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悪役令嬢の無自覚従者  作者: 白砂
出逢い編
1/10

1.

ふつつか者ですが、よろしくお願いします。

自己満足の作品です。

読んで頂ければ幸いです。



「お父様、この子が私の従者…ですか?」


耳に響く甲高い声。

朦朧とする意識の中で、幼い少女の言葉が戸惑いに揺れている。


「あぁ、そうだ。仲良くするんだよ、エルシェ。」


少しくぐもったダンディズムを感じる男の声が、少女にそう返した。

彼の声は凛としていたが、何処か縋るような色も混じっている。


「お父様、でも…、…貴方?どうしたの?顔色が悪いわ。」


父親と話していた少女がふと俺に意識を向ける。

心配そうな声に、焦りが加わる。


…あぁ、彼女に応えなければ。


そう思った瞬間、世界が暗転した。






==================


夢を見た。


《日本》という国で、見上透という名で生活していた頃の夢を。


ーー前世の、夢。


俺は高校三年生だった。

それなりに勉強して、それなりに頭が良かった。

友達だって多い方だった。年下の彼女もいた。

運動神経も悪くない、いつだって羨ましがられた。


でも、呆気なく俺は死んだ。


ありがちな交通事故。

人の命を奪う状況を「ありがち」とか我ながら不謹慎だと思う。

けど、本当にアッサリと俺は死んだ。

未練はない。

薄情かもしれないけど、俺に未練を持たせるようなものがあの世界に無かったって事だ、とどの詰まる所。


俺が前世に思いを馳せていると、ふと。


俺の人生の振り返りの中で、あるゲームが映し出された。


俺の妹が熱中していた、《空を見上げて》という乙女ゲームだ。


いやどんな名前だよと思っていたが、その時やさぐれていた妹は俺の胡乱げな目線を倍の刺々しい睨みで圧勝した。

別に勝負していたわけではないけど。それぐらい怖かった。


俺が「変なゲーム」と思っているのが許せなかったのか、妹は舌打ちしながらそのゲームがいかに素晴らしいのか、内容を滔々と語ってくれた。


まず、主人公はシェリーというらしい。

これは初期設定の段階での仮の名前で、後からいくらでも変えることが出来る。


舞台は王族貴族が栄える中世ヨーロッパ風の世界で、主人公は男爵の一人娘。ちなみに貴族の中で最下級の位なんだと。


それでその主人公は魔法が使えるらしく、魔法の適正能力を持った王族貴族が集まる学園へと通うように国からお達しが届くそうだ。


で、そっからがゲームの始まり。


学園に通う攻略対象たちと様々な事件を通して交流を深め、ハッピーエンドを目指す、というシナリオだ。


……まあ誰しもが思うだろう。


何というテンプレかと。


そんな展開の乙女ゲームは、二次元に飢えたこの世の中に腐るほどあり、誰も望んじゃいない。


クソゲームだな…と、最初は思ったのだが。


むしろ大人気らしい。


とにかくキャラが豊富なんだって。


最初は4、5人くらいしか攻略対象がいないのだが、ゲームを進めるごとに攻略対象が増え、終いには30人攻略出来る奴がいるらしい。


しかも声優が豪華。


更に悪役の令嬢がいるらしく、主人公と攻略対象をくっつけさせまいと奮闘するらしい。そのウザさが、主人公と攻略対象の恋を燃え上がらせるのだと。


……俺的に、悪役令嬢がちょっと可哀想だった。


と、そんな風にイベントやら推しなるものの話やらを妹に会うたび聞かされた。

ちょうどいい話し相手とでも思ったのだろう。


その時はいい迷惑だと思っていた。


でも今は、素直に感謝しよう。


起きたらその乙女ゲームの中に転生していたとか、誰が考えるか。


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