切に思えるもの。
それが、わたしなりのヒューマニズムであり、オプティミズムであり、
互いに決別した詩人たちのロマンであり、ニーナとコースチャであり、
カバンの中で破裂したエーテルの瓶……これは違う……、
でも、向き合うって大事だから。楽観と無視は、明らかに違うんだって。
信じる自由は、多数決によって消されるものじゃない。
そうでしょ、ガンジーさん……。
とりあえず、『かもめ』を読もうよ、みんな(笑)
青空文庫に載ってるからさ。↓
https://www.aozora.gr.jp/cards/001155/card51860.html
……あ、念のために追記ね。
神西清訳のチェーホフ作品『かもめ』と、中原中也訳のランボー作品『永遠』、どちらも作者・訳者ともに権利切れで、パブリックドメインですので。