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悪役令嬢の無自覚従者  作者: 白砂
出逢い編
5/10

5.

これから、二日に一話ぐらいの頻度で投稿しようと思います。



かなり短いです。



ミーレさんの過去を聞いた後、俺とミーレさんは急いで屋敷に戻った。

それからすぐに旦那様とお嬢のご夕食の準備があって、全くのんびりとは出来ない状況だったからだ。

でも屋敷に向かいつつ、ミーレさんに褒められた。曰く、俺は「かなり優秀。」だそうだ。ミーレさんの話によると、俺が先程やった仕事は新しく来た使用人には必ず課される仕事だそうで、一日で終えた者は今まで誰一人いないらしい。改めて、流石攻略対象だと思った。



で、今俺は非常に頭を抱えている。



原因は明白である。



他でもない、目の前にいらっしゃるお嬢だ。



現在、俺はお嬢の部屋の中にいる。


何故かというと。


あの後慌てて準備した旦那様とお嬢のご夕食後、自分の部屋に戻ろうとした俺に、素早くミーレさんが一つ仕事を申し付けた。


その内容に、俺は思わず唸ってしまった。


何故なら、彼女が俺に課した仕事は、俺が今一番クリアするのが困難だと考えている、「お嬢と打ち解ける」という内容だったからだ。


最初こそ難色を示したが、俺の意思をねじ伏せる彼女の無表情に拒否の言葉が尻すぼみに消えていった。


ミーレさん、怖い。


でも、よくよく考えてみると、このままお嬢に避けられ続けてもいい事は何もない。それなら、この機会にお嬢のトラウマは治せなくとも、出来るだけ打ち解けて少しでも王子が入る隙間を埋めておこう。


そう思い、俺はミーレさんに頷いた。




ーーーのだが。


渋るお嬢を押し切りお嬢の部屋に入ったはいいものの、ベッドの上から俺を睨みつけているお嬢を一体どうしたものかと俺は困っている訳ですよ。


ダレカタスケテ。


お嬢はベッドの上に座り、俺はお嬢の正面に立ちながら、しばらくの沈黙が俺達の間に流れる。


とりあえず自己紹介をしようと、俺が口を開いた時。



お嬢が大きく体を揺らした。



「従者なんて要らないわ!」



………。



急に発せられたお嬢の言葉に、俺は思わず固まる。



「お父様が勝手にしたことよ!お父様は全然分かってない!私の気持ちを、全然分かってない!お母様が、居なくなったのに……っ。」



苦しみを吐き出すように涙声で叫ぶ彼女に、俺は目を見開いたまま何も言うことが出来ない。ただお嬢の言葉から分かったのは、彼女は慕っていた母の死に悲しんでいただけではなくて、父に怒っていたのだということ。自分は母が居なくなったことにこんなにも悲しんでいるのに、自分の前で涙さえ見せず、あまつさえ娘を宥める余裕まである父親に失望している。 それが、彼女の心の隙間を広げてしまっているのだということ。


「お父様は、苦しくないの?お母様が死んだのに!あんなに、あんなに仲が良かったのに!どうして!どうして、どうしてよ!?」


悲痛に泣き叫びながら、お嬢の緋色の瞳からポロポロと涙が溢れ落ちる。それは白くまろやかな頰を伝い、シワ一つないシーツに小さな染みを作る。



「従者なんて、いつ裏切るか分からない!あの男だって、お母様とずっと一緒にいた癖に、お母様を殺したわ!!」



涙で顔がグズグズになったお嬢は膝を抱え、憎しみに濡れた瞳で俺を睨みつけた。



「私に従者なんて……、親しい人なんて要らないわ。お父様のご意向だからなんだというの。……貴方、もし私の従者になるのならば、私に必要以上に話しかけないで。貴方は仕事のみに従事しなさい。私に自身の仕事以外で関わらないこと。」


淡々とした声。だが、深い悲しみに沈んだ声。

たった10歳の女の子は、その柔らかな心に刻まれた傷を撫でて、額を自らの小さな膝にうずめて小さく小さく縮こまる。



ーーー王子、どうやってお嬢の心を開いたんだ。



お嬢のあまりの拒絶っぷりに、俺は心の中でため息をついた。どうすればいいの、これ。

ヘタなこと言ったら、余計に閉じこもりそうだしなぁ。







ーーーあぁ、めんどくさい。







「私とあの殺人犯を、一緒にしないでくださいますか。」



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